地域医療構想策定ガイドライン固まる、回復期は175点以上に設定
2015.3.18.(水)
地域医療構想を都道府県が作成するためのガイドラインが、18日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」で概ね了承されました。文言修正などを経て3月中に厚生労働省令(病床数推計の計算式)と関連通知(ガイドライン)として都道府県に示されます。
各機能の境界点については、▽高度急性期と急性期の境界(C1)は1人1日当たり3000点▽急性期と回復期の境界(C2)は同600点▽回復期と慢性期の境界(C3)は225点―といった数値が明示されました。都道府県はこれを目安に医療機能ごとの2025年の患者数を推計します。
回復期と慢性期の患者数の推計にあたっては、退院調整を行う期間を考慮し、225点ではなく175点を使ってそれぞれの患者数を区分することになりました。1人1日当たり175点以上の患者は回復期、175点に満たない患者は慢性期として推計します。
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地域医療構想は、地域の医療提供体制を再構築するためのいわば設計図で、「2025年」における「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」といった医療機能ごとの病床数を盛り込みます。病床数は、(1)医療機能ごとの患者数を推計する(2)医療機能ごとの推計患者数を病床稼働率(高度急性期75%、急性期78%、回復期90%)で割り戻す―という2段階で推計します。
(1)の患者数の推計にあたっては、高度急性期・急性期・回復期については「患者1人1日当たりの医療資源投入量」をベースにします。厚生労働省医政局医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長は、「従前は入院日数をベースに医療機能を考えてきたが、1人の患者の病態は時間の経過とともにさまざまに変化する」点に着目したことを強調しています。下の図で考えると、従来は縦軸に医療機能のラインを引く考え方でしたが、地域医療構想では横のラインを引き医療機能を設定します。
医療機能ごとの境界は次のように設定されました。
▽高度急性期と急性期の境界(C1)は1人1日当たり3000点
▽急性期と回復期の境界(C2)は同600点
▽回復期と慢性期の境界(C3)は同225点
ただ、回復期と慢性期の境界(C3)については、退院調整を行う期間を考慮し、225点ではなく175点が用いられ、「1人1日当たり175点以上の患者は回復期、175点に満たない患者は慢性期」として推計します。ただ、回復期リハの入院患者は資源投入量にかかわらず「回復期」としてカウントします。
医療資源投入量からは「入院基本料」相当分は除外されます。これは看護体制の影響を除外するものです。また、リハビリをすべて医療資源投入量に含めると「リハビリだけで600点を超えてしまう」という現象が起きます。しかし、リハビリ中心の医療を急性期とすることには疑問も残るため、厚労省は「リハビリテーション料の一部を除外する」ことも明らかにしました。初期・早期のリハビリの点数以外は、除外されることになりそうです。
具体的には3月中に示される病床数推計の計算式(厚労省令で規定)や、その後に都道府県に提示する「データセット」の中で、どのようなものを医療資源投入量から除外すのかを明らかにする見込みです。
療養病棟入院基本料は包括評価のため、どのような医療行為を提供しているかや資源の投入量が明確ではありません。そこで、慢性期の医療需要(患者数)推計にあたっては医療資源投入量とは異なる考え方が採用されました。
具体的には、「慢性期」と「在宅医療など」の医療需要を一体と見て、次の5つを合計して医療需要(患者数)を把握します。これは、全国在宅療養支援診療所連絡会の新田國夫会長の「療養病床で入院するような患者像でも、在宅療養が可能になる患者がいる」という指摘を重視したものです。病床数は「推計患者数を病床稼働率92%で割り戻」して計算します。
▽障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院料、特殊疾患入院医療管理料を算定している患者数
▽回復期リハを除く療養病床の入院患者数
▽一般病床の入院患者(回復期リハの患者数を除く)のうち医療資源投入量が1人1日当たり175点未満の患者数
▽現時点で訪問診療を受けている患者数
▽現時点の老健施設の入所者数
ところで「慢性期」と「在宅医療など」を一体と考えるとき、療養病床の入院受療率には大きな地域格差があるため、その格差が継続されてしまうのではとの懸念があります。
この点について、厚労省は格差を縮小していくために「25年に向けて、入院受療率の目標値を、都道府県の最小値(A)から構想区域の中央値(B)までの範囲内で設定する」仕組みを採用しました。入院受療率の目標値を達成するために、在宅復帰を推進していく取り組みが重要となってきます。
ただ、入院受療率が高い地域では目標を設定することすら難しいケースもあります。そこで厚労省は、一定の要件を満たす地域では「目標設定を30年とし、そこから逆算して25年の目標値(いわば中間目標)を設定する」という特例も設けました。最終的な目標達成の時期を5年先延ばしするイメージです。
さらに、「やむを得ない事情で在宅医療などの整備が遅れる」「単身高齢者数が著しく増加する」など特別の事情がある場合には、入院受療率の目標を変更することも認められます。18日の検討会で中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「地域の文化的事情も含めるべきだ」と強く述べています。
また、地域医療構想では「患者の流出入」が非常に重視されています。厚労省医政局地域医療計画課の北波孝課長は「同じ患者を異なる地域で重複カウントしてはいけない。患者の流出入を適切に把握し、地域間で協議・調整することが重要」との考えを示しています。
DPCデータから「患者の郵便番号と医療機関の所在地」、NDBデータから「国保被保険者の居住市町村と医療機関の所在地」が既に明らかになっており、ここに「被用者保険利用者の動向」を推計し、流出入の実態を把握することが可能です。さらに地域における将来の医療提供体制の整備計画を勘案して、将来の患者流出入を的確に把握できると期待されています。
厚労省の北波課長や佐々木室長は「地域医療構想の実現」こそが重要だと強調しており、ガイドラインには▽構想の実現に向けた取り組み▽協議の場(地域医療構想調整会議)の運営▽都道府県知事による対応▽構想実現に向けたPDCA―などが詳述されています。
検討会では今後、「病床機能の定量基準」などについて議論していきます。