体外衝撃波腎・尿路結石破砕術など、DRGの新規候補に浮上か―入院医療分科会
2015.7.1.(水)
DRGの本格導入の先駆けとも言われる短期滞在手術等基本料3(短手3)の新規候補として▽K616-4「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」▽K768「体外衝撃波腎・尿管結石破砕術」▽M001-2「ガンマナイフによる定位放射線治療」―の3つの手術・放射線治療が浮上してきました。
また現在、短手3となっているK634「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(15歳未満)」やK196-2「胸腔鏡下交感神経節切除術」などでは、出来高実績点数のばらつきが大きいことから、より実態に即した点数設定を検討していく方針も示されています。
短手3の在り方について、1日に開かれた診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」では前述のような論点が示されました。ほかに「慢性期入院医療」と「有床診療所」の診療報酬についても議論されています。今回は短手3に焦点を合わせましょう。
短手3は、一定程度治療法が標準化し、短期間で退院可能な手術・検査について、入院5日目までに行われたすべての医療行為を包括して支払う仕組みで、2014年度の診療報酬改定で導入されました。全包括の点数が設定されていることから、「DRG/PPSの本格導入の先駆け」とも言われます。
次期改定においては、短手3の拡大がどの程度進むのかが注目を集めています。厚労省はこの日、▽在院日数の平均+1SD(標準偏差)が5日以内▽一定の症例数がある▽入院5日以内の包括範囲出来高実績点数のばらつきが小さい―ものとして、次の3つの手術・放射線治療を挙げました。有力な新規候補と言えそうです。
(1)K616-4「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」
(2)K768「体外衝撃波腎・尿管結石破砕術」
(3)M001-2「ガンマナイフによる定位放射線治療」
本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「ほかの候補も提示してほしい」と要望しており、さらなる候補が浮上する可能性もあります。
なおGHCでは、独自に短手3の新規候補を予測しています。例えば「狭心症 経皮的冠動脈形成術(PCI)」や「小腸大腸の良性 内視鏡的消化管止血術」「上部尿路疾患 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL)」などで、厚労省の提示した手術とも一部合致します。
現在は、短手3には21種類の手術・検査が該当し、全体として標準化が進んでいますが、「ばらつきの多い手術・検査もある」と指摘されます。厚生労働省が各手術・検査について「包括範囲出来高実績点数」のばらつきを調べたところ、例えばK634「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(15歳未満)」では、点数の下位25%から上位25%までに2万1494点の差があることなどが分かりました。同様に、K196-2「胸腔鏡下交感神経節切除術」では9775点、K617「下肢静脈瘤手術(抜去切除術)」では9597点の差があります。
このようにばらつきの大きな手術・検査についてさらに細かく分析すると、K634「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(15歳未満)」では包括範囲出来高実績点数にの3つの山があり(三峰性)、また、K196-2「胸腔鏡下交感神経節切除術」やK617「下肢静脈瘤手術(抜去切除術)」などでは2つの山(二峰性)があることも分かりました。
この原因としては、K634「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(15歳未満)」では3歳未満・3-6歳の乳幼児に対する加算、K617「下肢静脈瘤手術(抜去切除術)」などでは全身麻酔の有無、などが考えられます。
厚労省は、こうした状況を踏まえて「実態に即した点数の在り方」を検討してはどうかと提案しました。しかし、ばらつきをそのまま点数に反映したのでは、全包括の意味が失われてしまいます。
そこで、「ばらつきの原因」や「標準化を促せるかどうか」などを考慮することになりそうです。例えば「全身麻酔の有無」がばらつきの原因だと考えられる場合には、その手術に全身麻酔が必要なのかを検討し、不要であれば細分化は不要ですが、必要なら細分化を考えるといった具合です。また、K634「腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(15歳未満)」のように患者の年齢によるばらつきなどは、医療機関側に標準化を求めることは困難ですし、すべきでもありませんから、細分化が検討される可能性が高そうです。
ところで、短手3の手術・検査を受ける患者の病態は当然ながらさまざまで、重症患者ではコストが高くなります。米国のDRG/PPSにおいても患者の重症度を考慮するためにCCPマトリックスが導入されるなど、包括評価では「患者の病態などをどう考慮するか」が大きな課題となります。
これに関連し、厚労省は透析患者に対して短手3を実施した場合の包括範囲出来高実績点数に着目しました。すると、患者全体と比べて透析患者では、より高いコストが掛かっていることが分かったのです。
厚労省は「透析患者など総点数が平均的な症例を大きく上回る状態に関する対応」を論点の1つに挙げており、次期改定で、例えば「透析患者の加算」などが検討されることになりそうです。神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「DPCのように副傷病名などを考慮する仕組みとしてはどうか」と提案しています。
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