DPCの持参薬と入院患者の他医療機関受診、関連する問題で対応が必要―日病協
2015.7.24.(金)
DPCにおける持参薬の問題は、入院患者の他医療機関受診の問題とも関連するため、あわせて対応を考えなければいけない―。このような検討を日本病院団体協議会の中で行っていることを、楠岡英雄議長が24日の記者会見で明らかにしました。
もっとも具体的な対応方針までは固まっておらず、さらなる検討が続けられる見込みです。
一部のDPC病院では、入院治療に必要な薬剤(特に高額な薬剤)を外来で処方し(出来高算定)、それを患者に持参させていました。この場合、DPC点数には、当該薬剤費が包括評価されているため、病院側は理論上、薬剤費を二重に請求していることになります。
2014年度のDPC改革では、こうした「持参薬」が問題となり、「入院の契機となる傷病の治療に係るものとして、あらかじめ当該またはほかの病院などで処方された薬剤を患者に持参させ、当該病院が使用することは特別な理由がない限り認められない」との取り扱いが規定されました。
しかし医療現場からは、問題となった事例は不適切で対応が必要だが、これを持参薬一般に拡大するのは好ましくないのではないか、との声が少なくありません。楠岡議長は次のような具体例を挙げて、問題点を指摘します。
▽単科のDPC病院に複数の疾患を持つ患者が入院した場合、その病院に備蓄していない医薬品が必要となるケース
▽総合のDPC病院でも、眼科を持たない所も多く、白内障を合併した患者が点眼薬を希望するケース
▽同じように精神科のないDPC病院に、精神疾患を合併する患者が入院し、精神疾患の治療薬が必要となるケース
こうしたケースに対して「DPC点数には合併症の薬剤費も包括評価されており、持参薬の使用は一切認めるべきでない」という考え方もあります。一方、最初に挙げた特殊なケースを除き、「すべてのDPC病院であらゆる薬剤の備蓄を求めるのは現実的ではない」といった意見もあります。
ところで、上記の具体例の多くは慢性疾患を抱える患者が対象となります。このため、一部には「かかりつけの医療機関があるはずなので、そこで医薬品を処方してもらえばよい」との指摘もあるようです。
この点について楠岡議長と神野正博副議長は、「かかりつけ医を受診した場合には、『入院中の他医療機関受診』として扱われる」ことを指摘します。
入院患者がほかの医療機関を受診した場合、▽出来高病棟では入院基本料の30%▽特定入院料算定病棟では費用の70%―が減額され、DPC病棟では「他医療機関分も含めてDPC病棟が請求し、合議で精算する」ことになりますが、それにより診断群分類が変わる可能性もあります。神野副議長は「現在の、入院中の他医療機関受診の取り扱いは厳しすぎる」と述べ、「DPCの持参薬」と「入院中の他医療機関受診」には関連する問題があることを指摘しています。
さらに楠岡議長は「関節リウマチの治療に用いるリウマトレックス(メトトレキサート)など一部の薬剤は専門医でなければ適切な処方が難しい。医療事故や健康被害に繋がる可能性もある」と述べ、現在のDPC病院における持参薬の取り扱いは見直しが必要であるとの考えを強調しました。
もっとも、現時点では、日病協としての具体的な対応案は固まっていません。厚生労働省はDPC病院における持参薬の実態を調べるための特別調査実施を行うこととしており、今年秋にもDPC評価分科会などで具体的な議論が行われる見込みなので、それまでに日病協としての関係がまとまるのか注目が集まります。
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