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“スーパーICU”にも軽症患者 GHC分析-医療資源投入、入室2日目には急落

2015.4.15.(水)

 2014年度の診療報酬改定に伴う再編後の特定集中治療室管理料1と2を算定している病室の中にも、医療資源の投入量が比較的低い患者を受け入れるケースがあることが、GHCの分析で明らかになりました。ICUの稼働率を高く維持するための対応とみられますが、より体制を充実させた「スーパーICU」を評価する点数なだけに、GHCでは入室中のクリティカルパスやベッド数の見直しが必要だと訴えています。

 分析は、14年10月-15年1月に特定集中治療室管理料を算定していた258病院の4万1091症例が対象で、入室してからの1日当たり医療資源投入量(診療報酬の出来高点数の合計値から特定入院料のみを除いた点数)の推移を、「手術あり」と「手術なし」の症例ごとに分析しました。

 地域ごとの医療提供体制再編の、いわばロードマップとなる「地域医療構想」の策定ガイドラインをめぐる国の議論では、高度急性期と一般的な急性期医療のニーズを推計する際、「1日当たりの医療資源投入量3000点」をこれら2つの機能の境界としました。そこで、高度急性期の基準に該当する症例の数がICUでどのように推移しているかを分析すると、手術ありの症例では2日目に急減し、3日目にはおよそ半分の症例が3000点を下回りました。

 疾患分類別の資源投入量の推移を見ると、「呼吸器系」と「消化器系」では入室2日目に約半分の症例で早くも3000点を割り込み、「神経系」ではほかに比べて4日目以降の資源投入が大幅に少なくなっていました。手術なしでの資源投入量も、2日目には3000点を下回る症例が約半分を占め、手術ありに比べて低水準で推移していました。

 また、「ICUに入室していた平均日数」と「1日当たりの医療資源投入量が3000点未満の日数割合」を特定集中治療室管理料1-4ごとに分析すると、平均入室日数と3000点未満の日数の間に強い相関は認められず、管理料1-4ごとに見てもこれらはばらついていました=図表=。
2015.4.15医療現場をウォッチ 月刊MW4月号サマリー版

 手厚い体制を整備しているはずの管理料1と2を算定する病室の中にも、3000点未満の日数の割合が高くて入院日数も長いケースがあり、今回の分析を担当したGHCのコンサルタント簗取萌は、「こうした病院ではICUの入室日数を短縮させるため、入室中のクリティカルパスやベッド数の見直しが必要になるだろう」と見ています。

「スーパーICU」に軸足をシフト、14年度診療報酬改定の影響は?

 14年度の診療報酬改定では、従来は2段階だった特定集中治療室管理料の点数設定を4段階に再編し、新たな管理料1と2の評価を一層充実させました。手厚い人員体制を整備したICUを適切に評価するためで、従来の管理料1と2は、再編後は管理料3と4にスライドさせました。再編後の管理料1と2では、ICUの「重症度、医療・看護必要度」の取り扱いが厳しくされ、治療・処置などに関する「A項目」と身体機能に関する「B項目」が共に3点以上の重症患者を、全体の9割以上にしなければならなくなりました。

 これら一連の見直しによる影響を調べるため、手術ありと手術なしについて、13年と14年の入室日数を疾患別に比較すると、手術あり症例の日数はいずれの疾患でもこの間にほとんど変化していませんでした。多くの患者がもともと1日でICUを退室していたため、重症患者の受け入れ割合の基準が厳しくなっても入室日数に影響が及ばなかったと簗取は見ています。

 これに対して手術なし症例では、「急性心筋梗塞」「肺炎」「解離性大動脈瘤」で入室日数がいずれも0.5日以上短縮していました。「念のためにあと1日はICUで」と従来は判断していた症例でも、早めに退室させないと重症患者の受け入れ割合の基準のクリアが難しくなり、これに現場が対応した結果とみられます。

※ 詳しい分析結果は、GHCが発行する会員向けのPDFレポート 月刊「メディ・ウォッチ」(毎月10日発行)の15年4月号に掲載されています。

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分析データと分析条件

・14年データ:14年10月-15年1月に特定集中治療室管理料を算定している258病院の4万1091症例

・13年データ:13年10月-14年1月に特定集中治療室管理料を算定している253病院の4万9870症例
※1入院につき2回以上、ICUに入室している症例では、すべてを一連の入室として計算。

・医療資源投入量について、「地域医療構想ガイドライン」では、1日当たりの診療報酬の出来高点数の合計から入院基本料相当分・リハビリテーションの一部を除いたものとされているが、分析を行った段階では詳細が不明だったため、特定入院料のみを除外。

分析結果のポイント

・手術ありの症例では、医療資源の投入が入室初日に非常に多いものの、2日目には急減、3日目には半分の症例で3000点を下回っていた。

・手術なしの症例でも入室初日の資源投入量が突出していたが、2日目には3000点を下回る症例が半分を占め、手術ありに比べて低水準で推移していた。

・「ICUに入室していた平均日数」と「1日当たりの医療資源投入量が3000点未満の日数割合」を特定集中治療室管理料1-4ごとにプロットすると、手厚い体制を整備しているはずの管理料1と2を算定する病室の中にも、3000点未満の日数の割合が高くて入院日数も長いケースがあった。

・14年度診療報酬改定の影響を調べるため、ICUへの入室日数を13年と14年で比べると、手術ありでの日数はいずれの疾患でもこの間にほとんど変化していなかった。

・手術なしでは、「急性心筋梗塞」「肺炎」「解離性大動脈瘤」での入室日数が、診療報酬改定後にいずれも0.5日以上短縮していた。

解説を担当したコンサルタント 簗取 萌(やなとり・もえ)

yanatori 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。看護師、経営学修士(MBA)。
国立看護大学校看護学科卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。ナショナルセンター集中治療室の勤務を経て、MBA取得後現職。DPC環境下における病院戦略、クリニカルパス、看護必要度等データに基づいた実証的分析、クリティカルケア領域の経験を踏まえた実践的な分析などを得意とする。名古屋第一赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「AERA」などの雑誌(掲載報告はこちら)、新聞への取材協力多数。「月刊ナースマネジャー」にて「一歩先を行く! 師長のための医療看護トレンドナビ」好評連載中。
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