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16年度改定基本方針、社保審・医療部会でも検討開始、診療報酬で「医療提供体制改革」を目指す

2015.9.16.(水)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、社会保障審議会の医療部会でも基本方針策定に向けた検討が始まりました。医療部会では「医療提供体制改革」の観点から、診療報酬を用いて「病床機能の分化・連携」や「在宅医療・地域包括ケアシステム」「チーム医療」の推進、「救急・小児・周産期医療」の充実などをどう進めるべきかを主に検討していきます。

 医療部会では10月22日と11月19日に更なる議論を行い、基本方針をまとめる予定です。

9月16日に開催された、「第40回 社会保障審議会 医療部会」

9月16日に開催された、「第40回 社会保障審議会 医療部会」

社保審の医療保険部会・医療部会で改定基本方針

 診療報酬改定の内容は中央社会保険医療協議会の議論を経て決定されますが、中医協を舞台にした汚職事件の反省を踏まえ、06年度の診療報酬改定から▽改定の基本方針は社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▽改定率は内閣が予算編成過程で決める▽基本方針と改定率を受け、中医協で改定内容を詰める―という役割分担が行われています。

 基本方針策定の議論は、既に7月から医療保険部会で始まっており、ようやく医療部会でも議論がスタートした格好です。この点、「医療提供体制の方が経済的視点よりも重要であり、医療部会を先行させるべきではないか」と邉見公雄委員(全国自治体病院協議会会長)が息巻く一幕もありました。

 16日に開かれた医療部会では、厚生労働省から「医療提供体制改革の観点からの主な論点」(たたき台)が提示されており、次の4つの改革を実現するために診療報酬による誘導を行ってはどうかとの考え方が示されています。

(1)医療需要の変化への対応

(2)医療従事者の確保

(3)質の高い医療の効率的な提供

(4)医薬品・医療機器の産業振興

診療報酬で病院の機能分化・連携を推進

 (1)の「医療需要の変化への対応」は、急激な少子高齢化に伴って人口構造が大きく変化する中で、医療提供体制も根本的な見直しが必要という視点を強調したものです。厚労省は、「病床機能報告制度」や「地域医療構想」によって病院・病床の機能分化と連携を進める考えで、診療報酬でもこれを後押ししていくことが考えられます。

 もちろん、将来的には「▽高度急性期▽急性期▽回復期▽慢性期―の各機能と診療報酬をどうリンクさせていくか」が検討テーマに上がることも考えられますが、各機能の定義が定性的なものにとどまっている現時点では、部分的な検討にとどまることでしょう。

 この点について相澤孝夫委員(日本病院会副会長)は「病院単位の入院基本料でよいのだろうか、病棟群のような考え方を導入すべきではないか」と述べ、日本病院団体協議会などが要望している「病棟群単位の入院基本料」(関連記事はこちら)を検討するよう暗に求めています。

 また中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「地域医療構想は地域の実情を踏まえるもので、全国一律の診療報酬とリンクさせるべきではない」との持論を述べた上で、「高度急性期や急性期の、いずれの機能を選択しても安定した医療機関経営が可能であるというメッセージ程度は改定基本方針の中で示すべきであろう」との考えを強調しました。

 なお、11日に開かれた医療保険部会では、改定に当たっての基本認識の1つとして「超高齢社会における医療政策の基本方向を16年度改定で示す」ことが掲げられましたが、樋口範雄委員(東京大学法学部教授)や邉見委員、相澤委員は「少子化対策」の視点を強調すべきではないかと要請しています。

 このほか(1)の「医療需要の変化への対応」については▽在宅医療・地域包括ケアシステムの推進▽医療分野におけるICT化の推進―といった項目が挙げられています。

 ところで、前者の「在宅医療・地域包括ケアシステム」では「『かかりつけ医』を中心とした多職種協働」という内容が、また11日の医療保険部会にも「『かかりつけ医』の評価」といった内容が例示されました。一方、14年度の前回改定では、厚労省は『かかりつけ医』という表現を避け、『主治医』機能という表現を用いていました。この点について中川委員は「日医では『かかりつけ医』の定義を明確にしている。また、『かかりつけ医』と『主治医』に大きな差はないと考えている」と述べ、『かかりつけ医』の表現を継続するよう求めていますが、今後の議論でどう調整されるのか気になるところです。

「医療従事者の確保を重点課題にすべき」と西澤委員

 (2)の「医療従事者の確保」に向けて、厚労省は次期改定で▽チーム医療の推進▽勤務環境の改善―の2項目を重視すべきではないかとの考えを示しました。

 この点、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「医療現場では従事者確保が本当に困難である。『重点課題』として掲げてもよいくらいだ」と強調しました。

 改定の基本方針は、06年度から共通する4つの視点(▽医療機能の分化・連携の推進▽患者に分かりやすくQOLを高める医療▽充実が求められる領域の評価▽効率化できる領域の適正化)をベースに、その時々に応じた『重点課題』で構成されます。西澤委員は「医療従事者の確保」を、4つの視点と同格の『重点課題』とすべきと提案しているのです。

2006年度(平成18年度)の診療報酬改定から、基本方針は、「4つの視点(改定の視点)」をベース、時々の「重点課題」を踏まえて設定されている

2006年度(平成18年度)の診療報酬改定から、基本方針は、「4つの視点(改定の視点)」をベース、時々の「重点課題」を踏まえて設定されている

 また相澤委員は、この点について「人の確保」に止まらず「人づくり」、つまり「医療従事者の養成」にも力を入れるべきであると要望しています。

「診療報酬で医療安全管理体制充実を」と山口委員

 (3)の「質の高い医療の効率的な提供」について、厚労省は▽救急・小児・周産期医療の充実▽医療安全管理体制の向上▽医科歯科連携の推進▽後発医薬品の使用促進―といった点を次期改定で重視すべきとの考えを示しています。

 このうち救急医療について加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は、「現在、3次救急に患者が集中し疲弊している。本来は2次救急がトリアージし、必要な場合には3次救急へ搬送するという体制が望ましく、今後、高齢者がますます増加する中では救急医療の中心となる2次救急を診療報酬でしっかり評価すべきであろう。10年度改定、12年度改定ではそうした評価が行われたが、前回の14年度改定では不十分であったので、次期16年度改定では十分な評価をしてほしい」と要望。

 また医療安全管理については、この10月から医療事故調査制度がスタートします(関連記事はこちら)。この点に関連して山口育子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「大学病院ですら医療安全に対する意識・取り組みのばらつきが大きい。診療報酬で評価するとともに、要件をきちんと設定して、医療機関の医療安全管理体制を充実することが必要ではないか」と指摘しました。

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