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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

【2016年度診療報酬改定総点検1】7対1の施設基準は厳格化の方向、重症患者割合は25%に引き上げられるのか?

2015.12.29.(火)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けた論議が、年明けから中央社会保険医療協議会で佳境を迎えます。これまでにさまざまな見直し案が出されており、「結局、どうなっているのか」とお感じの方も少なくないのではないでしょうか。

 メディ・ウォッチでは、年明け論議に備えるために、これまでの改定論議をおさらいします。今回は、7対1入院基本料に焦点を合わせます。

重症患者割合、支払側は最低25%。病院団体は「25%は厳しい」と主張

 7対1病床については、これまで以上に「急性期医療を提供する病床」に絞り込まれる見込みです。7対1を絞り込む方法として、施設基準に定められた(1)重症患者割合(2)平均在院日数(3)在宅復帰率―の3項目を厳しくすることが考えられます。

 (1)については、現在、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)のA項目2点以上かつB項目3点以上の患者を「重症患者」と規定し、常に「重症患者が入院患者の15%以上でなければならない」と規定されています。

 しかし厚生労働省の調査では、「開胸手術を受けた当日でも、重症患者は半数程度に過ぎない」ことが分かり、現在の看護必要度の項目が「十分に重症患者をピックアップできていない」可能性が浮上しました(関連記事はこちらこちらこちら)。あわせて、高齢化の進展とともに認知症の患者が身体合併症で急性期病棟に入院するケースがますます増えることも予想されます。

 厚労省はこうした点を総合的に考慮し、看護必要度と重症患者の定義を、を次のように見直す考えを示しました(関連記事はこちら)。

▽A項目に「無菌治療室での管理」(2点)と「救急搬送(搬送日から1-2日程度)(2点)を追加する

▽B項目から「起き上がり」「座位保持」を削除し、「危険行動」(2点)と「診療・療養上の指示が通じる」(1点)を追加する

▽新たに「手術などの医学的状況」を評価する「M項目」を設置する。M項目は、「開胸・開頭手術(術当日より5-7日間程度)」「開腹・骨の観血的手術(同3-5日間程度)」「胸腔鏡・腹腔鏡手術(同2-3日間程度)」「その他の全身麻酔手術(同1-3日間程度)」と規定する

▽重症患者の定義は、現在の「A項目2点以上かつB項目3点以上」に加えて、「A項目3点以上」と「M項目1点以上」を合わせる

看護必要度のA、B項目を見直すと同時に、手術などの医学的状況を評価する「M項目」を新設、重症者には「A2点以上かつB3点以上」に加えて、「A3点以上」「M1点以上」の患者もカウント(赤線部分が見直し点)

看護必要度のA、B項目を見直すと同時に、手術などの医学的状況を評価する「M項目」を新設、重症者には「A2点以上かつB3点以上」に加えて、「A3点以上」「M1点以上」の患者もカウント(赤線部分が見直し点)

 こうした看護必要度の見直しなどに伴い重症患者の対象者が広がること(厚労省の試算では32%増加)や、7対1の絞り込む必要があることなどを考慮すると、重症患者割合の基準値(現在は15%)を引き上げる必要があります。

 厚労省は中医協に、重症患者割合の基準値を引き上げた場合の影響について、試算結果を示しています(関連記事はこちら)。それによると、22%にした場合には「0.8-2.8%、7対1の基準を満たす病床数が増加する」、25%では「2.9-4.9%減少する」、28%では「9.1-11.1%減少する」とされています。

重症患者割合の基準値の引き上げと、10対1などから7対1への転換を加味した場合、施設基準を満たせない7対1病院がどれほど出現するかの試算結果

重症患者割合の基準値の引き上げと、10対1などから7対1への転換を加味した場合、施設基準を満たせない7対1病院がどれほど出現するかの試算結果

 支払側は「機能分化を確実に進める必要がある」として、12月9日に中医協総会では「最低25%」を主張(関連記事はこちらこちら)。

 一方、診療側は基準値への言及はしていませんが、慎重な検討を求めています。日本病院団体協議会では、いくつかの病院を対象に影響度の調査を独自に行っていますが、いまのところ「25%をクリアできる病院」は出ていないようです(関連記事はこちらこちら)。

 年明けから中医協総会では、「看護必要度の項目」「重症患者の定義」「重症患者割合の基準値」を巡る具体的な議論が行われますが、激しい攻防が予想されます。

病棟群単位の入院基本料、「一時的な措置」か「恒久的な措置」かが争点に

 重症患者割合は病院全体で満たす必要があるため、基準値を引き上げると7対1を満たせず、10対1への移行などを考えざるを得ない病院が出てきます。しかし、7対1から10対1への全面的移行には、収入面での影響が大きく(稼働率100%とすると、400床では1日当たり103万6000円の減収)、従業者の心理的抵抗も小さくありません。

