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病院経営は増収減益、2016年度はプラス改定をすべき―日病・堺会長

2015.12.1.(火)

 前回の診療報酬改定後、加算を算定しようと投資するが利益に結びつかず「増収減益」になっており、2016年度にはプラス改定とすべきである―。30日に開かれた日本病院会の定例記者会見で、堺常雄会長がこのように強調しました。

11月30日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

11月30日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

薬価引き下げ分を診療報酬本体に使うべき

 厚生労働省は、2016年度予算の概算要求で社会保障費の伸びを6700億円としています(関連記事はこちら)。一方、骨太方針2015では「2016-18年度の3年間で1兆5000億円に抑える」という目安を置きました。

社会保障関係費については、高齢化対応として6700億円の増額要求を行う考え

社会保障関係費については、高齢化対応として6700億円の増額要求を行う考え

 3年間で1兆5000億円ということは単純計算で5000億円です。そこで、診療報酬のマイナス改定によって、少なくとも6700億円と5000億円の差額「1700億円」を圧縮するという見方が強くなっています。財政制度等審議会も、こうした点を踏まえて「マイナス改定」をすべきとの提言をまとめています。

 この点について堺会長は、「プラス改定をすべきである」「薬価引き下げ分は診療報酬本体に戻すべきである」との考えを強調しています。

 日病の改定影響調査からは、全体として「増収減益」となっていると言います。堺会長は、加算を算定すべく投資(例えば人員配置の充実など)を行うが、「投資額>加算額」という状況なために、結果として利益が減少している状況を説明。

 また、薬価引き下げ分については「前回改定では、消費増税対応に回されたようなうやむやな状況であった」と指摘し、財源を次期改定では診療報酬本体の引き上げに使うよう求めています。

消費増税には「仕入税額控除方式」で対応すべき

 また、2014年度の前回診療報酬改定では、消費増税に対応するための特別のプラス改定が行われましたが、堺会長は「四病院団体協議会で調査したところ、補填状況は病院によってばらつきが大きい。これは税の公平性、透明性からいってもまったく容認できない。特に大型医療機器に資源を投入する、大規模病院や特定機能病院はかなり厳しい状況である」と指摘し、今後、適正な対応をとるよう求めています。

 堺会長は、今後の消費増税対応について「仕入税額控除方式を求めていくことを四病協で確認している」と説明しています。

 仕入税額控除方式とは、いわば事業者(病院)が課税売上げにかかる消費税額から、課税仕入れなどに係る消費税額(仕入税額控除)を控除した金額を税務署などに納付する仕組みです。現在は、社会保険診療については「非課税」となっているため、仕入れ税額控除を行うことができませんが、例えば社会保険診療について「ゼロ%」の消費税を課税すれば(ゼロ税率)、仕入れ段階で医療機関が負担した消費税を控除するので、いわば「還付」を受けることが可能になります。

通常の消費取り引きでは、小売業者は製造業者に消費税分(80円)を支払うが、消費者から消費税(240円)を受け取り、製造業者へ支払った分は「仕入税額控除」が受けられるため、いわゆる損税は発生しない。

通常の消費取り引きでは、小売業者は製造業者に消費税分(80円)を支払うが、消費者から消費税(240円)を受け取り、製造業者へ支払った分は「仕入税額控除」が受けられるため、いわゆる損税は発生しない。

大病院のケアミックス、認めるべきと堺会長

 堺会長は会見の中で、医療提供体制改革にも言及しています。

 現在、地域医療構想の策定が都道府県で進んでおり、また一般病床・療養病床を有する全医療機関は、毎年「自院の病棟の機能」などを報告することになっています(病床機能報告制度)。

 この点、堺会長は「病院の機能なのか」「病棟の機能なのか」を明確にする必要があると訴えています。これは、11月26日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」での、相澤孝夫委員(日本病院会副会長)の発言と同旨の内容です(関連記事はこちら)。

 また堺会長は、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の各機能定義が明確でないと指摘するとともに、「急性期の概念はステージと医療資源投入量の両面で見る必要がある」とも指摘しました。

 ところで、診療報酬について議論を行う中央社会保険医療協議会では「大病院が地域包括ケア病棟を設置することは好ましくない」と指摘する委員もいます(関連記事はこちら)。この点について堺会長は、「例えば500床の病院であれば、すべてを急性期機能とするのでなく、ある程度落ち着いてくると回復期の機能を受けたいし、実際に施設にうつるまでは慢性期という複数の機能を持つことは当然である。大病院だから、地域医療包括ケア病棟を持ってはいけないということではなく、地域の事情に応じた機能を持てばよいのではないか」との見解を述べています。

 ただし、堺会長は「地域において、回復期などの機能をメインに提供するのは中小病院になると思う」と述べ、日病による地域特性を考慮した中小病院支援モデルを複数つくる構想にも言及しています。

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