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一般急性期の必要病床数は60万床余、15年現在-病床稼働75%でGHCが試算

2015.3.20.(金)

 急性期と回復期の線引きを「医療資源投入量1人1日600点」と定義した上で、急性期の病床(高度急性期を除く)の必要数をGHCが独自に試算すると、現時点で60万床余という結果になりました。これは、急性期の病床稼働率を75%と想定した場合の値です。地域ごとの医療提供体制を再編するため、各都道府県は地域医療の将来ビジョン(「地域医療構想」)の策定にいよいよ着手します。今回の分析を担当したアナリストの森本陽介は、「各病院は、地域の中で自分たちに求められている役割を徹底したデータ分析で見極めてほしい」と話しています。

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 GHCでは、2月には高度急性期をカバーする病床の必要数を試算していて、今回は高度以外の急性期を担う病床について、全国ベースでの必要数を割り出しました。

 医療提供体制の再編は、団塊の世代の人たちが全員75歳以上になる2025年をにらんだもので、現在の一般病床と療養病床を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」に区分けする医療の機能分化の推進が柱です。高齢化に伴う医療ニーズの急増や変化に対応できる体制をつくるため、これらの機能ごとの地域ニーズをベースに必要な体制整備を進めます。

 国の議論では、急性期と回復期の将来ニーズは、医療資源の投入量の推移から見極めることが決まり、厚生労働省は、このうち急性期医療全体のニーズを「医療資源投入量1人1日当たり600点」を目安に割り出す考え方を示しています。

 今回の試算では、GHC が保有するデータベースを使って、606 病院(総病床数 22 万8540 床)を2014 年9 月に退院した35 万3345 症例を分析対象にしました。

 高度急性期を含む急性期病床全体の必要数を試算するため、各症例のDPCコードを年齢区分(「65歳未満」「65歳以上75歳未満」「75歳以上」)と、入院目的(「予定入院症例」か「予定外入院と救急医療入院))によって6群に細分化しました。

 その上で、「手術あり」の症例は「手術日」、なしの症例は「入院日」を起点として、手技料や薬剤費、材料費といった療資源投入量(看護配置による差を無くすため、入院料などは除外)と退院症例数を割り出し、各DPCの「急性期の状態の日数」を6つの群ごとに試算しました。これを使って急性期に該当する各病院の病床数を割り出し、前回計算した高度急性期の該当分をそこから除きました。

 一般急性期の状態の日数を積み上げて全国補正すると、高度急性期を除く一般的な急性期の必要病床数は、「社会保障・税一体改革の医療・介護に係る長期推計」(11年6月)で示された病床稼働率70%の場合は64万3139床、85%なら56万2747床となりました。

 今回の分析は、人口動態や入院受療率の変化を想定せず、現時点でのニーズと供給数を割り出した値です。

医療資源の投入量「リハ点数除外」は妥当

 今回は、急性期と回復期のニーズを線引きする方法も検証し、分析担当者の森本は、「単純に医療資源投入量だけに着目して線引きすると、一般急性期のニーズが過剰にカウントされることになってしまう」と指摘し、一般急性期と回復期のニーズは、実際の診療内容を踏まえて割り出す必要があると主張していました。

 厚生労働省は当初、医療資源の投入量を積み上げたデータで一般急性期と回復期のニーズを計算する方針を示していて、リハの取り扱いは明確にしていませんでしたが、18日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」では実際、リハビリテーション料の一部を除外することを明らかにしました。初期・早期のリハの点数以外は、除外されることになりそうです。

 GHCのデータベースを使って、転棟症例が最も多い頸部骨折での医療資源投入量の推移を確認した結果、回復期病棟では頸部骨折に平均5単位/在棟日(運動期リハの場合900点)のリハが行われていて、急性期と回復期の境界とされる600点を上回る資源投入の日が、入院の後半になっても多いことが分かっていました。ただ、回復期を過ぎるとリハと投薬の請求が中心で、診断・治療に伴う請求はほとんど行われていませんでした=図表=。

 医療資源投入量からリハの点数を除外することを厚労省が明らかにしたのを受けて、森本は「妥当な取り扱い。回復期での診療の実態を踏まえてニーズを線引きできるようになる」と評価しています。
MW_3月号_図表_v1
※ 詳しい分析結果は、GHCが発行する会員向けのPDFレポート 月刊「メディ・ウォッチ」(毎月10日発行)の15年3月号に掲載されています。

分析結果のポイント

・高度急性期を除く一般的な急性期の必要病床数は、病床稼働率70%の場合は64万3139床、85%なら56万2747床。

分析データ

・GHC が保有する606 病院(総病床数 22 万8540 床)を14 年9 月に退院した35 万3345 症例

分析手法

(1)ストラクチャーによる集計単位の設定
 各DPC コードを年齢区分(「65 歳未満」「65 歳以上75 歳未満」「75 歳以上」)と、入院目的(「予定入院症例」か「予定外入院と救急医療入院))によって6 群に分類。

(2)医療資源投入量の算出
 「手術あり」の症例は「術日」、手術なしの症例は「入院日」を起点として、医療資源投入量(手技料・薬剤費・材料費)と退院症例数を算出。
※看護配置による差を平準化するため「入院料等」「特定入院料等」 は除外。
※症例ごとに術日が異なるため、入院日から推移を追うと、術前日数の差が資源投入量のばらつきにつながることから、手術あり症例は術日を起算として分析を行った。

(3)「急性期の状態の日数」の試算と積み上げ
 600 点以上の日数を「急性期の状態の日数」と定義し、6 つの群別に「急性期の状態の日数」を試算した。
※予定手術の症例では術前日数を一律1 日と仮定し、「高度急性期の状態の日数」を補正した。
※術日基準

(4)一般急性期の必要病床数の試算
 (3)で求めた「急性期の状態の日数」(補正後)を、GHC が保有する14 年9 月に606 病院を退院した計35 万3345 症例(22 万8540 床)に割り振り、各病院の急性期病床数を試算、そこから2 月号で求めた高度急性期の該当病床数を除くことで、一般急性期の病
床数を試算。

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