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7対1の重症患者割合、25%へ引き上げ軸に攻防開始、看護必要度にM項目新設―中医協総会

2015.12.9.(水)

 7対1入院基本料の施設基準の1つである「重症患者割合15%以上」の基準値をどう引き上げるかについて、25%を軸とした攻防が中央社会保険医療協議会の総会で続けられ見込みです。

 9日の中医協総会に、厚生労働省が「重症度、医療・看護必要度の見直し案」と「見直しに伴う重症患者割合の試算結果」を示しましたところ、「重症患者割合の基準値を引き上げ、7対1の削減を図るべき」とする支払側と、「病床稼働率の低下などで既に7対1は実質的に削減されている」と反論する診療側との間で攻防が繰り広げられました。

 このほか、「平均在院日数要件の見直し」や「在宅復帰率の見直し」も行われる可能性も急浮上しています。

12月9日に開催された、「第318回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月9日に開催された、「第318回 中央社会保険医療協議会 総会」

看護必要度にM項目新設、A、B項目も一部見直し

 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、中医協の下部組織である「入院医療等の調査評価分科会」では、現在の「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)」が、必ずしも十分に重症患者をピックアップできるものになっていない可能性があるとし、見直してはどうかと暗に提案していました(関連記事はこちら)。

 厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、この提案をベースに次のような見直しを行うことを9日の中医協総会に提案しました。

▽A項目に「無菌治療室での管理」(2点)と「救急搬送(搬送日から1-2日程度)(2点)を追加する

▽B項目から「起き上がり」「座位保持」を削除し、「危険行動」(2点)と「診療・療養上の指示が通じる」(1点)を追加する

▽新たに「手術などの医学的状況」を評価する「M項目」を設置する

 M項目は、▽開胸・開頭手術(術当日より5-7日間程度)▽開腹・骨の観血的手術(同3-5日間程度)▽胸腔鏡・腹腔鏡手術(同2-3日間程度)▽その他の全身麻酔手術(同1-3日間程度)―の4項目で判断される見込みです。

 宮嵜課長は、重症患者の定義を、現在の「A項目2点以上かつB項目3点以上」に加えて、「A項目3点以上」と「M項目1点以上」を合わせることも提案しています。

看護必要度のA、B項目を見直すと同時に、手術などの医学的状況を評価する「M項目」を新設、重症者には「A2点以上かつB3点以上」に加えて、「A3点以上」「M1点以上」の患者もカウント(赤線部分が見直し点)

看護必要度のA、B項目を見直すと同時に、手術などの医学的状況を評価する「M項目」を新設、重症者には「A2点以上かつB3点以上」に加えて、「A3点以上」「M1点以上」の患者もカウント(赤線部分が見直し点)

重症患者割合を25%に引き上げると、7対1病床は約5%減少

 この看護必要度、重症患者の定義見直しによって、重症とカウントされる患者数は増加します。厚労省の分析によれば「7対1病棟では32%増加する」ことが分かりました。

看護必要度の項目見直しによって、重症患者にカウントされる人数は7対1全体で32%増加する見込み

看護必要度の項目見直しによって、重症患者にカウントされる人数は7対1全体で32%増加する見込み

 ところで、2016年度の次期改定では「医療機能の分化・強化、連携」を重点課題に掲げており、ここから「7対1にふさわしい機能を持つ病床の精査」が導かれます。これは、財務省などが求めている「7対1病床数の適正化」にもつながります。

 そこで厚労省は、看護必要度、重症患者の定義を見直した上で、現在「7対1では常に15%以上でなければならない」とされている重症患者の基準値(以下、重症患者割合)を引き上げていくと、どの程度の病院・病床が7対1の施設基準を満たさなくなるのかを試算しました。

 それによると、病院が行動変容せずにいた場合、重症患者割合を20%にすると9.3%、25%にすると43.0%、30%にすると75.6%の病院で7対1の施設基準を満たせないことがわかりました。同様に、病床数ベースで見てみると、重症患者割合20%では8.1%が、25%では45.4%が、30%では79.2%が基準を満たせなくなります。

病院が行動変容を起こさないと仮定して、重症患者割合の基準値を引き上げた場合の、7対1の施設基準を満たせなくなる病院の割合

病院が行動変容を起こさないと仮定して、重症患者割合の基準値を引き上げた場合の、7対1の施設基準を満たせなくなる病院の割合

 しかし、看護必要度や重症患者割合が見直された場合、病院側は「重症患者を一部の病棟に集約する」などの行動変容を行うことが予想され、7対1の施設基準を満たせない病床の割合は低下すると考えられます。

