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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

16年度診療報酬改定の議論スタート、在宅専門医療機関に賛否両論-中医協総会

2015.2.18.(水)

 2016年度の診療報酬改定に向けて、中央社会保険医療協議会の議論がスタートしています。18日に開かれた中医協総会では「在宅医療」が議題となりました。次回以降も入院、外来を含めて総括的な検討が続きます。

 前回の14年度改定でも議論になった「在宅医療を専門に行う医療機関を認めるべきか」という論点について、「在宅医療はかかりつけ医の延長が大原則であるべき」と慎重姿勢を取る診療側と、「在宅医療の量を増やし、患者の選択権を確保すべき」と積極姿勢の支払側との間で早くも火花が散っています。規制改革実施計画で定められた「14年度中の結論」に向け、調整が続けられます。

2月18日に開催された、「第291回 中央社会保険医療協議会・総会」

2月18日に開催された、「第291回 中央社会保険医療協議会・総会」

在宅専門医療機関、年度内の結論に向け難しい調整

 地域包括ケアシステムの構築に向けて、14年度改定では▽在宅療養後方支援病院の新設▽機能強化型在宅療養支援診療所・病院の実績要件の厳格化▽不適切事例に対応するための同一建物居住者への「在宅時医学総合管理料(在総管)」や「訪問診療料」の大幅引き下げ-などが行われました。不適切事例の適正化策に対しては「高齢者施設などに訪問診療を行ってくれる医療機関がなくなってしまうのではないか」との危惧がありましたが、厚生労働省の実施した調査では、現時点で大きな支障は生じていないようです(同一建物の訪問診療、報酬減の影響は限定的―中医協調査速報、在宅医療の評価「さらに見直し」)。

2014年度改定後の在宅医療の診療報酬イメージ、総合的な医学的管理の比率が高く、患者の重症度などは評価対象となっていない

2014年度改定後の在宅医療の診療報酬イメージ、総合的な医学的管理の比率が高く、患者の重症度などは評価対象となっていない

 しかし、在宅医療に関しては次のような課題があります。

▽特に都市部で高齢者数が急激に増加し、国民の多くが自宅で最期を迎えることを希望しており、在宅医療のニーズは一層高まる

▽在宅医療を受ける患者の状態(要介護度、疾患名、訪問診療が必要な理由など)は多様だが、診療報酬は重症度などに応じた評価にはなっていない

在宅医療を利用している患者像は多様だが、循環器疾患・認知症・脳血管疾患を罹患している人が比較的多い

在宅医療を利用している患者像は多様だが、循環器疾患・認知症・脳血管疾患を罹患している人が比較的多い

▽在宅医療の効率的な提供が可能な形態(医療機関に隣接する高齢者施設への提供など)も考えられる

在宅医療を行う医療機関は、「同一建物居住者の比率が高い医療機関」と「低い医療機関」に分かれ、診療内容等に大きな差がある

在宅医療を行う医療機関は、「同一建物居住者の比率が高い医療機関」と「低い医療機関」に分かれ、診療内容等に大きな差がある

▽小児への訪問看護のニーズが増加しているが、対応できる訪問看護ステーションは多くない

小児を対象に訪問看護を実施している訪問看護ステーションは半数程度にとどまっている

小児を対象に訪問看護を実施している訪問看護ステーションは半数程度にとどまっている

2014年度改定で新設された機能強化型訪問看護ステーション、都道府県で整備状況に大きな差がある

2014年度改定で新設された機能強化型訪問看護ステーション、都道府県で整備状況に大きな差がある

在宅での看取りを行う医療機関の中で、「1年間に20回以上の看取りを行う」わずかな医療機関で看取り算定回数の半数超を占めている

在宅での看取りを行う医療機関の中で、「1年間に20回以上の看取りを行う」わずかな医療機関で看取り算定回数の半数超を占めている

 また「在宅医療を専門に行う医療機関を認めてよいか」という点については、14年6月に閣議決定された規制改革実施計画でも「14年度中(15年3月まで)に結論を得て、必要な措置を取る」ことが決まっており、早急な検討が求められています。

 こうした課題に今後の改定などで対応していくことになりますが、今回の総会では総括的な意見交換が行われるにとどまりました。

 注目される在宅専門の医療機関について、診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や中川俊男委員(日医副会長)は、「かかりつけ医が通常診療の延長として在宅医療を行うことが基本である。ただし、都市部では在宅医療ニーズが急激に増加するため、補完する形で、眼科や緩和ケアなどの専門医がかかりつけ医と連携して在宅医療を行うことが認められる」と慎重姿勢を崩していません。さらに「訪問看護をチェーン展開している企業があり、質の低下が危惧される。重症度評価なども検討していく必要があるのではないか」とも付言しています。

 一方、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は、「在宅医療の基本はかかりつけ医」という点には賛同したものの、「診療報酬上、さまざまな在宅医療の形態が認められており、これからも柔軟に考えていく必要がある。患者の選択権を保障すべきである」と積極姿勢を見せました。

 こうした意見は、14年度改定をめぐる論議から大きく変化しておらず、「26年度中の結論」に向けて厚労省には難しい調整が求められそうです。

 また、14年度改定で大きな見直しが行われた「同一建物居住者への同日の訪問診療」などについても、「同一建物居住者への訪問時間は短く、密度の高い診療が行われていないようだ。データを集積して、より適正な報酬とすべき」とする白川委員と、「適正な訪問診療を行っていた医療機関も在宅医療から撤退しかねない。安易な厳格化は好ましくない」とする中川委員の間で、大きな意見の隔たりがあります。

同一建物居住者とそれ以外の人では、在宅医療の提供時間(1人当たり)に格差がある

同一建物居住者とそれ以外の人では、在宅医療の提供時間(1人当たり)に格差がある

診療報酬改定セミナー2024