【16年度改定答申・速報1】7対1の重症患者割合は25%で決着、病棟群単位は18年3月まで―中医協総会
2016.2.10.(水)
ついに2016年度診療報酬改定の全容が明らかになりました。
7対1入院基本料の施設基準である重症患者割合については25%に引き上げることで決着。ただし許可病床数200床未満の病院では、病棟群単位の入院基本料を届け出なければ、2018年3月31日までの2年間、重症患者割合の基準値は23%に緩和されます。
また病棟群単位の入院基本料を選択する場合には、今年(2016年)4月から来年(2017年)3末までの間に届け出る必要があり、来年4月以降は7対1病棟の病床数を一般病棟全体の60%以下に縮小しなければなりません。
中央社会保険医療協議会・総会は10日に塩崎恭久厚生労働大臣に宛てて答申を行い、これを受けて厚生労働省は3月上旬(4日予定)に新点数などの告示、関連通知の発出を行う見込です。
まず7対1入院基本料について、より的確に重症患者を把握するため「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の項目が次のように見直されます。全身麻酔手術の範囲や内科的治療の具体的内容などの詳細は、今後の通知などを待つ必要があります(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▽A項目に、「救急搬送後(2日間)の患者」と「無菌治療室での治療」(専門的な治療・処置に追加)を加える
▽B項目から「起き上がり」「座位保持」を削除し、新たに「危険行動」「診療・療養上の指示が通じる」を追加する
▽手術などの医学的状況を判断するC項目(これまでM項目として議論、詳細は以下)を追加
・開頭の手術(7日間)
・開胸の手術(7日間)
・開腹の手術(5日間)
・骨の観血的手術(5日間)
・胸腔鏡・腹腔鏡手術(3日間)
・全身麻酔・脊椎麻酔の手術(2日間)
・救命等に係る内科的処置(2日間)
さらに重症患者の対象を、これまでの「A項目2点以上かつB項目3点以上」に加えて、「A項目3点以上」、「C項目1点以上」にも拡大します。
こうした見直しによる重症とカウントされる患者が増加するため、重症患者割合の基準値が現在の「15%以上」から「25%以上」に引き上げられます。
ただし、許可病床数200床未満の病院(今年3月末時点で7対1を届け出ている病院に限る)では、後述する病棟群単位の届け出を選択しなければ、2018年3月31日までの2年間、重症患者割合は「23%以上」に緩和されます。手術を数多く実施している一部の200床未満病院では、「23%以上」のクリアは容易かもしれませんが、多くの200床未満病院ではやはり「厳しい基準」となりそうです。
また在宅復帰率については、在宅復帰先に「在宅復帰機能強化加算を届け出た有床診療所」(今回改定で新設)が新たに追加されるとともに、基準値が「80%以上」に引き上げられます(現在は75%以上)。
7対1の施設基準が厳しくなるため、「10対1への移行」を考えなければならない7対1病院も出てくると予想されます。しかし、看護師の削減は容易ではなく、収益的なインパクトも大きなものがあります。そこで今年3月31日時点で7対1を届け出ている病院について、一時的に「病棟群単位の入院基本料」届け出が認められます。届け出期間や病床数に制限があり、「50床×10病棟、500床」の7対1病院を例にスケジュールなどを考えると、次のようなイメージです。
○今年4月1日から来年(2017年)3月31日までに「病棟群単位の入院基本料」を届け出る(1回限り)。ただし、4病棟以上を持つ病院では、7対1、10対1をそれぞれ2病棟以上としなければならない。(例えば8病棟・400床を7対1、2病棟・100床を10対1とする)
↓
○来年4月1日からは、7対1の病床数を「一般病棟の病床数の60%以下」にしなければならない(病棟構成の変更について届け出る)(例では、7対1は最大で6病棟とする)
↓
○再来年(2018年)4月以降、病院全体で7対1の施設基準を満たせなければ、完全に10対1に移行しなければならない
ただし、病院団体などは「一時的な対応」に強く異論を唱えており、2018年度改定で「病棟群単位の入院基本料」の存続期間が伸びることも予想されます。その場合には、例えば「2018年4月-2019年3月は7対1を40%以下とする」「2019年4月-2020年3月は7対1を20%以下とする」などと7対1病床割合を漸減していくことなども議論になりそうですす。
