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【2016年度診療報酬改定総点検3】在宅医療の報酬体系を大幅に見直し、課題は是正されるのか?

2015.12.31.(木)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けた議論が、年明けから佳境を迎えます。メディ・ウォッチでは年明け論議に備えるために、これまでの改定論議をおさらいしています。今回は、在宅医療の診療報酬に焦点を合わせます。

施設への訪問診療、「月何人に訪問しているか」に着目した報酬体系に

 在宅医療の診療報酬は、現在▽患者の居住場所はどこか▽同一日に同一建物に居住する複数の患者に訪問を行っているか(以下、同一日訪問)―の2つの軸で、合計4つの点数設定がなされています。

居住する施設の種類によって在宅医療の診療報酬は複雑に区分されている

居住する施設の種類によって在宅医療の診療報酬は複雑に区分されている

 前者の軸に沿うと、「戸建住宅や高齢者向け集合住宅」の方が、「特定施設」よりも高い点数が設定されています(A>B、C>D)。

 後者の軸に沿うと、同一日訪問の方が、そうでない場合よりも引く点数が設定されています(A>C、B>D)。

 このような複雑な報酬体系は、「一部ではあるが、特定施設などの同一建物に居住する多くの高齢者に過剰な在宅医療を提供しているところがある」という問題点を是正するために、数回の改定を経た結果、構築されたものです。ただし、在宅医療の現場にはまだ次のような問題点があると指摘されます(関連記事はこちらこちら)。

▽集合住宅や特定施設において、訪問日を調整するなど、非効率な在宅医療が提供されている(通常は同一日訪問では低い点数が設定されるが、月に1度でも同一日訪問でない訪問を行えば当該患者の点数が低くならないため)

在総管などの減額を避けるために、訪問日を調整して訪問診療を行うケースも多いという

在総管などの減額を避けるために、訪問日を調整して訪問診療を行うケースも多いという

▽高齢者向け集合住宅を中心に在宅医療を行う医療機関では、戸建住宅・アパートなどを中心に在宅医療を行う医療機関に比べて、軽症患者を数多く診る傾向にある(両者が同じ報酬体系で、かつ患者の重症度が考慮されていないため)

戸建住宅などを中心に在宅医療を提供している医療機関に比べて、高齢者向け集合住宅中心に在宅医療を提供する医療機関では「軽症患者を数多く診る」傾向にある

戸建住宅などを中心に在宅医療を提供している医療機関に比べて、高齢者向け集合住宅中心に在宅医療を提供する医療機関では「軽症患者を数多く診る」傾向にある

▽月2回の訪問が著しく多い(在宅時医学総合管理料などが、月2回以上の訪問を算定要件としているため)

外来では月1回の診療が最も多いが、在宅では「月2回」が多くなる

外来では月1回の診療が最も多いが、在宅では「月2回」が多くなる

 こうした問題点を解決するために、厚生労働省は次のような見直しを行ってはどうかと中央社会保険医療協議会に提案しました(関連記事はこちら)。

(1)戸建住宅・アパートなどと高齢者向け集合住宅の点数を分ける

→点数を、「戸建住宅・アパートなど」と「高齢者向け集合住宅・特定施設」とで区分する

在宅医療の報酬体系の見直し1(特定施設等以外の高齢者向け住宅を、特定施設等と同じ評価とする)

在宅医療の報酬体系の見直し1(特定施設等以外の高齢者向け住宅を、特定施設等と同じ評価とする)

(2)同一日訪問か否かと異なる基準で点数を区分する

→現在の「同一日訪問かどうか」という区分を、「月当たり何人に訪問診療を行っているか」という区分に見直す

在宅医療の報酬体系の見直し2(訪問診療を行う人数の区分についてきめ細かく設定する)

在宅医療の報酬体系の見直し2(訪問診療を行う人数の区分についてきめ細かく設定する)

在宅医療の報酬体系見直し3(人数による点数の細分化を行う際、その人数は「1か月の訪問患者数」とする)

在宅医療の報酬体系見直し3(人数による点数の細分化を行う際、その人数は「1か月の訪問患者数」とする)

