湿布薬の処方量に上限設置へ、糖尿病患者の透析予防評価を充実―中医協総会
2015.12.11.(金)
11日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、技術的事項について厚生労働省から数多くの提案が行われました。その中には「湿布薬」の取り扱いに関する見直し案や糖尿病患者の透析への移行予防に関する評価の充実案なども含まれています。
「湿布薬」の取り扱いに関する見直し案は、医薬品使用の適正化を目指すもので(関連記事はこちらとこちら)、具体的には、「一定の上限を設ける」ことや、「レセプトに『処方された湿布薬が何日分に相当するのか』の記載を求める」ことが提案されました。
前者は、一部の医療機関で一度に多量の湿布薬が処方されていることを踏まえたものです。この点、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「一度に70枚を超えるような湿布薬の処方は認めるべきではない。本当に必要な量に制限する必要がある」と指摘。
しかし、診療側の松本委員は「機構や地理によって、一度に処方される量は異なる」として、一律の規制(上限)設定に強く反対しています。また、万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)や松原謙二委員(日本医師会副会長)は、事務負担を考慮し「後者のレセプトへの記載は、一定量を超えた場合に限定するべき」と要望しました。
なお医薬品使用の適正化に関連して「合成ビタミン製剤」の取り扱いも議論になりました。支払側の幸野委員は「合成ビタミン製剤を処方する場合には、疾病名を明確にさせ、不可欠な処方かどうかをチェックすべき」と主張しています。
また透析予防のための指導を評価する「糖尿病透析予防指導管理料」について、▽アウトカムに関する施設基準を設定する▽運動指導を新たに評価する―という見直し案も示されました。
前者は、「患者の腎機能が一定期間改善・維持される」ことや、「一定期間内の透析導入がない」ことなどを指標とする考えを厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長が示しています。
後者は、「腎不全患者に対して運動による介入を行うと、腎機能が改善した」「運動の頻度が高ければ、透析への移行を遅らせることができる」という研究結果をベースにした提案で、加算の新設や同指導管理料の細分化などが行われる見込みです。この点について幸野委員は「保険者と医師会・医療機関が連携した重症化予防の効果が上がっており、『保険者との連携』を要件に加えるべき」と提案しています。
また、透析に関連して「慢性維持透析患者の下肢末梢動脈疾病について、自院のみでできる場合は単独で、自院のみでできない場合は他院と連携し、早期に治療を行う」ことを評価する診療報酬項目が新設されることになりそうです。
このほか宮嵜医療課長は、次のような見直し案も提示しています。
▽検体検査管理加算について、「国際標準化機構に定められた国際規格に基づく技術能力の認定を受けている施設」では点数を引き上げる
▽医療費助成が行われる指定難病の診断に必要な遺伝学的検査(先天性筋無力症候群など)について、学会の指針に基づいて実施される場合には診療報酬で評価する
▽体外診断用医薬品について、保険適用希望書の提出から保険収載されるまでの間、評価療養(保険診療と保険外診療の併用が認められる)の対象とする
▽睡眠時無呼吸症候群に慢性心不全を合併している患者に対するASV療法を診療報酬で評価する(点数を新設)
▽在宅自己注射指導管理料について、「衛生材料などの支給に関する評価(注射回数に基づく)」と「自己注射の指導、疾患の医学管理に関する評価(注射回数によらない)」に区分するなどの見直しを行う
▽胃瘻造設時嚥下機能評価加算などの評価において、「施設における嚥下機能や回復の見込みを評価できる体制」や「嚥下機能の維持・向上に対する取り組み」に関する視点を取り入れる
▽遠隔モニタリングによる心臓ペースメーカー指導管理料を、「対面診療の評価」と「遠隔モニタリングによる指導管理の評価」に区分し、後者の指導管理の評価を受診間隔(最大12か月まで延ばす)に応じたものとする
▽在宅酸素療法やCPAP療法の管理料について、医師の判断に基づいた受診がない月でも、使用する機器分の評価を認める
▽診療情報提供書や訪問看護指示書などについて、電子的に署名を行い、安全性を確保した上で電子的に送受した場合でも診療情報提供料などの算定を可能とする
▽コンタクトレンズ検査料について、「院内交付の割合」による評価の差を設ける
▽食品である経腸栄養用製品のみを使用して栄養管理を行っている場合、医薬品である経腸栄養用製品との給付の均衡を図るため、「入院時食事療養費の引き下げ」などを行う
▽64列以上のCT、3テスラ以上のMRIの評価を引き上げるとともに、施設共同利用率要件を設ける
▽PETの施設共同利用率要件(現在、20%未満の場合には点数を8割に減算している)を見直し(利用率要件を引き上げ、共同利用を促進する)
これらにも細かい注文がいくつかついています。中でも万代委員は、CT・MRIの評価引き上げについて「一律に高機能機器の評価を引き上げるのではなく、3テスラ以上MRIを使用しても、A疾患では評価を引き上げるが、B疾患では現行を維持する、という視点での見直しを行うべき」との提案を行いました。
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