入院・外来を通じた1エピソード単位での包括評価などを検討せよ―健保連がレセプト分析結果から提言
2015.9.28.(月)
2016年度の次期診療報酬改定に向けて、「入院・外来を通じた1エピソード単位での包括評価」「短期滞在手術等基本料3の点数引き下げ」「ビタミン剤の保険適用範囲の限定」「第一世代湿布薬の保険適用からの除外」などを検討すべき―。このような提言を、健康保険組合連合会(健保連)がレセプトデータの分析結果からまとめました。
健保連は、全国の健康保険組合(主に大企業に勤めるサラリーマンとその家族が加入)で構成される組織です。今般、2010-14年度のレセプトデータ(およそ3億4648万件)を分析し、次期診療報酬改定に向けて次の5分野に関する提言を行いました。
(1)入院前検査・画像診断と入院医療の包括評価
(2)短期滞在手術等基本料3
(3)皮膚科軟膏処置
(4)ビタミン剤処方
(5)湿布薬処方
(1)では、DPC病院の入院症例を対象に入院前後での検査・画像診断の状況などを分析しました。その結果、▽未破裂脳動脈瘤▽網膜剥離▽突発性難聴▽肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(15歳以上)▽気胸▽虫垂炎▽関節リウマチ▽早産、切迫早産▽細菌性腸炎▽顔面損傷(口腔、咽頭損傷を含む)▽前腕の骨折―の11診断群分類では、「入院前30日から入院後3日目の間の実施された検査・画像診断」のばらつきが小さいことが分かりました。
こうした結果を踏まえ、次の2点について提言を行っています。
▽米国の事例を参考にして、「入院・外来を通じた1エピソード単位の包括評価」に向けた検討を行うべき
▽上記11の診断群部類について、「入院前と入院の包括化」の可能性を検討すべき
(2)の短期滞在手術等基本料3(短手3)は、前回の14年度改定で入院5日目までの診療報酬を全包括する点数項目として見直しが行われました。
健保連の分析によれば、▽短手3の対象となる23行為について、外来実施割合は14年度改定前後で有意な変化はない▽下肢静脈瘤手術や水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)など10行為で、改定後に平均医療費が高くなった▽短手3と出来高を比較すると、水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)など14行為で平均医療費が高くなった―ことなどが分かりました。
健保連は、この結果をもとに次の提言を行っています。
▽医療費が全般的に増えていることから、短手3(特に水晶体再建術)の診療報酬を適切なレベルに設定する(引き下げる)べきである
▽入院6日目以降は出来高算定が可能なためDRGよりも在院日数短縮効果が弱いことから、「在院日数短縮」や「病床利用の効率化」に向けた検討を行うべき
▽外来での実施率が高い「内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術」「水晶体再建術」「小児食物アレルギー負荷検査」などは、極力外来での実施を促すべき(入院する場合には、その理由の記載を求めるべき)
(3)の皮膚科軟膏処置については、▽一部の施設でよく実施される傾向にあり、施設側の判断で行われる可能性が高い▽軟膏処置があるレセプトの金額上位5%では「再診のみ」の割合がほかよりも高い▽処置で使用される薬剤は保湿剤やステロイド外用薬が主である―ことが分かり、次のような提言を行っています。
▽外来の再診時における皮膚科軟膏処置で、処方した軟膏と同一の一般名を持つ軟膏を用いた場合には、「同一医療機関にて治療開始時点から1回を限度」として算定を認めるよう見直すべき
(4)のビタミン剤については、最近の診療報酬改定で保険適用範囲が縮小されてきています(12年度改定から、単なる栄養補給目的の場合には算定不可となった)。この効果を健保連が分析したところ、▽改定後にも適応疾病のないビタミン剤処方が引き続き行われており、ビタミンAでは56.1%に上る▽「食事でのビタミン接種が困難と見られる傷病名」を持たない処方レセプトは、すべてのビタミン剤で9割を超えており、減少していない―状況が明らかになりました。
このため健保連は、ビタミン剤処方の基準に対する解釈の幅が広い点を指摘し、「嚥下や咀嚼の障害、精神衰弱など、必要なビタミンを食事で摂取することが困難な場合」に限定すべきと提言しています。
(5)の湿布薬について、健保連はこれまでにも保険適用範囲の縮小を訴えています(関連記事はこちら)。
今般、レセプト分析の結果、「湿布薬剤費の高低は施設に起因する傾向にあり、地域格差も大きい」ことが分かり、改めて次の2点の見直しを行うよう求めています。
▽第一世代湿布薬(カンフル、サリチル酸メチルなどの鎮痛作用を持つ成分に、温熱・冷却効果としてカプサイシンやメントールを加えたもの)を保険適用範囲から除外することを検討すべき
▽湿布薬について処方枚数などの上限を設定(湿布薬処方の標準化)することを検討すべき
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