(3)患者の重症度を考慮した点数設定を行う

→▽人工呼吸器の使用▽スモン▽指定難病▽中心静脈栄養▽自己腹膜灌流▽人工肛門▽悪性腫瘍―など長期にわたる医学管理が必要な患者ついては、高い点数を設定する

患者の重症度を評価するにあたって、▽人工呼吸器▽スモン▽難病―などが参考にされる見込み

患者の重症度を評価するにあたって、▽人工呼吸器▽スモン▽難病―などが参考にされる見込み

(4)在宅時医学総合管理料などを月1回の訪問でも算定可能とする

在宅医療の新たな報酬体系は、(1)重症度評価の導入(2)特定施設等以外の高齢者向け住宅の評価区分見直し(3)患者の人数に応じたきめ細かな評価(4)人数は「1か月の訪問患者数』で判断する―という見直し内容で構成される

在宅医療の新たな報酬体系は、(1)重症度評価の導入(2)特定施設等以外の高齢者向け住宅の評価区分見直し(3)患者の人数に応じたきめ細かな評価(4)人数は「1か月の訪問患者数』で判断する―という見直し内容で構成される

 

 このように厚労省は在宅医療の報酬体系を大幅に見直したい考えで、中医協委員からは特段の反対意見は出ていません。このため年明けからは、より具体的な制度設計に関する議論が行われることになりそうです。

 例えば(2)では、1か月あたり「1人に対する訪問は◆点」「○人以上▽人に対する訪問は◆点」「□人以上に対する訪問は◆点」などと設定される見込みですが、具体的な人数設定の議論が行われることになるでしょう。

 さらに(4)では、重症患者をどのように考えるのか、より具体的な疾患名や状態像に関する議論が行われると考えられます。

訪問看護に携わる看護師育成のため、医療機関からの訪問看護を高く評価

 2016年度の診療報酬改定は「地域包括ケアシステムの構築」が重点課題に据えられています。このため、地域包括ケアシステムで重要な位置を占める在宅医療、特に医療と介護の双方にまたがる「訪問看護」を推進するため、次のような見直しが検討されています(関連記事はこちら)。

▽病院・診療所からの訪問看護をより評価する(訪問看護に携わる看護師の育成を推進するため)

▽「退院直後」の一定期間に限定して、入院医療機関が▽退院支援▽訪問看護ステーションとの連携―のための訪問指導を行うことを評価する

入院医療機関が、退院した患者について在宅療養を支援を行っても、これを評価する報酬はない

入院医療機関が、退院した患者について在宅療養を支援を行っても、これを評価する報酬はない

▽機能強化型訪問看護ステーションの看取り実績要件について、「超重症児などの小児を24時間体制で受け入れている」実績も含めて評価する(医療ニーズの高い小児へ訪問看護を提供する訪問看護ステーションをより高く評価する)

▽機能強化型訪問看護ステーションの看取り実績要件に、「在宅がん医療総合診療料を算定していた利用者」を含めて評価する(機能強化型のハードルを事実上緩和する)

訪問看護ステーションと医療機関がターミナルケアを共同で行った場合、医療機関が一括して「在宅がん医療総合診療料」を算定するルールとなっている(訪問看護ステーションでは報酬算定はできない)

訪問看護ステーションと医療機関がターミナルケアを共同で行った場合、医療機関が一括して「在宅がん医療総合診療料」を算定するルールとなっている(訪問看護ステーションでは報酬算定はできない)

▽病院・診療所と訪問看護ステーションの2か所から訪問看護を行えるケース(現在は制限なし)は、「末期の悪性腫瘍」や「神経難病」などの利用者に限定する(複数の訪問看護ステーションが訪問看護を行える規定と合わせる)

▽緊急の場合には、同一日に2か所目の訪問看護ステーションが緊急訪問を実施した場合にも報酬を算定できることとする

【連載】16年度診療報酬改定総点検
(1)7対1の施設基準は厳格化の方向、重症患者割合は25%に引き上げられるのか?
(2)地域包括ケア病棟、手術・麻酔の出来高評価について診療側の意見はまとまるのか?
(3)在宅医療の報酬体系を大幅に見直し、課題は是正されるのか?
(4)DPCの中で「医療法上の臨床研究中核病院」は評価されるのか?
(5)療養病棟の医療区分、「きめ細かい状況」をどのように考慮するのか?
(6)主治医機能の評価、紹介状なし大病院患者の特別負担によって外来医療の機能分化

【関連記事】
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