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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

【2016年度診療報酬改定総点検6】主治医機能の評価、紹介状なし大病院患者の特別負担によって外来医療の機能分化

2016.1.4.(月)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けた議論が佳境を迎えます。メディ・ウォッチでは近く再開される中央社会保険医療協議会の論議に備えるために、これまでの改定論議をおさらいしています。今回は、外来医療に焦点を合わせます。

地域包括診療料など「認知症+α」患者全般にも拡大

 外来医療については、主治医機能を評価する「地域包括診療料」「地域包括診療加算」の見直しがポイントとなります。

 地域包括診療料と地域包括診療加算は、▽高血圧症▽糖尿病▽高脂血症▽認知症―のいずれか2つ以上に罹患している患者に対して、治療・医学的管理はもとより、下に掲げた総合的な支援を行う医療機関を評価するために、2014年度の前回改定で新設されました。

▽服薬管理(他の医療機関と連携の上、通院医療機関や処方薬をすべて管理し、カルテに記載するなど)

▽健康管理(健診の受診勧奨、健康相談を行う)

▽介護保険に係る相談を受け、主治医意見書の作成を行う

▽在宅医療の提供や、24時間対応を行う(2次救急指定・救急告示病院、地域包括ケア病棟入院料など、在宅療養支援病院のすべてを満たすなど)

主治医機能を診療報酬で評価するために、2014年度改定で「地域包括診療料」「地域包括診療加算」を新設

主治医機能を診療報酬で評価するために、2014年度改定で「地域包括診療料」「地域包括診療加算」を新設

 このように厳しい要件が設定されている一方で、評価(点数)が十分でないとの指摘があるように、届出医療機関数は限られています。さらに、担当医は「関係団体の研修を受ける」ことが必要で、当初1年間の「研修を受けたものと見做す」との経過措置が切れたため、届出医療機関数はさらに少なくなっているのが実際です。

地域包括診療料の届出施設は2015年7月時点で93、1年前(14年7月)の122施設に比べて29施設減少している

地域包括診療料の届出施設は2015年7月時点で93、1年前(14年7月)の122施設に比べて29施設減少している

地域包括診療加算の届出施設は2015年7月時点で4713、1年前(14年7月)の6536施設に比べて1823施設減少している

地域包括診療加算の届出施設は2015年7月時点で4713、1年前(14年7月)の6536施設に比べて1823施設減少している

 この点、12月7日に固められた改定基本方針では「主治医(かかりつけ医)機能のさらなる評価」が求められていることもあり(関連記事はこちらこちら)、厚労省は「地域包括診療料」などの拡大を図るべく、次のような見直し案を中央社会保険医療協議会に提示しています(関連記事はこちら)。

●「高血圧症、糖尿病、高脂血症以外の疾患を有する認知症患者」に対して、介護に関連する療養上の指導を含め、継続的かつ全人的な医療を実施するとともに、多剤投与などの薬剤の投与を適正化しつつ適切な服薬管理を行う場合については、主治医機能としての評価を行う

 これが、単純に「地域包括診療料」「地域包括診療加算」の算定対象患者の拡大を意味するのか、別途の見直し内容を含むのかは、近く再開される中医協の議論を待つ必要があります。

 なお診療側の委員は、この算定対象患者拡大案を受け入れていますが、さらに「要件の緩和」も求めています。例えば「2次救急医療機関・救急告示病院」の指定という要件について、万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「急患に対応できる体制の整備で十分ではないか」と指摘しており(関連記事はこちら)、どこまで要件の緩和がなされるのかも注目ポイントとなります。

3歳以上の小児も対象とした主治医機能の評価を新設

 主治医機能の評価については、小児に特化した主治医機能評価が充実される模様です。

 小児の外来医療については、「受療率が高い」「重複受診が多い」「時間外や休日、深夜の受診が多い」という特徴・問題点があります。

小児科では、時間外や休日、深夜の受診が比較的多い

小児科では、時間外や休日、深夜の受診が比較的多い

子どもの親は、かかりつけ医や主治医に対して「急病時の治療」や「待たされない診療」を求めている

子どもの親は、かかりつけ医や主治医に対して「急病時の治療」や「待たされない診療」を求めている

 こうした問題点に対応するためには「親・保護者が信頼する主治医・かかりつけ医」が必要で、現在「B001-2 小児科外来診療料」があります。しかし、小児外来診療料の対象患者は3歳未満に限定されています。そこで厚労省は、次のような点数を設ける考えを中医協に示しています(関連記事はこちら)。