なお7対1から10対1への移行を促進するため、重症患者を多く受け入れる10対1病院を評価する「看護必要度加算」について、次のように重症患者割合の基準値を高めるとともに、点数の引き上げが行われました。
【看護必要度加算1】重症患者割合が24%以上:55点
【看護必要度加算2】重症患者割合が18%以上:45点
【看護必要度加算3】重症患者割合が12%以上:25点
地域の砦となる病院を評価する「総合入院体制加算」についても、大きな見直しが行われます。これまで「加算1の施設基準のうち化学療法4000件以上が厳しい」「加算を算定している病院でも認知症の救急搬送患者などの受け入れに消極的な病院もある」などの指摘を踏まえたものです(関連記事はこちら)。
まず加算1については、化学療法の年間実施件数が現在の「4000件以上」から「1000件以上」に緩和されます。ただし、新たに「看護必要度のA項目2点以上またはC項目1点以上の患者が30%以上」「日本医療機能評価機構の評価を受けている」ことが新要件として加わりました。1日につき240点を全入院患者に算定できる(14日以内)点は変わっていません。
次に現在の加算1と加算2の間に位置する「加算2(新)」が設けられます。この加算を届け出るためには、次のような施設基準を満たす必要があり、1日につき180点が全入院患者について算定できます(14日以内)。
▽年間の救急車での搬送件数が2000件以上
▽年間の手術件数が800件以上、実績要件(人工心肺手術40件以上、がん手術400件以上、腹腔鏡下手術100件以上、放射線治療4000件以上、化学療法1000件以上、分娩100件以上)6つのうち4つ以上を満たす
▽24時間の精神科体制を持ち、「精神科リエゾンチーム加算」などの届け出を行い、精神疾患診療体制加算2などの算定が年間20件以上
▽看護必要度A項目2点以上、またはC項目1点以上の患者が30%以上
▽医療機能評価を受けている
▽2次救急である、または救命救急センターなどを設置している
また現在の加算2は「加算3(新)」となり、施設基準のうち次の点が厳格化されます。1日につき120点を全入院患者に算定できる(14日以内)点に変わりはありません。
▽実績要件(前述)6つのうち2つ以上を満たす
▽24時間の精神科体制を持ち、「精神科リエゾンチーム加算」などの届け出をしているか、精神疾患診療体制加算2などの算定が年間20件以上
▽看護必要度A項目2点以上、またはC項目1点以上の患者が27%以上
ICUについては、より重症の患者を適切に把握するため「特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度」のA項目を次のように見直します(関連記事はこちら)。
▽「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」は現行どおり1点のままとする
▽その他の項目は2点とする(現行は1点)
▽A項目に関する重症患者の基準を「4点以上」とする(現行は3点以上)
この見直しにより重症患者が減少すると見込まれるため、重症患者割合について現行の「9割以上」(特定集中治療室管理料1と2)あるいは「8割以上」(管理料3と4)から、それぞれ10ポイント下げ、「8割以上」(管理料1と2)あるいは「7割以上」(管理料3と4)とします。
またICUについては、B項目を一般病棟と同じ評価とする(HCUも同様)、薬剤師を配置した場合の加算を新設するといった見直しも行われます。
このほか次のような見直し内容も明らかになりました。
●紹介状なしに特定機能病院または一般病床500床以上の地域医療支援病院を受診した場合、初診では5000円(歯科は3000円)、再診では2500円(歯科は1500円)以上の特別料金徴収を義務化する
●外保連試案8.3版を参考に、約300項目の手術について最大30%の引き上げを行う。注目される術式の点数は次のようになりました(関連記事はこちらとこちら)。
▽緊急帝王切開:2万2200点(←前回改定で2万140点←前々回改定では2万2160点)
▽生体部分肺移植術:13万260点(←前回改定で10万980点)
▽重粒子線治療(切除非適応の骨南部腫瘍のみ適応):23万7500点(加算など込み)
▽陽子線治療(小児腫瘍のみ適応):23万7500点(加算など込み)
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