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看護必要度の見直し、近く重症患者割合などの試算結果を提示―中医協総会

2015.10.23.(金)

 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)について、密度の高い医療を必要とする患者を適切に評価できるような見直しを行うべきか―。この点について中央社会保険医療協議会では、積極的に支持する支払側委員と、慎重に検討すべきとする診療側委員との間で火花が飛んでいます。ただし診療側委員の間には若干の意見の相違もあるようです。

 看護必要度の見直しによって、重症患者の割合(現在、7対1病院では15%以上)も変わってくるため、厚生労働省の試算結果を待って更なる議論が行われます。

 なお、総合入院体制加算については、入院医療分科会でまとめられた提案内容がおおむね了承されています。

10月23日に開催された、「第308回 中央社会保険医療協議会 総会」

10月23日に開催された、「第308回 中央社会保険医療協議会 総会」

看護必要度の見直し、診療側内も積極派と慎重派に分かれる

 看護必要度については、「現在のA項目では必ずしも、医療・看護の必要性が高い患者を拾い切れていない」「早期リハビリなどが推奨されるが、医師が行動制限をしたほうがB項目が高くなるという矛盾がある」などの課題が、下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」で浮かび上がりました。そこで入院医療分科会では、看護必要度を次のように見直すことを暗に提案しています(関連記事はこちら)。

(1)A項目で、「手術直後の患者」「救急搬送後の患者」「無菌治療室での管理」を評価する

(2)B項目で、「起き上がり」「座位保持」を削除し、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」を追加する

(3)現在、A項目2点以上かつB項目3点以上に該当しなければ重症患者にカウントされないが、これに加えて「A項目3点以上」(B項目は不問)の患者も重症患者とする

(4)看護職員以外の職種が項目の評価を行った場合なども、重症度、医療・看護必要度の評価に含める

開胸手術直後でも重症基準を満たす患者は50%程度で、術後3日目には25%を下回る

開胸手術直後でも重症基準を満たす患者は50%程度で、術後3日目には25%を下回る

「A項目が3点以上の患者」は、「A項目2点以上・B項目3点以上の患者」に比べて、医師による指示の見直し頻度が必要な患者が多い

「A項目が3点以上の患者」は、「A項目2点以上・B項目3点以上の患者」に比べて、医師による指示の見直し頻度が必要な患者が多い

「A項目が3点以上の患者」は、「A項目2点以上・B項目3点以上の患者」と、看護師による処置、観察、アセスメントが必要な患者の割合が同程度である

「A項目が3点以上の患者」は、「A項目2点以上・B項目3点以上の患者」と、看護師による処置、観察、アセスメントが必要な患者の割合が同程度である

 23日に開かれた中医協総会では、これらを踏まえた次の論点が厚労省から提示されました。

(a)手術直後の患者、認知症・せん妄の患者などを含め、急性期に密度の高い医療を必要とする状態が「重症度、医療・看護必要度」などで適切に評価されるよう見直す

(b)項目間の相関の高いB項目の集約などによりできるだけ評価の簡素化を図り、術後の早期離床等の促進や、看護職員以外とのチーム医療の推進にも資するよう評価方法などを見直す

 (a)の論点は(1)の提案、(b)の論点は(2)から(4)の提案を踏まえたものと言えるでしょう。

 これらに対して支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)らは、「入院医療分科会で議論された内容であり、基本的に支持する」と述べ、積極的な見直しを行っていくべきとの考えを表明しています。

 一方、診療側の中川俊男委員(日本医師会常任理事)は、「『看護必要度の見直しありき』で議論が進められているが、前回の2014年度診療報酬改定で看護必要度を見直したばかりである。朝令暮改で項目や基準が目まぐるしく変わるのは好ましくない。医療現場が混乱してしまう」と述べ、「慎重に議論すべきである」と強く訴えました。

 もっとも同じ診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、「現在の看護必要度は、急性期医療が必要な患者を十分に評価できておらず、また外科系に偏っている」として、見直し方向には賛意を占めています。

