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地域包括ケア病棟、「手術」などの包括外評価に対して委員はややトーンダウン―入院医療分科会

2015.7.29.(水)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、地域包括ケア病棟入院料から「手術」と「ブロック注射を除く麻酔」を包括外とする可能性が高くなってきましたが、議論を行っている入院医療分科会で委員の意見はややトーンダウンした感があります。

7月29日に開催された、「平成27年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

7月29日に開催された、「平成27年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

手術件数や点数は亜急性期1や療養よりも低い

 診療報酬改定に向けて「入院医療」については、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」で詳細なデータに基づいた技術的な検討が行われます。29日の入院医療分科会では、▽短期滞在手術等基本料▽総合入院体制加算▽地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料を含む)▽有床診療所入院基本料▽医療資源の乏しい地域の診療報酬▽慢性期医療―について総括的な議論が行われました。

 ここでは、「地域包括ケア病棟入院料」に注目してみます。

 地域包括ケア病棟は、▽急性期後の患者受け入れ▽在宅復帰の支援▽在宅患者の急性増悪時の受け入れ―の3つの機能を行うものとして、14年度の前回改定で新設されました。厚生労働省の調査では、地域包括ケア病棟に入院する患者の9割が「自院の急性期」「他院の急性期」「自宅」から入棟していることが分かり、一見すると「3つの機能を果たしている」と見ることができます。

 しかし、入院患者の疾患に目を移すと「骨折・外傷」の割合が7対1や10対1に比べて高く、また手術などの実施が少ないことや、退院予定のある患者が半数を占めていることなどから、患者は「特定の状態」に集中していることが分かります。

 厚労省は「より多様な患者の受け入れを促進したい」考えを持っていますが、分科会や親組織である中央社会保険医療協議会の委員からは「手術が包括されているため、救急患者の受け入れを躊躇している」との指摘がありました。

 こうした指摘を踏まえて手術の実施状況を厚労省が詳しく分析したところ、次のような状況が明らかになっています。

▽入院1日・人当たりの手術点数を見ると、地域包括ケア病棟(2.9点)は、一般病棟(635.1-102.4点)はもとより、旧亜急性期1(9.9点)、療養病棟(4.5点)よりも低い

入院1日・人当たりの手術点数を見ると、地域包括ケア病棟(2.9点)は、旧亜急性期1(9.9点)、療養病棟(4.5点)よりも低い

入院1日・人当たりの手術点数を見ると、地域包括ケア病棟(2.9点)は、旧亜急性期1(9.9点)、療養病棟(4.5点)よりも低い

▽地域包括ケア病棟の手術件数は、旧亜急性期1・2と同程度で、皮膚・皮下組織、筋骨格系、四肢・体幹、腹部などに関するものが多い

地域包括ケア病棟の手術件数は、旧亜急性期1・2と同程度

地域包括ケア病棟の手術件数は、旧亜急性期1・2と同程度

地域包括ケア病棟の手術の内訳は、皮膚・皮下組織、筋骨格系、四肢・体幹、腹部などに関するものが多い

地域包括ケア病棟の手術の内訳は、皮膚・皮下組織、筋骨格系、四肢・体幹、腹部などに関するものが多い

▽地域包括ケア病棟で行われた皮膚・皮下組織の手術では、創傷処理と皮膚切開術が多い(亜急性期1、療養と同様)

▽地域包括ケア病棟で行われた筋骨格系、四肢・体幹の手術では、超音波骨折治療が最も多い(亜急性期では、このほかに陥入爪手術なども多い)

地域包括ケア病棟、皮膚・皮下組織の手術では創傷処理と皮膚切開術が多く、筋骨格系、四肢・体幹の手術では、超音波骨折治療が最も多い

地域包括ケア病棟、皮膚・皮下組織の手術では創傷処理と皮膚切開術が多く、筋骨格系、四肢・体幹の手術では、超音波骨折治療が最も多い

▽地域包括ケア病棟で行われた腹部の手術では、胃瘻造設術が多い(療養病棟と同様)

