短手3、出来高実績のばらつき考慮した細分化について意見まとまらず―入院医療分科会
2015.7.29.(水)
短期滞在手術等基本料3のうち、乳腺腫瘍摘出術などについて「現在は全身麻酔下手術と局所麻酔下手術のいずれかに収れんしておらず、出来高点数にはばらつきがある」ことが分かり、これをどのようにして「より実態に即した点数設定」にしていくか、さらに検討が深められることになりました。
なお短期滞在手術等基本料3は完全包括点数となっていますが、ここから「透析」の点数を除外する方向で検討が進められています。
29日に開かれた診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」では、短期滞在手術等基本料3(短手3)について総括的な議論が行われました。
7月1日に開かれた入院医療分科会では、「短期滞在手術等基本料3の中には、出来高実績のばらつきが大きなものもある」ことが示されました。例えば、K474乳腺腫瘍摘出術については、出来高実績に「5000点程度」と「1万5000点程度」の2つの山(二峰性)があります。この原因としては、局所麻酔下によるものか、全身麻酔下によるものかの違いが考えられます。
この点については「全身麻酔の必要性を検討し、医療機関の行動変容を促して、医療の標準化を進めるべきではないか」との指摘が出され、厚生労働省がより詳しい分析を行っています。それによると、全身麻酔と局所麻酔のいずれか一方を中心に実施している医療機関があるなど「麻酔の実施方法が医療機関で大きく異なる」ことや、「同じ医療機関でも患者ごとに全身麻酔と局所麻酔を使い分けている」ことが分かりました。
前者だけであれば「局所麻酔に収れんさせていくべき」との考え方も出てきますが、患者の状態に応じて、医学的な必要性から全身麻酔と局所麻酔を使い分けているのであれば、局所麻酔に収れんさせるのは少し乱暴かもしれません。
藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科・医学部医療管理学分野教授)は特に後者を重く見て「現状では、麻酔方法の収れんは難しい状況のようだ」と判断。ただし、短手3の点数設定を細分化(例えば、乳腺腫瘍摘出術を全身麻酔と局所麻酔に2分)するかどうかについて、委員の意見はまとまっていません。
この一方で、厚労省が短手3の項目ごとに出来高実績点数の分布をあらためて調べたところ、多くの項目で「ばらつきが小さくなっている」ことも分かりました。例えば、D237終夜睡眠ポリグラフィーについて、出来高実績の上位25%症例の点数と、下位25%症例の点数との格差は、改定前(13年度)には9582点でしたが、改定後(14年度)には7519点に縮まっています。
また、K282水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合;その他)では、同様に1万3287点あった差が、改定後には実に944点にまで縮まっています。もっとも、水晶体再建術には「両眼が減って、片眼が増加する」など、診療形態の大きな変化という要因もあります。
親組織の中央社会保険医療協議会では、このように入院分科会が洗い出した技術的課題について、総合的な視点で改定内容を練っていくことになります。
短手3では、原則としてすべての診療行為が包括評価されています。しかし、透析患者については「出来高実績が総じて高い」ことが明らかになりました。
このため分科会では、ほかの包括評価項目では「高額の医療を要する特定の部分を包括から除外する」例もあることから、「透析」に関する診療報酬を包括評価から除外することを暗に提案しています。例えばJ038人工腎臓を出来高算定することなどが考えられそうです。
この点に関連して神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)や安藤文英委員(医療法人西福岡病院理事長)は、「透析以外にも重症患者や副傷病を持っている患者がいる。ここでも何らかの除外(包括外評価)を考えるべきではないか」と提案しました。
しかし、支払側の代表者である本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、「合併症などによって分岐を細かくしていけば、全包括の意味がなくなってしまう」と述べ、包括評価からの除外項目は慎重に検討する必要があると強調しました。
なお、厚労省は短手3の新規項目候補として次の3手術・検査を示していますが、神野委員は「短手3は平均在院日数のカウントからも除外される、拡大は慎重に行うべき」と注文を付けています。
(1)K616-4「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」
(2)K768「体外衝撃波腎・尿管結石破砕術」
(3)M001-2「ガンマナイフによる定位放射線治療」
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