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医療機関からの訪問看護、報酬引き上げへ、訪問看護人材育成し地域包括ケア推進―中医協総会

2015.11.11.(水)

 2016年度の次期診療報酬改定では病院や診療所が行う訪問看護の報酬を引き上げ、訪問看護師の育成の促進につなげる―。このような提案が、11日に開かれた中央社会保険協議会の総会で、厚生労働省から行われました。

 このほか訪問看護については、「超重症児などの小児を24時間体制で受け入れている訪問看護ステーションの評価」や「入院医療機関と訪問看護ステーションとが退院直後の患者に連携して訪問指導を行った場合の評価」なども行われる見込みです。

11月11日に開催された、「第312回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月11日に開催された、「第312回 中央社会保険医療協議会 総会」

訪問看護を実施する医療機関は少数派

 介護が必要になっても、介護施設に入所せず、住み慣れた地域で在宅生活を送れるようにサポートする地域包括ケアシステムの構築が重要課題となっています。いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年に向けて、慢性期医療や介護のニーズが今後、急激に高まっていくためです。

 地域包括ケアシステムにおいては、医療と介護のいずれのサービスも提供する「訪問看護」が重要な役割を果たすと考えられています。しかし、2014年12月末時点で訪問看護ステーションに就業している看護師は、わずか2%に過ぎません。

訪問看護ステーションに従事している看護師は、全看護師(就業)のわずか2%に過ぎない

訪問看護ステーションに従事している看護師は、全看護師(就業)のわずか2%に過ぎない

 このため2014年度の前回改定では、看取りや24時間対応などに積極的に取り組む訪問看護ステーションを「機能強化型」として高く評価することなどが行われました。

 ところで訪問看護に従事する看護師は、やはり病院や診療所で養成することが重要です。入院から在宅、介護を継ぎ目なく提供する「シームレスケア」の実現には、病院や診療所の看護師が積極的に訪問看護を行い、そこで得た知見や経験を基に「在宅を見据えた退院支援の実施」や「訪問看護ステーションの開設」などを進めることが必要だからです。

 しかし、訪問看護を実施する医療機関は少数派(病院では19.3%、診療所では2.5%)にとどまっています。これは、病院・診療所と訪問看護ステーションの報酬の差異が起因している可能性もあります。両者を比べると、訪問看護の実施に関する評価は同様ですが、病院・診療所では「訪問看護管理に関する評価」や「ターミナルケアに関する評価」などはなされていません。

訪問看護を実施している病院・診療所は少数派で、病院の行っている訪問看護のほとんどは精神科訪問看護・指導である

訪問看護を実施している病院・診療所は少数派で、病院の行っている訪問看護のほとんどは精神科訪問看護・指導である

病院・診療所と訪問看護ステーションでは、訪問看護に関する報酬が異なっている

病院・診療所と訪問看護ステーションでは、訪問看護に関する報酬が異なっている

 そこで厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「病院・診療所からの訪問看護をより評価する」考えを表明しました。具体的に「訪問看護を実施した場合の評価(在宅患者訪問看護・指導料など)を引き上げるのか」「他の報酬項目(ターミナルケアの評価など)を新設するのか」などは、今後の検討に委ねられています。

 2015年度に行われた介護報酬改定でも、病院・診療所からの訪問看護について報酬を引き上げており(関連記事はこちら)、省を挙げた「訪問看護に従事する看護師の養成」に力を入れていると考えられます。

退院直後、医療機関と訪問看護STが連携した訪問指導を評価

 在宅医療・介護体制が充実していることが、早期退院に向けた重要な要素の1つとなっています。入院医療機関と在宅医療・介護サービスが連携を取ることで、患者や家族が安心して在宅移行を選択できるからです。

 この点、入院医療機関が在宅移行を支援する診療報酬としては、退院前に患者宅を訪問して指導を行うことを評価する「退院前訪問指導料」がありますが、退院後に在宅療養を支援することを評価する項目はありません。

