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療養病棟、病床回転率を工夫し「他院からの転院患者の在宅復帰」を高く評価―入院医療分科会

2015.7.30.(木)

 療養病棟の「在宅復帰機能強化加算」について、「他院の急性期病棟からの転院患者」の在宅復帰を進めるために、病床回転率などの指標を用いて評価する―。2016年度の次期診療報酬改定に向けて、こうした見直しがなされる可能性が強くなってきました。

7月29日に開催された、「平成27年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

7月29日に開催された、「平成27年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

「他院からの転院患者」の在宅復帰を促進したい

 前回の14年度改定で新設された「在宅復帰機能強化加算」は、療養病棟においても退院支援を強化し、可能な限り在宅での生活を継続できるようにすることが狙いです。この加算を算定するためには、次の要件を満たさなければなりません。

(1)療養病棟入院基本料1(20対1以上、医療区分2・3の患者割合が8割以上)を届け出ていること

(2)在宅(自宅や居住系施設など)に退院した患者(1か月以上入院していた患者に限る)が50%以上いること

(3)退院患者の在宅生活が1か月(医療区分3は14日以上)継続することを確認していること

(4)病床回転率が10%以上であること

在宅復帰機能強化加算の算定要件

在宅復帰機能強化加算の算定要件

 厚生労働省の調べでは、療養病棟入院基本料1を届け出ている病院の17%がこの加算を届け出ていますが、在宅復帰している患者の多くは「復帰しやすい自宅からの入院患者」であることも分かりました。

 厚労省保険局医療課の担当者は「在宅復帰が難しい『他院の急性期病棟からの転院患者』について、在宅復帰を促してほしい」と考えており、入院医療分科会の委員もこの考えに賛同しています。

 そこで厚労省は29日の入院医療分科会に「病床回転率など、何らかの指標で急性期病棟から患者を受け入れ在宅に復帰させることを加味して評価」してはどうかとの考えを示しました。

 例えば、病床回転率の計算を「急性期病棟からの受け入れ患者に限定する」ことなどが考えられ、現在の計算式である「30.4/平均在院日数」を、「30.4/他院の急性期病棟から受け入れた患者の平均在院日数」とするなどです。もっともこの場合には、前述の(4)にある「10%」要件は引き下げる必要があるでしょう。

 この点について池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長)は「他院の急性期病棟からの患者受け入れを促す方向は理解できる」とした上で、「施設基準化すると加算を算定できる病院が増えず、かえって在宅復帰が進まない可能性もある。他院の急性期病棟からの患者を受け入れ、在宅復帰を支援する病院に対して加算で評価してほしい」と要望しています。

 具体的な制度設計は、今後、中央社会保険医療協議会で行われることになります。

 また前述の(2)の在宅復帰率では、計算対象を「入院期間1か月以上の患者」に限定しています。しかし、厚労省の調査結果では「入院期間を1か月以上の延ばしてる病院がある」可能性が示唆されており、対応方法が検討されてきました。

在宅復帰率にカウントされない30日未満の退院は、在宅復帰機能強化加算を届け出ている病院では比較的少ない

在宅復帰率にカウントされない30日未満の退院は、在宅復帰機能強化加算を届け出ている病院では比較的少ない

 この点について池端委員は「在宅復帰率の計算は、急性期から慢性期まで一貫すべき」と述べ、この限定廃止方針に賛同しています。しかし、石川広巳委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)らは「退院が見えている患者をごく短期間入院させる」といったモラルハザードが生じる可能性を指摘しています。

 ここで前述の「病床回転率」の計算対象を「他院の急性期病棟からの受け入れ患者」に限定することは、石川委員らの懸念の払しょくにもつながり(退院の見える自宅からの入院患者を多く受け入れることは病院にとって不利になるため)、制度設計面で優れた点を持っていると言えるでしょう。

療養病棟基本料2にも「医療区分2・3」患者割合を設定

 このほか療養病棟の診療報酬に関しては、次のように見直してはどうかとの方向性が示されています。

▽療養病棟入院基本料2(看護配置25対1以上)について、医療区分の高い重症患者の受け入れを促すため、「医療区分2・3の患者割合」について何らかの要件を設ける

▽「うつ状態(医療区分2)」「頻回の血糖検査(医療区分2)」「酸素療法(医療区分3)」の患者について、「密度の高い治療を要するかどうか」などに基づいてさらにきめ細かな評価を行う

▽入院期間中に新たに生じた「褥瘡」は、医療区分2とは評価しない

 褥瘡に関する提案について石川委員や神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は異論こそ唱えなかったものの、「厚労省が示したデータ(入棟60日まで入棟期間が長くなると、入院患者の占める褥瘡の割合が増加している)は、入院が長くなると褥瘡が生じていることを示すものではない。褥瘡のない軽症の患者が早期に退院するので、入院期間が長くなれば褥瘡のある患者の割合が増加しているだけにすぎないのではないか」と牽制しています。

入院期間が長くなると、褥瘡のある患者の割合が高くなる

入院期間が長くなると、褥瘡のある患者の割合が高くなる

障害者施設などの脳卒中患者、療養病棟と同様の評価へ

 16年度改定では、障害者施設や特殊疾患病棟に入院する「脳卒中」患者について、評価の見直しが行われる可能性もあります。

 08年度改定では、病態が比較的安定していると考えられた「脳卒中の後遺症の患者」などを障害者施設・特殊疾患病棟の対象疾患から除外しました。しかし病院によっては、脳卒中の後遺症患者を「重度の意識障害者」として入院させており、厚労省の調査では障害者施設では入院患者の10.8%、特殊疾患病棟では17.8%が脳卒中患者となっています。

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、脳卒中患者が一定程度入院していることが分かる

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、脳卒中患者が一定程度入院していることが分かる

 さらに、脳卒中患者のうち「医師による指示の見直し」や「看護師による観察および管理」の頻度が低く、急性増悪もない「状態が安定していると考えられる患者」の割合は、障害者施設・特殊疾患病棟と療養病棟に大きな違いのないことも分かりました。

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「医師による指示の見直しがほとんど必要ない」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「医師による指示の見直しがほとんど必要ない」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「看護師の観察・管理は定時のみで対応できる」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「看護師の観察・管理は定時のみで対応できる」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している

 その一方で両者には報酬上の格差があるため、今後、障害者施設・特殊疾患病棟でも脳卒中患者については療養病棟と同様の「包括評価」とすることが検討される見込みです。

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