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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

医療事故調査制度の詳細固まる、遺族の希望を踏まえた事故原因の説明を―厚労省

2015.3.23.(月)

 医療事故調査制度の10月施行に向けて、厚生労働省は20日に「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の議論取りまとめを公表しました。今後、この取りまとめ内容にパブリックコメントを募集し、その結果を踏まえて医療事故調制度施行令(厚労省令)や関係通知を示し、10月から制度がスタートすることになります。

 懸案となっていた「院内調査報告書の遺族への開示」については、医療機関に対して「調査の目的・結果について、遺族が希望する方法で説明する」という努力義務を課しており、必ずしも開示する必要はありません。

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事前に患者への説明などがない死亡事故が報告対象

 医療事故調査制度の最大の目的は「再発防止」にあります。このため、「個人の責任追及」にならないような配慮がなされており、例えば「医療従事者へのヒアリングでは、その内容そのものは開示されないことを事前に伝える」「匿名化を徹底する」「事故調査報告書は法的義務がない開示請求には応じない」ことなどが明示されています。

 制度の大枠をおさらいすると、次のように整理できます。

(1)事故が発生した医療機関が、医療事故調査・支援センターに事故発生を報告し、遺族にも報告する

(2)医療機関は院内調査を行い、調査結果をセンターに報告するとともに、その内容を遺族に説明する

(3)遺族や医療機関が院内調査結果に納得できない場合には、センターに調査を依頼できる

(4)センターは調査結果を遺族と医療機関に報告するとともに、事故事例を集積・分析して再発防止に向けた普及啓発に努める

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

 まず(1)で報告対象となる医療事故は、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」に限定されます。

医療事故調査制度における「医療事故」の範囲、(1)医療に起因する死亡・死産(2)管理者が予期しなかった―という2重の限定が設けられている

医療事故調査制度における「医療事故」の範囲、(1)医療に起因する死亡・死産(2)管理者が予期しなかった―という2重の限定が設けられている

 前者の「医療に起因する」という縛りから、▽火災や天災▽原病の進行▽偶発的に生じた併発症―などによる死亡は報告対象になりません。

「医療に起因する死亡・死産」の考え方、▽火災や天災▽原病の進行▽偶発的な併発症―などによる死亡は報告の対象外

「医療に起因する死亡・死産」の考え方、▽火災や天災▽原病の進行▽偶発的な併発症―などによる死亡は報告の対象外

 後者の「管理者が予期しなかった」と判断されるためには、次の3ケースのいずれに該当することが必要です。

(a)事前に医療従事者などが、患者などに対して死亡・死産が予期されていることを説明していた

(b)事前に医療従事者などにより、死亡・死産が予期されていることを診療録その他の文書等に記録していた

(c)事情の聴取などを行った上で、事前に医療従事者などにより、死亡・死産が予期されていると認めた

(c)は緊急搬送されたケースなどを想定したもので、(a)(b)については一般的な説明にとどまらず「個別患者の臨床経過等を踏まえて、死亡・死産が起こりうることを、患者が理解できるように説明・記録」していなければなりません。

院内調査の結果は、分かりやすい形で遺族に説明

 (2)の院内調査は、その医療機関の管理者が▽診療録などの記録の確認▽当該医療従事者やその他の関係者からのヒアリング▽解剖または死亡時画像診断(Ai)の実施▽医薬品、医療機器、設備等の確認▽血液、尿等の検査―から必要なものを判断して実施します。ここで留意しなければならないのが、調査は「個人の責任」を追及するために行うものではないという点です。「ヒアリング結果は開示されない」ことなどを事前に説明する必要があります。

院内調査の概要、「医療事故の原因や再発防止」が目的だが、この時点では具体的な原因などは明らかにならないことが多いと予想される

院内調査の概要、「医療事故の原因や再発防止」が目的だが、この時点では具体的な原因などは明らかにならないことが多いと予想される

 なお、小規模な医療機関では十分な調査を行うことが難しいため、医療機関が必要な支援をセンターや医師会、病院団体、大学病院などに求めることが可能です。

医療機関が自ら行う院内調査を支援する団体、現時点では医師会や病院会、大学病院、各学会などが想定されている

医療機関が自ら行う院内調査を支援する団体、現時点では医師会や病院会、大学病院、各学会などが想定されている

 院内調査の結果は、報告書にまとめてセンターに提出します。報告書には▽調査概要(調査項目、調査の手法)▽臨床経過(客観的事実の経過)▽原因を明らかにするための調査の結果(必ずしも原因が明らかになるとは限らない)▽再発防止策(任意)▽意見(任意)―などを記載します。

 また、調査結果は遺族にも説明しなければなりません。その方法は「患者の希望」を重視し、▽書面▽口頭▽書面と口頭―のいずれかを医療機関の管理者が選択します。報告書そのものを遺族に開示するべきか否かについて検討会で激論が交わされましたが、法律(改正医療法)に「遺族への開示義務」が規定されていないことから、「調査の目的・結果について、遺族が希望する方法で説明する」という努力義務が通知に記載されるにとどまっています。

センター調査報告書には原因や再発防止策も記載

 遺族や医療機関から要請があった場合には、センターが調査を行うことになります。遺族からの要請を不当に妨げないために、センターの調査費用(遺族が要請した場合は遺族負担)は一律「数万円」程度に抑えられる見込みです。また、医療機関から要請があった場合の費用については「実費の範囲でセンターが定める」こととされました。

 センターの調査は「(1)の医療機関からの報告」が大前提となり、医療機関から報告されなかった事例について、遺族が調査を依頼することやセンターが調査を行うことはできません。

 センターの調査に対して、医療機関には「調査に必要かつ合理的な範囲で協力をしなければならない」という義務が課せられました。ただし多くの場合、センター調査の内容は主に「院内調査の検証」となる見込みです。

 センターは調査結果を報告書にまとめ、遺族と医療機関に交付します。そこには▽調査の概要(調査項目、調査の手法)▽臨床経過(客観的事実の経過)▽原因を明らかにするための調査の結果▽再発防止策―が記載されます。

 なお、センター調査によっても原因が明らかになるとは限りません。また「原因」や「再発防止策」には特定個人の責任追及とならないように注意することが必要で、「(2)の院内調査報告書」はセンター調査報告書の中には含まれません。

センターの行う調査の概要、やはり個別事例の調査結果からは原因や再発防止策は必ずしも見出すことはできない可能性がある

センターの行う調査の概要、やはり個別事例の調査結果からは原因や再発防止策は必ずしも見出すことはできない可能性がある

 センターには、個々の事故事例を集積・分析し、再発防止策を構築するという重要業務があります。具体的には次のようなものです。

▽報告された事例を匿名化・一般化し、データベース化、類型化するなどして類似事例を集積する

▽医療機関の体制・規模等に配慮した再発防止策の検討を行う

▽誤薬が多い医薬品の商品名や表示の変更など、関係業界に対しての働きかけを行う

▽再発防止策がどの程度医療機関に浸透し、適合しているか調査を行う

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