入院医療機関が、退院した患者について在宅療養を支援を行っても、これを評価する報酬はない

入院医療機関が、退院した患者について在宅療養を支援を行っても、これを評価する報酬はない

 そこで宮嵜医療課長は、「退院直後」の一定期間に限定して、入院医療機関が▽退院支援▽訪問看護ステーションとの連携―のための訪問指導を行うことを評価してはどうかと提案しました。

 この点について福井トシ子専門委員(日本看護協会常任理事)は、「病棟の看護師と、訪問看護ステーションの看護師が協働する」ことを評価すべきと注文を付けました。今後の具体的な制度設計において重要な指摘と言えるでしょう。

医療ニーズの高い小児への訪問看護を推進

 また宮嵜医療課長は、機能強化型訪問看護ステーションについて次のような見直しを行うことも提案しています。いずれも、報酬が高く設定されている機能強化型を算定しやすくする内容と言えます。

(1)実績要件について、看取り件数だけでなく、「超重症児などの小児を24時間体制で受け入れている」実績も評価する

(2)実績要件の看取り件数について、「在宅がん医療総合診療料を算定していた利用者」を含める

 (1)は、医療ニーズの高い小児へ訪問看護を提供する訪問看護ステーションが高い報酬を算定できるようにするものです。小児訪問看護に取り組みために必要な取り組みとして、訪問看護ステーションサイドは「小児訪問看護の研修」「小児訪問看護を行っている訪問看護ステーションでの体験研修」を挙げています。経済的な評価を行うことで、これらの研修受講に積極的に取り組むことが期待されます。

小児訪問看護を実施するために、「研修」「体験研修」が必要と考える訪問看護ステーションが多い

小児訪問看護を実施するために、「研修」「体験研修」が必要と考える訪問看護ステーションが多い

 また「在宅がん医療総合診療料」の算定患者については、医療機関と訪問看護ステーションが共同してターミナルケアを実施していても、すべて医療機関側で一括して報酬を算定しています。これを(2)のように、訪問看護ステーション側でも「ターミナルケアの実施」にカウントできれば、機能強化型を届け出るための高いハードルとして指摘されている「看取り件数」を事実上緩和することができると考えられます。

訪問看護ステーションと医療機関がターミナルケアを共同で行った場合、医療機関が一括して「在宅がん医療総合診療料」を算定するルールとなっている(訪問看護ステーションでは報酬算定はできない)

訪問看護ステーションと医療機関がターミナルケアを共同で行った場合、医療機関が一括して「在宅がん医療総合診療料」を算定するルールとなっている(訪問看護ステーションでは報酬算定はできない)

 

 このほか訪問看護に関連して、次の見直し内容も提案されています。

▽病院・診療所と訪問看護ステーションの2か所から訪問看護を行えるケース(現在は制限なし)は、「末期の悪性腫瘍」や「神経難病」などの利用者に限定する(複数の訪問看護ステーションが訪問看護を行える規定と合わせる)

病院・診療所と訪問看護ステーションが同一の患者に訪問看護を行うことを制限する規定はない(複数の訪問看護ステーションが同一患者に訪問看護を行える場合は、末期の悪性腫瘍などに限定されている)

病院・診療所と訪問看護ステーションが同一の患者に訪問看護を行うことを制限する規定はない(複数の訪問看護ステーションが同一患者に訪問看護を行える場合は、末期の悪性腫瘍などに限定されている)

▽緊急の場合には、同一日に2か所目の訪問看護ステーションが緊急訪問を実施した場合にも報酬を算定できることとする

2か所目の訪問看護ステーションが緊急訪問を行った場合でも、その訪問看護ステーションでは報酬を算定できない

2か所目の訪問看護ステーションが緊急訪問を行った場合でも、その訪問看護ステーションでは報酬を算定できない

▽保険医療材料などの取り扱いの明確化

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