 診療側内部で意見に多少のずれがあるようで、今後、日本医師会と病院団体の間で調整が進むと考えられます。

 ところで、診療側・支払側の双方で意見が一致した部分もあります。それは、「看護必要度の見直しで重症者割合がどう変化するのか、その試算結果を見なければ具体的な議論ができない」という点です。

 上記の(1)と(3)の見直しによって「重症」と評価される患者数は増え、7対1であれば「重症患者割合が常に15%以上」という基準値をクリアしやすくなります。これは「7対1病床を、より急性期にふさわしいものとする」という考え方とは馴染みません。そこで看護必要度の項目見直しと合わせて、「重症者割合15%」の基準値を引き上げるのではないかと予想されており、この試算結果が待たれているのです。

 厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「試算結果を準備する」と明言しており、近く中医協の場に提示されることになるでしょう。

 なお、委員からは次のような具体的な意見・要望も出されています。

▽(1)で「無菌治療室管理加算」算定患者を評価する方向が示されているが一部の大病院に限定されてしまう。「サイトメガロウイルス抗体価」「アスペルギルス抗原」などの検査実施を評価すべきである(鈴木邦彦委員:日本医師会常任理事)

▽(4)で他職種による評価が示されているが、介護福祉士による行為も評価対象とすべきである(鈴木委員、万代委員)

総合入院体制加算、看護必要度A項目に基づく要件を導入

 23日の中医協では「総合入院体制加算の見直し」も議題となりました。

 総合入院体制加算は、総合的かつ専門的な急性期医療を24時間提供できる体制などを持つ、いわば「地域の砦」となる病院を評価するものです。しかし厚労省が調査を行ったところ、「精神疾患や認知症のある救急患者を積極的に受け入れていない病院がある」「病床数当たりの診療実績が必ずしも高くない病院がある」などの問題点が浮かび上がりました。そこで入院医療分科会では、次のような見直しをしてはどうかと暗に提案しています(関連記事はこちら)。

(1)加算1の実績要件のうち「化学療法年間4000件以上」を見直す

(2)加算2に、一定の実績要件を加える

(3)救急患者受け入れ実績などを新基準に設定する

(4)看護必要度A項目を新たな基準として導入する

加算2を届け出ている病院の中には、望ましいとされている「診療実績」要件をほとんど満たしていない病院も一部ある

加算2を届け出ている病院の中には、望ましいとされている「診療実績」要件をほとんど満たしていない病院も一部ある

A項目2点以上の患者割合の高い総合入院体制加算届け出病院では、年間手術件数やレセプト単価も高い

A項目2点以上の患者割合の高い総合入院体制加算届け出病院では、年間手術件数やレセプト単価も高い

病床当たりの診療実績を見ると、総合入院体制加算を届け出ながら、実績の少ない病院もある

病床当たりの診療実績を見ると、総合入院体制加算を届け出ながら、実績の少ない病院もある

 厚労省は23日の中医協総会に、これらをほぼ踏襲した次の論点を提示しました。

(a)精神疾患の患者や認知症患者等の受け入れを十分に進めるため、体制だけでなく実際の取り組みや実績についても要件に含める

(b)加算1の要件において、化学療法の実施件数の基準を見直す

(c)急性期機能の機能分化を図る観点から、例えば看護必要度のA項目のように、病床数に対する医療の提供密度に関する要件を設ける

(d)加算2にも、一定程度の実績要件を求める

 この論点に対しては、診療側・支払側の双方とも納得しており、今後は詳細な基準設定などに議論が移る見込みです。

 ただし診療側の鈴木委員は、「総合入院体制加算は『地域医療の砦』となる病院を評価するもので、高度急性期・急性期機能に特化すべきであろう。この加算を届け出る場合には、回復期・慢性期機能の併設を認めるべきではない」と注文を付けています。

 ちなみに、現行の施設基準では、総合入院体制加算を届け出る場合には原則として「療養病棟」「地域包括ケア病棟(病室)」の併設は認められていません。鈴木委員は、ここに「回復期リハビリ病棟」などを追加すべきと提案しています(関連記事はこちら)。

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