 厚労省は、この視点に立った分析も行っており、重症患者割合を25%に設定すると9.9%の病床が7対1の施設基準に合致しないと推測できます。ただし、厚労省保険局医療課の担当者は「かなり固く見積もった数値で、実際はもう少し多くの病床が影響を受ける(7対1の基準を満たせなくなる)」と見込んでいます。

病院が「重症患者を一部の病棟に集約する」などの行動変容を起こした場合、25%に重症患者割合を引き上げると、9.9%の病院が7対1の施設基準を満たせなくなる

病院が「重症患者を一部の病棟に集約する」などの行動変容を起こした場合、25%に重症患者割合を引き上げると、9.9%の病院が7対1の施設基準を満たせなくなる

 一方で、10対1などから7対1に転換する病床もあります。2014年度の前回診療報酬改定後には特定機能病院を含めた7対1病床のおよそ6.5%(約2万8000床)が、このケースです。

 したがって、7対1の病床数がどう変動するかは、前述の「看護必要度や重症患者割合の見直し」に加えて、「他の病床化7対1への転換」も併せて考える必要がありそうです。厚労省は後者の転換を「5-7%」に設定し、重症患者割合を引き上げた際の7対1病床数の増減割合を試算しました。それによると、23%に引き上げると現状維持、25%に引き上げると2.9-4.9%の減少、28%に引き上げると9.1-11.1%の減少となります。

重症患者割合の基準値の引き上げと、10対1などから7対1への転換を加味した場合、施設基準を満たせない7対1病院がどれほど出現するかの試算結果

重症患者割合の基準値の引き上げと、10対1などから7対1への転換を加味した場合、施設基準を満たせない7対1病院がどれほど出現するかの試算結果

重症患者割合「25%への引き上げが最低ライン」と支払側

 宮嵜医療課長は「重症患者割合を何%に引き上げるという提案をしているものではない」と強調しましたが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会副会長)は「重症患者割合を25%%に引き上げても、7対1のベッド数減少は1万8000床程度にとどまる。ここが最低ラインではないか」と指摘。

 この指摘に対し診療側委員は猛反発。中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「平均在院日数の短縮で病床稼働率が下がっている。つまり7対1病床は実質的に相当減少している(稼働していなければ7対1入院基本料が発生しない)」と反論。また松原謙二委員(日本医師会副会長)は「15%から25%への引き上げは急激すぎる。患者にしわ寄せがくる可能性が高い」と述べ、慎重な検討を求めています。

 なお、支払側の花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、診療側委員の反論似たしいて「7対1の削減が目的ではない。機能の低い病棟は、7対1ではなく他の入院基本料に誘導していく必要があるのではないか」と応戦しています。

平均在院日数要件「17日以下」に厳格化する案が急浮上

 ところで重症患者割合を何%に設定するかについて、厚労省保険局医療課の担当者は「平均在院日数要件(現在、7対1は18日以下)の見直し」や「病棟群別の入院基本料の設定方法」などと密接に関連すると説明しています。例えば、病棟群の設定方法如何によっては「7対1から10対1への移行」はそれほど進みません。この場合、7対1病床数を削減するためには重症患者割合を厳しく設定する必要がでてきます。さらに改定率とも大きく関係するため、今後、さまざまな要素を勘案して議論をしていくことになるでしょう。

 平均在院日数要件については、これまで具体的な議論はされてきませんでしたが、厚労省は「平均在院日数の長い病院(上位10%)は、▽診療実績が低い▽重症患者割合が小さい▽1日当たり請求点数が小さい―傾向がある」ことを示しています。平均在院日数の長い病院(上位10%)には、「18日以上」の病院が該当します。このため次期改定に向けて、「平均在院日数要件を『17日以下』に厳格化する」可能性が急浮上していることが分かります。

平均在院日数の長い(上位10%)の病院では、看護必要度のA項目に該当する患者が少なく、1日当たり請求点数も小さい

平均在院日数の長い(上位10%)の病院では、看護必要度のA項目に該当する患者が少なく、1日当たり請求点数も小さい

ここに来て、7対1の平均在院日数要件を「17日以下」に厳格化(現在は18日以下)にする案が急浮上している

ここに来て、7対1の平均在院日数要件を「17日以下」に厳格化(現在は18日以下)にする案が急浮上している

 なお、2014年度の前回改定で新設された在宅復帰率についても、計算方法や基準値(現在は75%以上)を見直す方向が示されています。

在宅復帰率要件について、計算方法の見直しや基準値(現在75%以上)の引き上げが検討される

在宅復帰率要件について、計算方法の見直しや基準値(現在75%以上)の引き上げが検討される

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