▽地域包括ケア病棟では心・脈管の手術は少ないが、その中では中心静脈静注用植込型カテーテル設置が多かった

地域包括ケア病棟、腹部の手術では胃瘻造設術が多い。心・脈管の手術は少ないが、その中では中心静脈静注用植込型カテーテル設置が多い

地域包括ケア病棟、腹部の手術では胃瘻造設術が多い。心・脈管の手術は少ないが、その中では中心静脈静注用植込型カテーテル設置が多い

▽地域包括ケア病棟で行われた手術の7割は5000点未満で、亜急性期1・療養でも同様だが、これらでは1万点を超える手術も一定程度ある

▽入院10万日・人当たりの全身麻酔算定回数を見ると、地域包括ケア病棟(8.5回)は、亜急性期1(130.2回)や療養病棟(11.1回)よりも少ない

入院10万日・人当たりの全身麻酔算定回数を見ると、地域包括ケア病棟(8.5回)は、亜急性期1(130.2回)や療養病棟(11.1回)よりも少ない

入院10万日・人当たりの全身麻酔算定回数を見ると、地域包括ケア病棟(8.5回)は、亜急性期1(130.2回)や療養病棟(11.1回)よりも少ない

▽地域包括ケア病棟に入棟する前の手術としては、骨の観血的手術が圧倒的に多い

地域包括ケア病棟に入棟する前の手術としては、骨の観血的手術が圧倒的に多い

地域包括ケア病棟に入棟する前の手術としては、骨の観血的手術が圧倒的に多い

 こうした状況を踏まえ、厚労省は「手術」と「ブロック注射を除く麻酔」を包括外とすることを重要論点に掲げています。

 論点は委員の指摘を踏まえたものですが、この日の分科会では委員のトーンが少し落ちてきたようにも思えます。神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「全病棟を地域包括ケアとしている病院では、手術を包括外にすることで手術の実施が増えるだろう。しかしケアミックスの病院では、一般病棟で手術をしてしまうので、地域包括ケア病棟での手術は増えないのではないか。両者は分けて考えたほうがよい」と指摘。安藤文英委員(医療法人西福岡病院理事長)も同様の見解を述べています。

 一方、石川広巳委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)は「地域包括ケアは実験的に導入している病院も多い。様子を見てはどうか」と述べ、早急な見直しには慎重な姿勢を見せました。さらに、藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科・医学部医療管理学分野教授)にいたっては「地域包括ケア病棟で実施される手術などは軽度なものが多いので、包括評価のままでよいのではないか」と述べています。

 これに対し池端幸彦構成員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長)は「手術を行える体制を整備することは重要だ。これによって地域包括ケア病棟の使い勝手が良くなる」と述べ、手術や麻酔の包括外に賛成しています。

 このように微妙に委員の意見が変化する中で、中医協が「地域包括ケア病棟における手術など」をどのように考えていくのか注目が集まります。

リハの包括外評価、可能性は低い

 このほか地域包括ケア病棟について、分科会では次のような見解がまとめられる予定です。

▽リハビリテーション料は包括評価されているが、現時点では「患者の状態に応じて異なる頻度でリハビリが提供され、想定した期間内に自宅に退院する患者が多いなど、概ね適切に実施されている

▽退院支援については、「患者1人当たりの退院調整に十分な時間を割けない」「退院支援の開始タイミングが遅れている」などの課題があるが、一方で「病棟に専従・専任の退院支援職員を配置する」「多職種カンファレンスを実施する」ことが大きな効果を及ぼしている

 前者から、「リハの包括外評価」などの可能性は極めて低いものと考えられます。

 また後者については、地域包括ケア病棟だけでなく、ほかの急性期病棟とも合わせて「退院支援」を検討することになりそうです。なお、この点について神野委員は「退院支援の担当者は患者の自宅などに出向くことも多く、専従を求めるのは難しいのではないか。専任とすべきである」と指摘しています。

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