GHCが大胆予想、「短手3」の新規候補はPCIに心カテ検査など
2015.5.12.(火)
入院基本料などの診療報酬がすべて包括される短期滞在手術等基本料3(「短手3」)や、診療報酬の大半が入院初日に支払われるDPCの点数設定D方式(「隠れDRG」)が2016年度以降の報酬改定で拡大される場合、新たな対象になりそうな手術や検査をGHCが洗い出した結果、平均在院日数が短く、入院期間のばらつきが小さい「狭心症 経皮的冠動脈形成術(PCI)」や「肺の悪性腫瘍 経皮的針生検法」などが浮上しました。
16年度の報酬改定をにらんだ中央社会保険医療協議会での議論がこれから本格化する見通しで、今回の分析を担当したGHCアソシエイトマネジャーの湯原淳平は「対象の拡大だけでなく、これらの診療報酬の包括点数の見直しも大きな焦点になる」と話しています。
分析は、GHCがデータを保有する395病院を14年7月に退院した24万1455症例(死亡症例や、DPC以外の病棟に転棟した症例は除外)を対象に実施しました。
「短手3」のほか、DPCの点数設定方式D(「隠れDRG」)の対象を決める上では、▽症例数が多い▽在院日数が短い▽入院期間のばらつきが小さい―ことが重視されるとGHCでは予想しています。そこで分析では、全症例の在院日数が「3-5日以内」(「短手3」)か「7日前後」(「隠れDRG」)と短く、かつ入院期間のばらつきを示す「標準偏差」や「分散」の小さいものを新たな対象の有力候補とみなしました。
分析の結果、予定手術では「狭心症 経皮的冠動脈形成術(PCI)」や「小腸大腸の良性 内視鏡的消化管止血術」「上部尿路疾患 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL)」などで全症例の9割以上が7日以内に退院している上に入院期間のばらつきも小さいことが分かりました=図表1=。
一方、予定検査では「狭心症 慢性虚血性心疾患」のカテーテル検査のほか「肺の悪性腫瘍 経気管肺生検法や経皮的針生検法」などがこうした条件に該当し、共同で分析を担当したGHCのアナリストの森本陽介は、これらの手術や検査が「短手3」や「隠れDRG」の新たな対象になる可能性が高いとみています=図表2=。
今回は、「短手3」や「隠れDRG」がこれまでに適用されている手術や検査、診断群分類で入院期間の短縮がどれだけ進んでいるかも検証しました。「短手3」が適用されている手術や検査の症例数トップ10をピックアップすると、これらはいずれも14年度から新たに対象になったもので、「短手3」の適用後はすべての手術や検査で在院日数が短縮していました。
同じように、「隠れDRG」が適用されている診断群分類のうち、適用前の11年10-12月と適用後の14年10-12月(同347病院)に共に500症例以上ある8つの診断群分類の平均在院日数を比較した結果、「直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍」では変化がなかったものの、これ以外の7つではいずれも在院日数の短縮が認められました。
今回の分析結果を受けて森本は、「短手3」と「隠れDRG」」の拡大が共に入院期間の短縮に一定の効果を上げているとみています。
「短手3」は入院基本料などの診療報酬がすべて包括され、1入院当たりの診療報酬を包括払いにする米国のDRG/PPSを事実上、部分導入したものです。また、「隠れDRG」はDPC対象病院への診療報酬の大半を入院初日に支払う仕組みで、2日目以降は報酬が極端に減少します。
16年度の診療報酬改定に向けた中医協の議論では、これらの対象の拡大や包括点数の見直しが論点の一つになる見通しです。
※ 詳しい分析結果は、GHCが発行する会員向けのPDFレポート 月刊「メディ・ウォッチ」(毎月10日発行)の15年5月号に掲載。
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・GHCがデータを保有する395病院を14年7月に退院した24万1455症例(死亡症例や、DPC以外の病棟に転棟した症例は除外)。
・予定手術では、「狭心症 経皮的冠動脈形成術(PCI)」「小腸大腸の良性 内視鏡的消化管止血術」「上部尿路疾患 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL)」「静脈・リンパ管疾患 その他の手術あり」「流産」などが、「短手3」や「隠れDRG」の新たな対象になる可能性が高い。
・予定検査では、「狭心症 慢性虚血性心疾患 左心カテーテル検査(血管内超音波検査含む)」「狭心症 慢性虚血性心疾患 右心カテーテル検査」「肺の悪性腫瘍 経気管肺生検法や経皮的針生検法」「肺の悪性腫瘍 気管支ファイバースコピー」「下垂体機能低下症 内分泌負荷試験 下垂体前葉負荷試験 成長ホルモン」「肺の悪性腫瘍 経皮的針生検法」などが、「短手3」や「隠れDRG」の新たな対象になる可能性が高い。