 そこで厚労省は、7対1から10対1へ移行する際のクッションとして、一時的に「病棟群単位の入院基本料」を認めることを提案しています。重症患者を一部の病棟(群)に寄せて7対1を維持し、残りの病棟(群)を10対1に移行するといったイメージです(関連記事はこちら)。

病棟群単位の入院基本料届け出を認めた場合のメリット

病棟群単位の入院基本料届け出を認めた場合のメリット

 この提案に対し、診療側・支払側ともに明確な反対はしていません。しかし支払側や厚労省が「7対1から10対1へ移行する際の、一時的なクッション措置」と位置付けているのに対し、病院団体は「病棟の機能分化が進められる中で、医療提供体制と診療報酬体系の整合性をとるための恒久的な措置」との考えが強いという大きな違いがあります。特に日本病院会の堺常雄会長は「そもそもの議論をする必要がある」と述べており、「一時的な措置」に止めるのか、「恒久的な措置」とするのか、この点が、年明けからの論議での大きな争点となりそうです(関連記事はこちらこちらこちら)。

平均在院日数、厚労省は1日短縮を提案するが、診療側は強く反対

 (2)の平均在院日数について、厚労省は具体的な見直し案を示していませんが、12月9日の中医協総会に、暗に「17日以下」に短縮しては同かとの考えを示しています。

 厚労省の調査分析によれば、平均在院日数の長い病院(上位10%)には、▽診療実績(1年間の全身麻酔下手術の件数や放射線治療・化学療法の件数)が低い▽重症患者割合が小さい▽1日当たり請求点数が小さい―という特徴があることが分かりました。

 平均在院日数の長い病院(上位10%)には、「18日以上」の病院が該当します。ここから「平均在院日数要件を『17日以下』に厳格化する」可能性が急浮上したことが伺えるのです(関連記事はこちら)。

ここに来て、7対1の平均在院日数要件を「17日以下」に厳格化(現在は18日以下)にする案が急浮上している

ここに来て、7対1の平均在院日数要件を「17日以下」に厳格化(現在は18日以下)にする案が急浮上している

 支払側委員はこの考えに賛同していますが、診療側委員は「平均在院日数の短縮は限界に来ている」と強く反発しており、年明けの議論でどう調整されるのか注目する必要があります。

在宅復帰率、今後の争点は基準値を引き上げるか否か

 在宅復帰率については、「計算方法」を見直してはどうかとの提案が厚労省からなされています。現在、「自宅」「高齢者向け集合住宅」のほかに、他院の「回復期リハ病棟」「地域包括ケア病棟」「在宅復帰機能強化型の療養病棟」なども、在宅の範疇に含まれていますが、前者をより高く評価すべきではないかと厚労省は考えているのです(関連記事はこちらこちらこちら)。

在宅復帰率要件について、計算方法の見直しや基準値(現在75%以上)の引き上げが検討される

在宅復帰率要件について、計算方法の見直しや基準値(現在75%以上)の引き上げが検討される

 支払側はこの考え方に賛同するとともに、在宅復帰率の基準値(現在は75%以上)を引き上げることも求めています(関連記事はこちら)。

 診療側は賛否を明確にしていませんが、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は「在宅強化型でない療養病棟などは最も低い評価のままである」(在宅復帰強化型の療養病棟の価値は一定程度保たれる)として、見直し案を妥当なものと評価しています(関連記事はこちら)。年明けの議論では、基準値をどう設定するのかに争点が絞られることになりそうです。

【連載】16年度診療報酬改定総点検
(1)7対1の施設基準は厳格化の方向、重症患者割合は25%に引き上げられるのか?
(2)地域包括ケア病棟、手術・麻酔の出来高評価について診療側の意見はまとまるのか?
(3)在宅医療の報酬体系を大幅に見直し、課題は是正されるのか?
(4)DPCの中で「医療法上の臨床研究中核病院」は評価されるのか?
(5)療養病棟の医療区分、「きめ細かい状況」をどのように考慮するのか?
(6)主治医機能の評価、紹介状なし大病院患者の特別負担によって外来医療の機能分化

【関連記事】
7対1の重症患者割合、25%へ引き上げ軸に攻防開始、看護必要度にM項目新設―中医協総会
7対1病院、10対1などへの移行見据え「病棟群単位の入院基本料」を認める―中医協総会

7対1の重症者割合25%は厳しすぎる、「病棟群別の入院料」は恒久措置にすべき―日病協・楠岡議長
7対1の重症者割合を25%引き上げなら、看護必要度の内容見直しが必要―日病・堺会長
7対1の在宅復帰率、「在宅強化型の療養」の扱い見直しは妥当―日慢協・武久会長

7対1の重症患者割合、支払側は「機能分化が確実に進む水準」への引き上げを要望―中医協総会

16年度改定に向け、入院の診療報酬見直しのベースが確定―入院医療分科会が最終とりまとめ
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