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同一建物の訪問診療、報酬減の影響は限定的―中医協調査速報、在宅医療の評価「さらに見直し」

2014.12.24.(水)

中央社会保険医療協議会の総会が24日開かれ、2014年度の診療報酬改定に伴って実施した在宅医療に関する適正化について「全体として在宅医療提供に支障は出ておらず、不適切な事例は是正されている」という調査結果(速報)を了承しました。

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在宅医療については「一部の高齢者施設が、医療機関と契約して過剰な訪問診療等を行わせるとともに、医療機関からキックバックを受けている」との指摘がありました。これを是正するために、14年度診療報酬改定では▽同一建物に居住する複数の患者に同じ日に訪問を行った場合、▽在宅時医学総合管理料や訪問診療料を大幅に減額▽保険医療機関が経済的誘因により患者紹介を受けることを禁じる規定を療養担当規則に設ける―などの見直しが行われました。

同一建物に居住する複数患者への訪問診療につき、在宅時医学総合管理料を引き下げ

同一建物に居住する複数患者への訪問診療につき、在宅時医学総合管理料を引き下げ

同一建物に居住する複数患者へ同一日に訪問診療を行う場合の点数を引き下げ

同一建物に居住する複数患者へ同一日に訪問診療を行う場合の点数を引き下げ

経済上の誘因による患者紹介を禁止する規定を療養担当規則に追加

経済上の誘因による患者紹介を禁止する規定を療養担当規則に追加

もっとも、こうした見直しに対して「より詳細に状況を調べる必要がある」「必要な在宅医療の提供が困難になっていないか調べるべきだ」といった指摘もあり、実態調査が行われたものです。調査結果の速報を眺めてみましょう。

 

訪問診療の回数は病院・診療所の双方で大幅増

今回の調査に有効回答した医療機関は755施設で、内訳は診療所が593施設、病院が161施設(無回答が1施設)。有効回答率は30.2%となっています。

まず、訪問診療を行っている居宅(患者宅)・施設の数を改定前後で比較すると、病院・診療所はいずれも微増という結果で、患者数も増加しています。

14年度診療報酬改定後に、訪問診療の患者や居宅・施設数は増加している

14年度診療報酬改定後に、訪問診療の患者や居宅・施設数は増加している

また、居宅・施設への訪問回数は大幅に増加しています。この理由として厚生労働省保険局医療課の担当者は、訪問診療の患者数が増加していることのほか、「適正化の影響を避けるために、これまで同じ日に行っていた複数患者への訪問診療を、日程をずらして行っている可能性」を挙げています。

居宅・施設への訪問回数は、14年度診療報酬改定後に増加している

居宅・施設への訪問回数は、14年度診療報酬改定後に増加している

 

同一建物の訪問診療、「10分未満」が6割超

2週間の調査期間のうち、「医師1人が最も多く訪問診療を行った日」の患者数を見ると、同一建物の患者は0人、それ以外では「1-5人」が多くなりましたが、同一の建物で41人以上を診たという医療機関も17施設ありました。

訪問診療の時間に目を移すと、同一建物以外の患者の方が長いことが分かります。同一建物では「5分未満」が16.2%、「5分以上10分未満」が44.7%となっており、6割を超える患者に対し、1回当たり10分未満の訪問診療しか提供されていないことが分かります。

患者1人当たりの訪問時間、同一建物では6割超が10分未満

患者1人当たりの訪問時間、同一建物では6割超が10分未満

さらに、訪問診療の内容を見ると、「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬援助・管理」のみの患者が同一建物では55.2%、それ以外では40.9%に上っています。

こうした点について、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「1日に41人もの患者を診ている医療機関では、同一建物の患者を集めて健康相談しかしていないのではないかと疑いたくなる」と厳しい意見を述べています。

 

患者紹介の契約は1診療所で継続、無回答も

一方、患者の状態については、同一建物患者の方が要介護度は低いものの、認知症の状況は重いことが伺えます。診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、この点を重視し「同一建物への訪問診療は認知症患者への対応がより積極的に行われていると考えることができる。次回の改定ではこうした点も考慮すべきではないか」と提案しました。

同一建物患者では、患者の要介護度は低いが、認知症の程度は高い状況が伺える

同一建物患者では、患者の要介護度は低いが、認知症の程度は高い状況が伺える

また訪問診療を行っている理由を見ると、「身体機能が低下して介助があっても通院が困難」「介助があれば通院可能だが、介助の確保が困難」という患者が多い状況です。ただ、「通院が困難なわけではないが、患者や施設が希望する」といった理由を挙げるケースもわずかですがあります。特に、同一建物では「施設が希望」と答えた患者が3.6%あり、不適切な訪問診療の疑いもありそうです。

さらに、患者紹介の対価として経済上の利益を提供する契約をしている診療所が、14年改定前には8施設(1.3%)でしたが、改定後には1施設(0.2%)となりました。

もっとも、この契約の有無について無回答の施設が増加していることから、白川委員は「意識的に回答していない診療所があると推量してしまう」と述べています。

経済上の誘因により患者紹介を行う契約を結ぶ診療所は、14年度診療報酬改定前は8施設(1.3%)、改定後は1施設(0.2%)

経済上の誘因により患者紹介を行う契約を結ぶ診療所は、14年度診療報酬改定前は8施設(1.3%)、改定後は1施設(0.2%)

 

「必要な在宅医療は確保」と宮嵜医療課長

一方、14年度改定での在宅医療の適正化に対しては、医療現場から「訪問診療を提供できなくなる」、施設側から「訪問診療をしてくれる医療機関・医師がいなくなる」との悲鳴も出ていました。

この問題について厚労省が調査したところ、「医療機関が訪問診療から撤退してしまった」との報告が7施設から寄せられたことが分かりました。都道府県別に見ると、兵庫2件、東京・奈良・愛知・福岡・熊本各1件です。

ただし、これらの事例のすべてで、別の医療機関から訪問診療が提供されているといい、宮嵜課長は「必要な医療が既に確保されている」と報告しました。

中医協では、次回の改定に向けて在宅医療の見直しを引き続き検討していく方針を確認していて、同一建物の患者に対する訪問診療の内容や、通院が困難ではない患者への訪問診療などの取り扱いを検討課題に据える見込みです。

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