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16年度改定、「医療機能の分化・強化、連携」「地域包括ケアシステム」に重点を―医療保険部会

2015.10.22.(木)

 2016年度の次期診療報酬改定の基本方針では「医療機能の分化・強化、連携」や「地域包括ケアシステムの構築」に重点を置く―。このような方向が、21日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会で固まりました。

 医療保険部会は、医療部会の議論も見すえながら議論を深め、12月初旬にも基本方針決定となる見込みです。

10月21日に開催された、「第90回 社会保障審議会・医療保険部会」

10月21日に開催された、「第90回 社会保障審議会・医療保険部会」

2025年だけでなく、2035年も見すえた改定に

 診療報酬改定については、06年度から▽基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で定める▽内閣で改定率を決定する▽具体的な点数などを中央社会保険医療協議会で議論する―という役割分担がなされています。

 基本方針では、通常、「改定に当たっての基本認識(基本的考え方)」を明示した上で、特に重点的に対応すべき「4つの視点」を示すことになっており、16年度改定でも同様の構成となる見込みです。

 厚労省は21日の医療保険部会に、次の3項目に分けて基本認識を示すことを提案しました。ここでは、医療現場に現存する課題を浮き彫りにし、さらに今後の在るべき医療の姿を目指すために診療報酬体系をどのように組み替えていくべきかが論じられます。

(1)超高齢社会における医療政策の基本方向

(2)地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築

(3)経済・財政との調和

 この3項目のベースには、いわゆる「2025年問題」があります。2025年には、いわゆる団塊の世代(1947-49年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となるため、これから慢性期医療や介護のニーズが急増していきます。診療報酬も、こうした状況に対応できる体系に組み替えていくことがしていかなければなりません。

 そこで、(1)では▽「治す医療」から「治し、支える医療」への転換▽住み慣れた地域で生活を継続し、尊厳をもって人生の最期を迎えられるようにする―ことを掲げています。

 また(2)では地域包括ケアシステムなどを構築するために医療従事者の確保・定着が不可欠であると指摘し、「地域医療介護総合確保基金との役割分担」を踏まえつつ、診療報酬で医療従事者の負担軽減などを図ることが必要と述べています。

 一方、医療をはじめとする社会保障費が国の財政を、保険料負担が企業経営を圧迫している状況を踏まえ、(3)では「医療政策においても、経済・財政との調和を図ることが重要」として、骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2015や成長戦略(日本再興戦略2015)でも提唱されている「無駄の排除」や「効率的な資源配分」「経済成長への貢献」などにも留意することが必要と訴えています。

 ところで、厚労省は、16年度改定の基本方針では、団塊ジュニア(1970年代生まれ)が65歳を迎える2035年をも見すえ、塩崎恭久厚生労働大臣の肝いりでまとめられた「保健医療2035」をもベースにした診療報酬改定としはどうかと提案しました。この点について「医療保険部会では保健医療2035について議論していない」との異論も出ましたが、「2025年の先を見すえることは非常に重要」(堀真奈美委員:東海大学教養学部人間環境学科教授)との意見があり、保健医療2035を視野に入れる改定内容となる見込みです。保健医療2035では、『リーン・ヘルスケア(価値の高いサービスを低コストで提供する)』という概念を打ち出していますが、これはGHCがかねてから提唱している「医療の価値の向上」と通じるものです(関連記事はこちら)。

「患者の状態に応じた評価」「チーム医療」などを推進

 医療現場の課題は一朝一夕に解決できるものではありません。そのため06年度か14年度まで、特に力を入れるべき「改定の基本的視点(4つの視点)」は同じ柱が立てられていました。ただし、16年度の次期改定では少し表現を変えた次の4つの柱が立てられる見込みですが、内容は従前から大きく変わっていません。

(1)医療機能分化・強化、連携と地域包括ケアシステムを推進する視点

(2)患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点

(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点

(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点

 このうち(1)の「医療機能の分化・強化、連携」と「地域包括ケアシステムの推進」について、厚労省は「特に重点を置く」ことを提案し、委員もこれを了承しています。

 基本方針の中では、この4つの視点のそれぞれについて、診療報酬改定でどのような対応をすべきかが例示されます。

 まず(1)では、▽患者の状態に応じた評価▽チーム医療の推進▽勤務環境の改善▽診療所などの主治医機能(かかりつけ医機能)の確保▽退院支援▽医療介護連携▽医歯薬連携▽大病院の専門的な外来機能の確保―などが挙げられています。

 また(3)の充実すべき項目としては、▽緩和ケアを含む質の高いがん医療▽「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療▽難病患者への適切な医療▽救急、小児、周産期医療―などを評価してはどうかとの例示がなされました。

 一方、(4)の効率化・適正化では、▽後発医薬品の使用促進・価格適正化▽長期収載品の評価の仕組みの検討▽残薬や多剤・重複投薬を減らすための取り組み▽早期の在宅復帰の推進▽重症化予防の取り組み―などに焦点が合わせられる見込みです。

 このうち「主治医機能」「かかりつけ医機能」について、松原謙二委員(日本医師会副会長)は「患者を1人でなく、複数の医師で診る『かかりつけ医機能』の評価をすべきである」と要望しました。前回の14年度改定では「主治医機能」を評価するものとして地域包括診療料や地域包括診療加算が新設されましたが、これらは原則として患者1につき1医療機関しか算定できません。これを複数医療機関で拡大することを求めていくものと考えられます。

 この点、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「『かかりつけ医機能』と『主治医機能』について認識が委員間で異なっている。一度、議論する必要がある」と提案しています。

 また白川委員は「16年度の次期診療報酬改定では『費用対効果評価』という、診療報酬の世界では画期的な概念が導入される。これを(4)の効率化・適正化の視点に盛り込むべきである」と述べています。

 一方、武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は「アウトカムに着目したリハビリテーションの評価」や「認知症を勘案した医療区分(療養病棟入院基本料)の設定」などを盛り込むよう求めています。

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