7対1や地域包括ケア病棟、「自宅・高齢者施設」への復帰を高く評価する方向へ―入院医療分科会
2015.7.16.(木)
7対1病棟や地域包括ケア病棟の施設基準である「在宅復帰率」について、2016年度の次期診療報酬改定では「自宅や高齢者住宅など」と「在宅復帰機能強化加算のある療養病棟など」に分け、前者を高く評価する―。このような方向性が、16日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」で示されました。
また、退院支援を評価する各種の加算や医学管理料を整理する方向性も示されています。
14年度の前回改定では、7対1一般病棟の施設基準に「在宅復帰率75%以上」が新設されました。もっとも、「自宅への復帰」だけでなく、高齢者向け住宅や回復期リハ病棟、地域包括ケア病棟、在宅復帰機能強化加算を届け出ている療養病棟などへの転院も「在宅復帰」にカウントされます。
7対1病棟全体の在宅復帰率は約94%であることが厚労省の調べから分かっており、「在宅復帰率75%以上」の施設基準で困っている病院は非常に少ないと考えられます。
ただし、「在宅復帰」にカウントされている施設は、「自宅・高齢者向け住宅」といった高齢者の居住の場だけでなく、病院も含まれています。そこで、「自宅・高齢者向け住宅」のみへの復帰率を見ると78%にとどまっています。両者には「患者のQOL」という面で、大きな差があります。
一方、14年度改定で新設された地域包括ケア病棟でも、「在宅復帰率70%以上」という施設基準が設定されています。ここでも「在宅」には、自宅のほか、高齢者向け住宅や、在宅復帰機能強化加算を届け出ている療養病床なども含まれます。
地域包括ケア病棟全体の在宅復帰率は88%ですが、「自宅・高齢者向け住宅」のみへの復帰率は78%にとどまっています。
こうした患者のQOLなどを考慮し、厚労省は「『自宅・高齢者向け施設への復帰』を、『病棟への復帰』よりも高く評価する」ことを提案しました。
この提案に対し、委員から特段の異論は出されていませんが、池端幸彦構成員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長)は「この仕組みが導入されれば、在宅復帰機能強化加算を届け出ている療養病棟へ転院する患者は、自宅復帰が困難な人に限定されてしまい、療養病棟からの在宅復帰が難しくなる。療養病棟にも何らかの措置を検討する必要がある」と要望しています。
在宅復帰率を上げるためには、退院が難しい患者への支援(退院支援)が非常に重要です。診療報酬では、退院支援を▽ストラクチャー▽プロセス▽アウトカム―のさまざまな角度から評価しています。
しかし、厚労省の調べでは、▽A240総合評価加算▽A238退院調整加算(一般病棟)▽B005-1-2介護支援連携指導料―以外は、算定回数が少なく、かつ伸びも小さい状況であることが分かりました。
退院支援の診療報酬項目は数多くありますが、要件の重複や内容の類似などもあり、現場での混乱や理解不足などがあることが伺えます。このため厚労省は「退院支援に向けた診療報酬項目を整理する」方向性を示しました。
また、退院支援にあたっては▽病棟への専従・専任の退院支援職員の配置▽他職種カンファレンスの実施―などが有効であることも分かっており、厚労省は「退院支援を推進していくための評価」の在り方を総合的に検討していく考えです。
この点について筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)は「現在の診療報酬項目は、退院支援を『点』でとらえて評価しているが、今後は『線』でとらえることが必要である」と述べ、「入院前からのケアマネジャーの介入」や「退院後1か月程度の訪問看護」など、18年度の診療報酬・介護報酬の同時改定の下地を構築するよう提案しています。
一方、石川広巳委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)は、「患者の入院前の状況や疾患、新たな生活を考えると、バリエーションに富んでいる。すると、より退院が困難な患者に支援を行い、無事退院となった場合には、容易な患者よりも高く評価する必要があるのではないか」と、少し異なる支援からの要望を行っています。
このほか、16日の会合では「入院中の患者の他医療機関への受診」もテーマになりました。10年度の診療報酬改定でこの規定が整理され、例えばが出来高のA病院に入院している患者が、その病院にない診療科を持つB病院の外来を受診した場合には、受診日についてA病院の入院基本料が30%減額されます。
こうした規定について、診療を担当する委員の多くは「ペナルティ的な取扱いで好ましくない。減額の緩和や廃止をすべきである」と要望しています。
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