7対1の重症患者割合、支払側は「機能分化が確実に進む水準」への引き上げを要望―中医協総会
2015.12.25.(金)
2016年度の次期診療報酬改定に向けて、25日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、支払側と診療側がそれぞれ、これまでの検討結果を踏まえた意見を披露しました。
支払側は7対1入院基本料について、▽重症患者割合の基準値を病床の機能分化が確実に進むところまで引き上げる▽平均在院日数要件を見直す▽在宅復帰率について計算式の見直しと基準値を引き上げる―ことなどを求めています。
一方、診療側は「重症度、医療・看護必要度(看護必要度)について、7対1病床削減の手段ではなく、病床機能や患者病態像を加味した観点で、長期的な展望を持って見直す」よう強調しているほか、これまで議論の俎上に上がっていない「初診料・再診料」の引き上げを要望しています。
25日の中医協総会では各側から意見が表明されたに止まり、具体的な議論は年明けに持ち越しとなっています。
支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、次期改定の最大の争点と目される「7対1入院基本料」について、次のような施設基準の見直しをするよう求めました。
▽看護必要度の評価項目を見直した上で、重症患者割合の基準値(現在は15%以上)を「病床の機能分化が確実に進む」ところまで引き上げる
▽平均在院日数要件(現在は18日以内)を一定程度見直す
▽在宅復帰率要件について、自宅・高齢者住宅・グループホームなどへ直接在宅復帰した患者を最も高く評価できる計算式に見直す(現在は他院の回復期リハや地域包括などへの転院も同じ評価)とともに、基準値(現在は75%以上)を引き上げる
12月9日に開かれた中医協総会では、厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長から「重症患者割合の基準値を仮に25%に引き上げた場合には、最低でも7対1のうち9.9%の病床が影響を受ける」との試算結果が示されています(関連記事はこちら)。幸野委員はこれを踏まえ「最低でも25%以上にする必要がある」とコメントしていますが、今回の支払側意見では、そこまで踏み込んだ内容にはなっていません。
一方、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)はこの点について特段の言及をしておらず、診療側意見の中でも「7対1病床削減の手段とすることなく、病床機能や患者病態像を加味した観点から、長期的な展望を持って見直す」と述べるにとどめています。現在、病院団体では看護必要度や重症患者割合基準値を見直した場合の影響について独自の試算を行っており、その結果を待って具体的な見解を明らかにする構えです。
年明けの議論の中で、激しい攻防が繰り広げられることになるでしょう。
7対1入院基本料の見直しに関連して、宮嵜医療課長は「病棟群単位の入院基本料届け出を一時的に認めることが考えられないか」とも提案しています(関連記事はこちら)。
この点について支払側は、「まずは急性期入院医療の見直しの方向性を定め、全体的な影響を見極めた上で検討すべき」「病院単位の入院基本料という原則は維持し、病棟群単位の届け出は、期限を区切った例外的な措置と明確に位置づけるべき」と主張しています。
一方、診療側は「病棟群ごとに最適な入院基本料を算定できるようにする」ことを求めており、ここからは「時限的でなく、恒久的な措置」を求めているものと考えられます。
なお日本病院会の堺常雄会長は、21日の定例記者会見で「重症患者割合の基準値引き上げと、病棟群単位の入院基本料とをバーターで議論することはできない」とコメントしており(関連記事はこちら)、この点についても病院団体の試算結果を待って具体的な見解が明らかにされることになりそうです。
支払側はこのほかに、▽短期滞在手術等基本料3の対象拡大と適正な点数設定(つまり引き下げ)▽主治医機能評価の推進▽患者の状態像に応じた在宅医療の評価▽薬局における分割調剤の実施▽患者のADL向上度合いなどに着目した回復期リハ病棟のリハビリ評価▽湿布薬に関する1回当たり処方の上限設定▽合成ビタミンD以外のビタミン製剤を処方できる疾患名の限定―などを行うよう求めています。
一方、診療側は、▽初・再診料の引き上げ▽入院基本料の施設基準である看護師の月平均夜勤72時間要件の見直し▽入院中の他医療機関受診時の取り扱い見直し▽地域包括ケア病棟入院料の算定要件緩和▽在宅医療における「1患者1医療機関の原則」「同一建物・同一日診療の減算」の見直し▽「主病は1つ」という考え方の見直し▽手術料の適正化な評価―などを要望しています。
これまで中医協総会で議論されていない「初・再診料の点数引き上げ」なども盛り込まれており、年明けの具体的な議論の中でどのような動きがあるのか注目されます。
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