状態安定している脳卒中患者、障害者施設などでも包括評価へ―入院医療分科会
2015.7.6.(月)
特殊疾患病棟や障害者施設に入院する脳卒中患者について、療養病棟の脳卒中患者と同じ病態である場合には、包括範囲や評価方法をそろえてはどうか―。こういった検討が、中央社会保険医療協議会の下部組織である、診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」で進んでいます。
特殊疾患病棟や障害者施設では、「入院患者の状態が比較的不安定で、医療の必要性が高い」として、原則として一般病棟に設置され、療養病棟よりも出来高評価の範囲が広い診療報酬体系が設定されています。このため、病態が比較的安定していると考えられた「脳卒中の後遺症の患者」などは2008年度の診療報酬改定で対象疾患から除外されました。
今般、慢性期病棟に入院する患者の疾病(主病名)を厚生労働省が調べたところ、脳卒中(脳血管疾患)の患者が障害者施設や特殊疾患病棟1(特殊疾患病棟2は主に小児が対象)にも一定程度入院していることが分かりました。
また脳卒中患者のうち、医師による指示の見直しがほとんど必要ない患者の割合は、障害者施設や特殊疾患病棟1と療養病棟でそれほど大きな差がないことも分かりました。
同様に、脳卒中患者のうち、看護師が定時の観察のみで対応できる(している)患者の割合にも、障害者施設や特殊疾患病棟1と療養病棟に大差はありません。
一方、過去1か月に急性増悪があった脳卒中患者の割合は、障害者病棟と療養病棟では同程度ですが、特殊疾患病棟1ではやや高めです。
このように見てくると、「障害者施設や特殊疾患病棟1にも、療養病棟と同様に、状態の安定した脳卒中患者が一定程度入院している」可能性がありそうです。しかし、各病棟の1日当たり入院請求点数を見ると、障害者病棟や特殊疾患病棟1では療養病棟よりも高い傾向にあります。
こうした状況ついて本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、「同じような状態の患者に対して支払われる報酬が異なるのは不適切であり、見直す必要がある」とコメントしました。
一方、診療側の委員は、見直しには慎重であるべきとの姿勢です。神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、「障害者病棟や特殊疾患病棟1には確かに状態の安定している患者もいるが、厚労省の調査をよく見れば、状態が不安定で医療の必要性が高い脳卒中患者が、療養病棟よりも多く入院していることが分かる。脳卒中患者をひとくくりにせず、頻回な指示の見直しが必要な患者や24時間の観察が必要な患者などが入院している障害者施設などでは高い報酬が設定されるのは当然である」と主張しています。
厚労省の調査結果などからは「状態が安定している脳卒中患者について、障害者病棟や特殊疾患病棟1でも、療養病棟と同様の包括評価とする」との方向性がうかがえそうですが、どのような報酬設計にするのか、今後の議論に要注目です。
なお、障害者病棟や特殊疾患病棟をめぐっては、日本慢性期医療協会の武久洋三会長が「療養病棟からも届け出を認めるべきである」と強く求めています。
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