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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

7対1の重症者割合を25%引き上げなら、看護必要度の内容見直しが必要―日病・堺会長

2015.12.22.(火)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、7対1入院基本料の施設基準である「重症患者割合」を25%に引き上げるのであれば、重症度、医療・看護必要度の項目・内容を議論していく必要がある―。日本病院会の堺常雄会長は、21日の定例記者会見でこのような見解を明らかにしました。

 また病棟群単位の入院基本料については「重症患者割合25%とのバーター」ではなく、そもそもの議論をしてく必要があると強調しています。

12月21日の定例記者会見で、7対1入院基本料の見直しなどについてコメントする日本病院会の堺常雄会長

12月21日の定例記者会見で、7対1入院基本料の見直しなどについてコメントする日本病院会の堺常雄会長

重症患者割合25%、医療現場の厳しさを支払側にも理解してほしい

 2016年度の次期改定に向けて、「現在の『一般病棟用の重症度、医療・看護必要』(看護必要度)では、重症な患者を十分に評価しきれていない可能性がある」として、厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長は次のような見直しを行ってはどうかと、中央社会保険医療協議会の総会に提案しています(関連記事はこちら)。

▽A項目に「無菌治療室での管理」(2点)と「救急搬送(搬送日から1-2日程度)(2点)を追加する

▽B項目から「起き上がり」「座位保持」を削除し、「危険行動」(2点)と「診療・療養上の指示が通じる」(1点)を追加する

▽新たに「手術などの医学的状況」を評価する「M項目」を設置する

▽重症患者の定義を、現在の「A項目2点以上かつB項目3点以上」に加えて、「A項目3点以上」と「M項目1点以上」を合わせる

看護必要度のA、B項目を見直すと同時に、手術などの医学的状況を評価する「M項目」を新設、重症者には「A2点以上かつB3点以上」に加えて、「A3点以上」「M1点以上」の患者もカウント(赤線部分が見直し点)

看護必要度のA、B項目を見直すと同時に、手術などの医学的状況を評価する「M項目」を新設、重症者には「A2点以上かつB3点以上」に加えて、「A3点以上」「M1点以上」の患者もカウント(赤線部分が見直し点)

 この見直しを行うと、重症患者の対象が広がるため(厚労省の分析では32%増加)、宮嵜医療課長は、7対1入院基本料の施設基準にある「重症患者割合15%以上」も引き上げてはどうかとの考えも示しました。明示こそされていませんが、「25%」を軸とした検討が進むと考えられています。

病院が「重症患者を一部の病棟に集約する」などの行動変容を起こした場合、25%に重症患者割合を引き上げると、9.9%の病院が7対1の施設基準を満たせなくなる

病院が「重症患者を一部の病棟に集約する」などの行動変容を起こした場合、25%に重症患者割合を引き上げると、9.9%の病院が7対1の施設基準を満たせなくなる

重症患者割合の基準値の引き上げと、10対1などから7対1への転換を加味した場合、施設基準を満たせない7対1病院がどれほど出現するかの試算結果

重症患者割合の基準値の引き上げと、10対1などから7対1への転換を加味した場合、施設基準を満たせない7対1病院がどれほど出現するかの試算結果

 この点について堺会長は、「厚労省の試算結果から、中医協の支払側委員は25%でも緩い(病院の動きによっては9.9%の病床が7対1からの転換が必要となる)と捉えたようだが、医療現場は厳しいものと受け止めている」と指摘。

 具体的には、「M項目1点の患者は、すでにA項目2点・3点でカウントされる」「M項目では全身麻酔手術などが挙がっているが、詳細が見えない」「外科に特化した見直し内容であり、内科の評価が不十分である」といった問題点を挙げ、「厚労省が25%を譲らないのであれば、看護必要度の中身(M項目やA項目)を議論する必要がある」との考えを強調しました。

 もっとも、まず「日本病院団体協議会での看護必要度見直しに関する調査結果などを中医協に示し、支払側の医療現場の実態を理解してもらう」ことから始め、その後、重症患者割合や看護必要度の内容に関する議論という手準を踏む考えも示しています。

医療提供体制と診療報酬との整合性を議論する必要がある

 7対1入院基本料の施設基準が厳しくなった場合、現在では、施設基準を満たせない病院は10対1への移行などを検討することになります。

 この点、宮嵜医療課長は、いきなり10対1への移行を求めることは難しいと考え、一時的に「7対1入院基本料の病棟群と、他の入院基本料の病棟群との併存」を認めることも提案しています(病棟群単位の入院基本料)(関連記事はこちら)。

病棟群単位の入院基本料届け出を認めた場合のメリット

病棟群単位の入院基本料届け出を認めた場合のメリット

 これについて堺会長は、「病棟群単位の入院基本料は、もともと日病が提唱したものである。病床機能報告制度を突き詰めると、1つの病院ですべての病棟が急性期ということはありえず、必ずケアミックスになる。そこで、医療提供体制と診療報酬体系を揃えるために病棟群別の入院基本料を提唱した」ことを説明(関連記事はこちら)。

 その上で、厚労省提案については「『一時的』とされており、『近いうちに梯子を外します』というメッセージが見える。残念な内容である」と批判しました。

 なお、この問題について18日に記者会見を行った日本病院団体協議会の楠岡英雄会長は「病棟群別の入院基本料を恒久的な措置とするのであれば、重症患者割合25%以上についても前向きに検討することができるのではないか」との個人的見解を示しています(関連記事はこちら)。

 しかし堺会長は、「病棟群別の入院基本料について、根本的な、そもそもの議論をする必要がある(診療報酬体系と医療提供体制との整合性など)。『25%とのバーター』で議論するテーマではない」とコメントするにとどめています。

 

 なお、堺会長は消費増税にも触れ、「病院団体としては消費税を課税した上で、仕入れ税額控除を受けられるように要望していく。その際は、5%から8%への消費増税時に行われた診療報酬のプラス改定分について、引きはがしは飲まざるを得ない」との考えも明らかにしています。

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