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緊急帝王切開術など55の術式、2016年度改定でプラスアルファの評価をすべき―外保連

2016.1.13.(水)

 手術時間の短縮は現場の努力によるもので、手術時間のみに着目した手術点数の減点は妥当ではない。「緊急度」や「2つの命を扱う手術」「費用対効果」などの新しい評価軸に沿った適切な評価をしてほしい―。外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は12日に記者懇談会を開催し、厚生労働省にこのような要望を行っていく考えを強調しました。

 外保連の岩中督会長(埼玉県立小児医療センター病院長)は、新たな評価軸にそって重点的に評価するべき術式として「K898 帝王切開術」など55項目を挙げました。これらは、2014年度の前回改定で不合理な点数引き下げが行われた術式や、「患者の状態が明らかに改善する」ために適切な評価を行うべきと考えられる術式です。

外保連の岩中督・会長(埼玉県立小児医療センター病院長)

外保連の岩中督・会長(埼玉県立小児医療センター病院長)

「緊急度」など5つの新たな評価軸を設け、外保連試案に反映

 外保連は、99の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な診療報酬のあるべき姿について学術的な視点に立って研究し、提言を行っています。

 特に手術・処置・麻酔・検査について、難易度や人件費などを定量的に評価した「外保連試案」は、現在の診療報酬点数のベースにもなっています。

 この点について岩中会長は、「外保連試案はエビデンスに基づくことをモットーとしており、人件費や材料費など定量化できるものに絞ってきた。そのため、例えば都市と地方で費用が異なる『手術室の設置費用』など、定量化が困難な部分はそぎ落としてきた」ことを強調。しかし、2014年度の前回診療報酬改定では、手術時間が短縮した(人件費の減少に結びつく)術式について点数の引き下げが行われました。

 外保連ではこれを遺憾と考え、人件費・材料費以外の新たな評価軸として、次の5項目(細分類項目を入れると9項目)を設定し、「外保連試案2016」を策定しました。

1.手術を行うbenefitのスコア化の策定

 1a.生命維持・延命効果

 1b.QOLの維持・改善効果

 1c.医療資源の有効活用

2.医療紛争リスク

3.手術中の緊急度

 3a.手術時間を短縮することで生命予後の改善が見込めるか、重篤な機能障害(脳性麻痺など)が防げる場合で、evidenceのあるもの

 3b.手術時間を短縮することで患者の状態が明らかに改善できる場合で、evidenceのあるもの

 3c.手術時間を短縮することで患者の状態が明らかに改善できる場合で、経験的には理解されているが、evidenceのないもの

4.2つの命を扱う手術

5.費用対効果

 この新たな評価軸のうち例えば1b「QOLの維持・改善」などは、すべての術式に当てはまりますが、外保連では特に重点的に評価すべき55の術式について2016年度改定での手当て(点数の引き上げ)を求めています。「不合理な点数の引き下げが行われた」術式や「「患者の状態が明らかに改善する」ために適切な評価を行うべきと考えられる術式」などが含まれています。川瀬弘一手術委員長(聖マリアンナ医科大学小児外科教授)は、次のような術式について「プラスアルファの評価を行うべき」と強調しています。

外保連の川瀬弘一・手術委員長(聖マリアンナ医科大学小児外科教授)

外保連の川瀬弘一・手術委員長(聖マリアンナ医科大学小児外科教授)

1a:今回は該当なし

1b:K178-4「経皮的脳血栓回収術」、K510「気管支腫瘍摘出術(気管支鏡下)」など

1c:今回は該当なし

2:今回は該当なし

3a:K615 1「経皮的塞栓術・胸部腫瘍」、K898 1「緊急帝王切開術」など

3b:「人工血管置換術(破裂性大動脈瘤)」

3c:K610 3「動脈形成術または吻合術・腹腔内動脈(大動脈以外)」、K930 1「子宮破裂手術(子宮全摘)」など

4:K898 1「緊急帝王切開術」、K893「吸引娩出術」など

5:K242 1「斜視手術」、K282 1ロ「水晶体再建術(眼内レンズ挿入)など

処置では、外保連の試算と診療報酬の乖離を是正すべき

 処置についても人件費と材料費をベースとした試案が設定されていますが、平泉裕処置委員長(昭和大学医学部整形外科客員教授)は「現在の診療報酬では、人件費の評価が低く、材料費の高騰が考慮されていない」と指摘。このため、外保連の試算(人件費、材料費などの費用を合計したもの)と診療報酬点数との間に大きな乖離が生じている項目もあります。

 例えばJ023「気管支ファイバースコープによる経気管支薬液注入法」について、外保連では3万4001円の費用がかかると試算していますが、診療報酬は120点(1200円)に設定されており、30倍近い乖離があります。

 またJ30「食道ブジー法」では、外保連の試算では5万2023円の費用がかかりますが、診療報酬は100点(1000円)で、50倍以上の乖離となっています。

 平泉処置委員長は、「昔はガーゼや包帯のみで処置を行っていたが、現在では異なる」ことを強調し、厚労省に是正を求めました。

外保連の平泉裕・処置委員長(昭和大学医学部整形外科客員教授)

外保連の平泉裕・処置委員長(昭和大学医学部整形外科客員教授)

 

 また外保連では、検査についてJLAC10に準拠した15桁の分類コードを新たに設け、麻酔について技術革新に伴う見直しなども行っています。

外保連の山田芳嗣・麻酔委員長(東京大学大学院医学系研究科教授)

外保連の山田芳嗣・麻酔委員長(東京大学大学院医学系研究科教授)

外保連の土田敬明・検査委員長(国立がんセンター中央病院内視鏡部医長)

外保連の土田敬明・検査委員長(国立がんセンター中央病院内視鏡部医長)

 

 ところで外保連では、2016年度の次期診療報酬改定に向けて、医療技術の進歩などに鑑み新設210項目・改正202項目など合計459項目の要望を行っています。この点について瀬戸泰之会長補佐(東京大学胃食道外科教授)は、「2012年度の改定では新規の要望項目のうち4割以上が採用されたが、2014年度の前回改定では2割強の採用に止まった。2016年度の次回改定では診療報酬本体が0.49%のプラス改定となった。採用率が4年前の水準になるよう努力していく」との考えを強調しています。

外保連の瀬戸泰之・会長補佐(東京大学胃食道外科教授)

外保連の瀬戸泰之・会長補佐(東京大学胃食道外科教授)

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