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看護必要度の見直しを暗に提案、地域包括の手術・麻酔外出しは両論併記―入院医療分科会が中間とりまとめ

2015.8.26.(水)

 重症度、医療・看護必要度のA項目に「手術直後の患者」や「救急搬送後の患者」さらに「無菌治療室での管理」を加えるなどの見直しを行ってはどうか―。明示こそしないまでも、暗にこのような提案内容を盛り込んだ中間とりまとめが、26日に開かれた診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」で概ね了承されました。

8月26日に開催された、「平成27年度 第8回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

8月26日に開催された、「平成27年度 第8回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

 武藤正樹分科会長(国際医療福祉大学大学院教授)が文言修正などを行った上で、近く中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会に報告します。また、軽症の手術が多いと指摘されることから、地域包括ケア病棟の入院料から手術・麻酔を外出しするか否かの論点については、両論併記にとどまりました。

 中医協では、この中間とりまとめ(2015年度調査結果を踏まえた分析なども今後報告される)などをベースに施設基準や算定ルールなどの具体的な見直し論議を行います。

入院医療分科会は「技術的課題に関する検討」に専念

 前回の14年度診療報酬改定においては、分科会が入院医療改革の道筋を固めるなど、事実上「改定の中心的役割」を果たしました。しかし、中医協委員からは「分科会で改定の方向までを固めてしまうのはいかがか」との指摘があり、16年度改定に向けては「調査結果の分析および技術的課題に関する検討」に専念することになっています。

 今回の中間取りまとめでは、次の項目に関する検討結果が整理されています。

(1)急性期入院医療(7対1病床の動向、特定除外制度見直しの影響、重症度、医療・看護必要度)

(2)短期滞在手術等基本料

(3)総合入院体制加算

(4)有床診療所入院基本料

(5)地域包括ケア病棟入院料

(6)医療資源の少ない地域に配慮した評価

(7)慢性期入院医療(在宅復帰機能強化加算、療養病棟入院基本料2、医療区分の評価項目、脳卒中患者に関する適切な評価)

(8)その他(退院支援に係る取り組み、入院中の他医療機関の受診)

重症患者割合の基準値に関する検討は中医協で

 このうち、最も注目されている「重症度、医療・看護必要度」について調査を行ったところ、▽手術直後の患者などが処置やADLの状況などで、基準を満たさないことも多い▽早期リハビリなどが推奨されているが、医師の指示で動作を制限するとB項目の点数が得られる▽認知症患者が増加する中で、急性期病棟での認知症患者受け入れが課題となっている―などの課題が浮上しました。

開胸手術直後でも重症基準を満たす患者は50%程度で、術後3日目には25%を下回る

開胸手術直後でも重症基準を満たす患者は50%程度で、術後3日目には25%を下回る

救急搬送患者のうち、重症基準を満たす患者は最大でも30%程度

救急搬送患者のうち、重症基準を満たす患者は最大でも30%程度

 このため中間とりまとめでは、暗に次のように「重症度、医療・看護必要度」を見直すことを提案しています(関連記事はこちら)。もっとも分科会は改定内容を決定する権限はないため、具体的な制度設計や基準値の議論は中医協に委ねられます。

(a)A項目で、「手術直後の患者」「救急搬送後の患者」「無菌治療室での管理」を評価する

(b)B項目で、「起き上がり」「座位保持」を削除し、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」を追加する

(c)現在、A項目2点以上かつB項目3点以上に該当しなければ重症患者にカウントされないが、これに加えて「A項目3点以上」(B項目は不問)の患者も重症患者とする

(d)B項目を特定集中治療室、ハイケアユニット、一般病棟で統一し、基準点を一般病棟3点以上、特定集中治療室3点以上、ハイケアユニット4点以上とする

(e)看護職員以外の職種が項目の評価を行った場合なども、重症度、医療・看護必要度の評価に含める

 (a)は、明らかな重症者をA項目で適切に評価できるようにすることが狙いですが、藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科・医学部医療管理学分野教授)は「手術直後、救急搬送後の患者の中にも軽症者はいるので、一律に評価すべきではない。開胸・開腹手術後などの限定を加えるべきではないか」と主張しており(関連記事はこちら)、中医協での議論が注目されます。

 また(c)の見直しを行う場合、7対1の施設基準を満たしやすくなります。この点、「真に急性期医療を行っているところが7対1入院基本料を算定すべき」との考え方に基づけば、現行の「重症患者割合15%以上」の基準値は引き上げられることになるでしょう。しかし分科会では基準値に関する試算結果は示されておらず、今後、中医協でA項目・B項目の見直しを踏まえた試算が行われます。日病協では「20%も想定される」と考えており(関連記事はこちら)、どう設定されるのかが最大の注目点と言えそうです。

 なお、7対1病院などで提出が必須化されているDPCデータの中に重症度、医療・看護必要度を含めることや、10対1病院でもデータ提出を必須化することなどを求める意見についても明記されています。

地域包括ケア病棟、手術・麻酔の外出しは両論併記

 (5)の地域包括ケア病棟入院料については、▽入院患者は骨折や外傷など特定の状態に集中している▽手術はほとんど実施されていない▽行われている手術も創傷処置や皮膚切開など軽微なものが多い―ことなどが分かっています。

地域包括ケア病棟の手術件数は、旧亜急性期1・2と同程度

地域包括ケア病棟の手術件数は、旧亜急性期1・2と同程度

入院10万日・人当たりの全身麻酔算定回数を見ると、地域包括ケア病棟(8.5回)は、亜急性期1(130.2回)や療養病棟(11.1回)よりも少ない

入院10万日・人当たりの全身麻酔算定回数を見ると、地域包括ケア病棟(8.5回)は、亜急性期1(130.2回)や療養病棟(11.1回)よりも少ない

 このため分科会では「自宅からの受け入れ患者などに幅広い医療を提供する」観点から手術料や麻酔料を包括外(出来高算定)とするとの選択肢がクローズアップされました。しかし、「手術の実施は極めて少ないので、現状の包括のままでよい」との意見も出されており、中間とりまとめでは両論併記となっています。

 この点については病院団体の間で若干の温度差がある(関連記事はこちら)ようで、中医協でどのような判断が下されるのか注目したいところです。

入院中に発生した褥瘡、患者の状態を考慮せよとの指摘も

 (7)の慢性期医療については、次のような見直し案が暗に提案されています(関連記事はこちら)。

▽在宅復帰機能強化加算の施設基準である病床回転率に「急性期病棟から受け入れた患者の在宅復帰」を加味し、対象患者に「入院期間1か月未満」も加える

▽療養病棟入院基本料2に、「医療区分2または3」の患者割合要件を設定する

▽現行では自動的に医療区分2または3に該当する「うつ状態」「頻回の血糖検査」「酸素療法」について、さらにきめ細かな評価を行う

▽入院期間中に新たに褥瘡が生じた場合には、医療区分2としない

▽脳卒中患者については、障害者施設や特殊疾患病棟に入院していても、療養病棟と同じ報酬とする(ただし患者の状態には留意)

 このうち褥瘡については、池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長)や安藤文英委員(医療法人西福岡病院理事長)から「急性期病棟からの転棟患者の中には、非常に栄養状態が悪く、十分な管理をしても褥瘡が生じてしまう患者もいる。その点は考慮すべきではないか」と指摘しています。

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