●継続的に受診する患者の同意の下、「慢性疾患の継続的な管理」「急性疾患の診療」「時間外の対応」「必要に応じた専門医療機関への紹介」「予防接種の状況や健康診査の結果などを踏まえた健康管理」を総合的に行い、継続的かつ全人的な診療を行う主治医機能を評価する

 具体的には、「3歳以降の小児に対する新たな包括評価項目の創設」や「小児科外来診療料の対象患者拡大」などを行うことが予想され、今後の中医協でどのような設計図が示されるのか注目されます。

小児科を標榜する医療機関で、地方厚生局に届け出を行っている医療機関は、3歳未満の全患者について小児科外来診療料を算定する

小児科を標榜する医療機関で、地方厚生局に届け出を行っている医療機関は、3歳未満の全患者について小児科外来診療料を算定する

紹介状なしの大病院外来患者に対する特別負担、クレーム対応などの準備を

 厚労省は、「大病院は専門・紹介外来を担い、中小病院や診療所が一般外来を担う」という形に機能分化することを目指しています。大病院で軽症の外来患者を多く診ることは、勤務医の負担を重くするとともに、重症患者が適切な医療を受ける機会を阻害してしまうからです。

 前述の「中小病院・診療所における主治医機能の評価」も、もちろん外来医療の機能分化を進める方策の1つです。

 厚労省は大病院からのアプローチとして「紹介状なく大病院の外来を受診する患者に、特別の定額負担を課す」ことを打ち出しています。昨年の医療保険制度改革として導入が決定され(関連記事はこちら)、中医協で細部の議論が行われています。現在までに、次のような骨格が固まりました(関連記事はこちらこちら)。

(1)「特定機能病院」と「500床以上の地域医療支援病院」を対象とする(許可病床数500床以上とするのか、一般病床数500床以上とするのかなどは更に検討)

(2)定額負担は「国で最低金額を定める」こととする(具体的な金額は更に検討)

(3)「自施設の他の診療科を受診中の患者」「検診結果により受診指示があった患者」「救急医療事業、周産期事業などにおける休日夜間受診患者」「外来受診後そのまま入院となった患者」「地域に、ほかに当該診療科を標榜する診療所などがない場合」「災害により被害を受けた患者」などのほか、「医療機関の判断により受診する必要を認めた患者」は、特別負担の対象としない

 金額をはじめ、細部については今後さらに検討・調整する必要があります。

 ここで特に気を付けなければいけないのが「再診」患者の取り扱いです。現在でも、200床以上の病院では紹介状のない外来患者から特別の負担を課すことが認められており(選定療養)、すべての特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院では初診患者から特別負担を徴収しています。

 しかし逆紹介をしても来院してしまう再診患者について特別負担を課している病院はごくごく少数派に止まります。この4月からは、こうした患者からも特別負担を「必ず」徴収しなければならず、窓口でトラブルが発生すると予想されます。今から「どのような説明を行うのか」「患者の理解を得られなかった場合(つまりクレームが来た場合)にどのような対応をとるのか」などの準備しておくことが極めて重要です。

現在、特定機能病院、500床以上の地域医療支援病院のすべてで「紹介状なし初診時の選定療養費」を徴収しているが、「逆紹介しても来院する再診患者」からの徴収は少数派である

現在、特定機能病院、500床以上の地域医療支援病院のすべてで「紹介状なし初診時の選定療養費」を徴収しているが、「逆紹介しても来院する再診患者」からの徴収は少数派である

【連載】16年度診療報酬改定総点検
(1)7対1の施設基準は厳格化の方向、重症患者割合は25%に引き上げられるのか?
(2)地域包括ケア病棟、手術・麻酔の出来高評価について診療側の意見はまとまるのか?
(3)在宅医療の報酬体系を大幅に見直し、課題は是正されるのか?
(4)DPCの中で「医療法上の臨床研究中核病院」は評価されるのか?
(5)療養病棟の医療区分、「きめ細かい状況」をどのように考慮するのか?
(6)主治医機能の評価、紹介状なし大病院患者の特別負担によって外来医療の機能分化

【関連記事】
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診療報酬改定セミナー2024