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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

回復期リハビリ病棟、リハ投入量当たりの効果に着目した評価上限を設定―中医協総会

2015.12.2.(水)

 回復期リハビリ病棟において、リハの提供量に対するADL改善の効果が一定の基準を下回る医療機関では、1日6単位を超える疾患別リハは入院料に包括(つまり算定できない)こととしてはどうか―。厚生労働省は、2日に開かれた中央社会保険医療協議会・総会にこういった提案を行いました。

 回復期リハについて、アウトカムに着目した評価を強化する考え方です。診療側委員は「患者の特性に応じてリハの効果には差がある」と述べ、厚労省案に難色を示していますが、「ADLの低い重度者を多く受け入れ、適切にリハを提供している回復期リハを適切に評価する、優れた提案である」との見方もあります。

12月2日に開催された、「第316回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月2日に開催された、「第316回 中央社会保険医療協議会 総会」

「リハの提供量が多い=ADL改善度合いが高い」わけではない

 回復期リハビリ病棟では、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折の患者に対し集中的なリハを提供してADLを改善させ、在宅に復帰することが求められますが、ADLの改善状況には医療機関の間にばらつきがあります。

回復期リハ病棟における入院患者のADL向上の度合い、こちらもばらつきが大きい

回復期リハ病棟における入院患者のADL向上の度合い、こちらもばらつきが大きい

 この点、リハの提供量がADLの改善に影響しているとも考えられますが、厚生労働省の調査・分析によれば、必ずしも「リハを多く提供すれば、よりADLが改善する」という相関関係はないことが分かりました。

 例えば、1日のリハ提供量が平均「6単位超」の回復期リハ(高密度リハ病院)と、平均「3単位超6単位以下」の回復期リハ(中密度リハ病院)について、入院患者のADLの改善状況を見ると、「1日当たりのADL改善度合い」はリハ提供量が多い方が高くなりますが、「1単位当たりのADL改善度合い」は逆にリハ提供量が多い方が低くなっています。

リハ1 単位当たりのADL改善度合いを見ると、高密度にリハを提供指定病院のほうが、小さくなる傾向がある

リハ1 単位当たりのADL改善度合いを見ると、高密度にリハを提供指定病院のほうが、小さくなる傾向がある

 また脳血管疾患等リハに焦点を絞ると、次のような状況が明らかになっています。

▽高密度リハ病院の中にも、ADL改善度合いが、中密度リハ病院を下回る場合がある

高密度に脳血管疾患等リハを提供していても、中密度よりもADL改善の効果が低いケースも少なくない

高密度に脳血管疾患等リハを提供していても、中密度よりもADL改善の効果が低いケースも少なくない

▽高密度リハ病院を、リハ提供当たりのADL改善度合い(効率性)に応じて「リハの効率性が低い病院」と「リハの効率性が高い病院」に分けて入院患者を比較すると、効率性の低い病院では認知症患者の割合が若干高いものの、全体として年齢や入棟時のADLに有意な差はない

高密度に脳血管疾患等リハを提供している病院を、リハの効率性という視点で分類すると、入院患者の特性に大きな違いはない

高密度に脳血管疾患等リハを提供している病院を、リハの効率性という視点で分類すると、入院患者の特性に大きな違いはない

 同様に運動器リハに焦点を絞った場合にも、次のようなことが分かりました。

▽高密度リハ病院の中にも、ADL改善度合いが、中密度リハ病院を下回る場合がある

高密度に運動器リハを提供していても、中密度よりもADL改善の効果が低いケースも少なくない

高密度に運動器リハを提供していても、中密度よりもADL改善の効果が低いケースも少なくない

▽高密度リハ病院を、リハ提供当たりのADL改善度合い(効率性)に応じて「リハの効率性が低い病院」と「リハの効率性が高い病院」に分けて入院患者を比較すると、効率性の低い病院では認知症患者の割合が若干高いものの、全体として年齢や入棟時のADLに有意な差はない

高密度に運動器リハを提供している病院を、リハの効率性という視点で分類すると、入院患者の特性に大きな違いはない

高密度に運動器リハを提供している病院を、リハの効率性という視点で分類すると、入院患者の特性に大きな違いはない

 これらは、前述のとおり「リハの提供量の多さが、必ずしもADLの改善に結びついていないケース」があることを意味しています。

 さらに、一部の回復期リハ病棟では、「入院患者の9割以上に1日平均6単位を超えるリハが提供されている」ことも分かりました。回復期リハ病棟でも、疾患別リハの点数を出来高で算定できるため、こうした病院の一部では「非効率にリハを過剰に提供している」という一種のモラルハザードが発生している可能性もあります。

入院患者のほとんど(9割以上)に1日平均6単位以上の高密度リハを提供している回復期リハ病棟も一部にある

入院患者のほとんど(9割以上)に1日平均6単位以上の高密度リハを提供している回復期リハ病棟も一部にある

 こうした状況を受け、厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は次のような見直しを行うことを提案しました。

●リハ提供量に対するADL改善の効果が一定の実績基準を下回る医療機関では、1日6単位を超える疾患別リハは入院料に包括する

 1日6単位までのリハは現行どおり出来高算定が認められます。また、個別患者について6単位超のリハを包括するのではなく、医療機関単位で包括評価を導入するという提案です。

重度者を受け入れ、適切なリハを提供し効果が出ている病院を評価

 この提案について支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「リハビリの効果を見極め、それを診療報酬で評価する方向は好ましい」と賛意を表明しています。

 一方、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「一部の病院でモラルハザードが生じている可能性はあるが、それを『ADL改善』などの効果で判定するのは無理があるのではないか」と述べ、厚労省案に難色を占めています。

 さらに中川委員は「患者の特性に応じてリハの効果が現れにくいこともある。事実上、リハ提供量の上限を定める仕組みだが、対象患者を限定するなど、慎重な検討が必要である」とも指摘しています。

 この点、確かに「年齢が高い」「認知症がある」などの患者特性によっては、リハの効果が出にくいとも考えられ、一定の患者要件の設定も検討されることになるでしょう。しかし、上記の厚労省調査・分析からも分かるように、「効率的なリハの提供を行えている病院と、そうでない病院とで、患者特性に大きな違いはない」ことも分かっています。また厚労省保険局医療課の担当者は、「そもそも回復期リハ病棟には、『リハによってADL改善が見込まれる患者』が入院する。ADL改善の効果が出にくい人を集めるのは回復期リハ本来の姿とは言えないのではないか」との考えを述べています。

回復期リハ病棟には、例えば「脳血管疾患の発症後、もしくは手術後などの状態」「大腿骨などの骨折の発症後、または手術後の状態」など、ADLの改善が見込まれる患者が入院することになっている

回復期リハ病棟には、例えば「脳血管疾患の発症後、もしくは手術後などの状態」「大腿骨などの骨折の発症後、または手術後の状態」など、ADLの改善が見込まれる患者が入院することになっている

 また、一般にADL改善の効果は、比較的ADLが低い重度者(例えばFIMが40点程度など)に現れやすいため、今回の見直しは「重度者をより多く受け入れ、適切にリハを提供している病院を高く評価する」優れた提案と見ることもできます。

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