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地域包括診療料、慢性疾患指導の研修や24時間対応薬局との連携がハードルに―中医協総会

2015.11.9.(月)

 主治医機能を評価するために2014年度の前回診療報酬改定で新設された「地域包括診療料」について、クリニックでは「慢性疾患の指導に係る適切な研修の修了」、病院では「院外処方の場合の24時間対応薬局との連携」という施設基準を満たすことが難しいと考えている―。このような状況が、6日に開催された中央社会保険医療協議会の総会に報告されました。

11月6日に開催された、「第311回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月6日に開催された、「第311回 中央社会保険医療協議会 総会」

改定の影響・効果を調査し、次期改定に反映

 これは、14年度改定の結果検証調査の速報値として報告されたものです。診療報酬改定の結果検証調査は、改定の効果が現れやすい部分については改定年度(直近では14年度、関連記事はこちらとこちら)に、効果が出るまでに時間のかかる部分については改定の翌年度(同じく15年度)に行われます。15年度には次の7項目の調査が行われ、6日の中医協総会には(1)(2)(3)(7)の4つの調査の速報値が報告されました。この調査結果は、次期診療報酬改定の基礎資料となります。

(1)主治医機能の評価の新設や紹介率・逆紹介率の低い大病院における処方料等の適正化による影響を含む外来医療の機能分化・連携の実施

(2)在宅療養後方支援病院の新設や機能強化型在宅療養支援診療所等の評価の見直しによる影響、在宅における薬剤や衛生材料等の供給体制の推進等を含む在宅医療の実施状況

(3)訪問歯科診療の評価および実態など

(4)廃用症候群に対するリハビリテーションの適正化、リハビリの推進などによる影響や維持期リハビリの介護保険への移行の状況を含むリハビリの実施状況

(5)胃瘻の造設などの実施状況

(6)明細書の無料発行の実施状況

(7)後発医薬品の使用促進策の影響および実施状況

 今回は(1)の内容について見ていきましょう。

中小病院・診療所の主治医機能を評価

 14年度の前回改定では「主治医機能」を評価するために、200床未満の病院と診療所が届け出可能な「地域包括診療料」と、診療所のみが算定できる「地域包括診療加算」が新設されました。このうち地域包括診療料は、▽高血圧▽糖尿病▽脂質異常▽認知症―のうち2疾患を持つ患者に対して、服薬管理や健康相談、介護保険に係る相談、在宅医療の提供や24時間対応などを行うことを包括的に評価する点数です。しかし地域包括診療料の届け出は、14年7月1日時点でわずか122施設にとどまっています(関連記事はこちら)。

地域包括診療料の届け出が多いのは、東京、神奈川、鹿児島、千葉、北海道など

地域包括診療料の届け出が多いのは、東京、神奈川、鹿児島、千葉、北海道など

 この背景には「地域包括診療料を届け出るための施設基準などが厳しい」ことが挙げられます。今回の調査では、地域包括診療料を届け出た病院・診療所が「難しい」と考えている項目が調べられました。それによると診療所では「慢性期疾患の指導に係る適切な研修を修了すること」や「常勤医師3割以上の配置」、病院では「院外処方の場合の24時間対応薬局との連携」や「2次救急医療機関、救急告示病院、病院群輪番制病院であること」などを挙げる声が多くなっています。

地域包括診療料を届け出ている医療機関、クリニックでは「慢性疾患指導研修」、病院では「24時間対応薬局との連携」がハードルに

地域包括診療料を届け出ている医療機関、クリニックでは「慢性疾患指導研修」、病院では「24時間対応薬局との連携」がハードルに

 また、地域包括診療料を届け出ていない医療機関に今後の意向を聞いたところ、「届け出の予定がある」「検討中」と答えたのは病院の25.3%、診療所の11.5%に止まっており、病院の7割、診療所の8割は「届け出の予定はない」と答えています。施設基準を満たせないと考えている医療機関が多いことが伺えます。

地域包括診療料を届け出ていない病院の25%程度、診療所の10%程度は、今後も届け出の予定なし

地域包括診療料を届け出ていない病院の25%程度、診療所の10%程度は、今後も届け出の予定なし

地域包括診療料、包括評価ゆえの粗診粗療は生じていない

 地域包括診療料は、前述のように包括評価ですが、患者が急性増悪した場合には「550点以上の検査、画像診断、処置」の費用などは出来高で算定できます。

 この点に関連して、厚労省が検査・画像診断・処置の実施状況を調べたところ、次のような状況が明らかになりました。

▽550点以上の検査などは、地域包括診療料などを算定していない患者では10.3%に実施されているが、地域包括診療料を算定している患者では3.9%にしか実施されていない

▽550点未満の検査などは、地域包括診療料などを算定していない患者では31.4%にしか実施されていないが、地域包括診療料を算定している患者では36.4%に実施されている

 ここから「包括評価による、検査などの実施控えは生じてない」と考えられそうです。

地域包括診療料の届出医療機関、550点未満の包括される検査なども実施しており、粗診粗療は生じていないと考えられる

地域包括診療料の届出医療機関、550点未満の包括される検査なども実施しており、粗診粗療は生じていないと考えられる

 あわせて内用薬の投与状況を見ると、7割程度の患者では変化しておらず、15%程度の患者では増加・減少しました。増減の理由は「患者の病状の変化」であり、「包括評価ゆえに薬剤の量を減らす」という状況は見られません。

 包括評価で懸念される粗診粗療は、現在のところ「生じてない」と言えそうです。

地域包括診療料の届出病院、包括される薬剤の量は変化しておらず、粗診粗療は生じていないと考えられる

地域包括診療料の届出病院、包括される薬剤の量は変化しておらず、粗診粗療は生じていないと考えられる

紹介状なしの初診患者に係る特別料金、高機能病院ほど高い

 主治医機能の評価は、「外来医療の機能分化」を進めるために導入されました。一般的な外来は診療所や中小病院が担い(これを評価するために地域包括診療料や地域包括診療加算を新設)、大病院では専門的な外来を担うことが期待されています。

 そこで大病院については、紹介率・逆紹介率が低い場合に初診料などを減算する仕組みが2012年度の診療報酬改定で導入され、14年度の前回改定でより厳格な仕組みへと見直されました。

 また、200床以上の病院では紹介状のない初診患者や、逆紹介をしても受診する再診患者から、特別の負担(選定療養費)を徴収することが認められています。

 初診患者に対する選定療養費の金額は、特定機能病院では5000円以上(39.1%)と3000-3500円(36.2%)が多くなっており、500床以上の地域医療支援病院では3000-3500点(33.7%)、2000-2500円(22.1%)、5000円以上(17.9%)、500床未満の地域医療支援病院では2000-2500円(22.2%)、3000-3500円(24.8%)、2500-3000点(20.9%)、その他の病院では1000-1500円(27.3%)、1500-2000円(19.9%)、2000-2500点(18.1%)などが多くなっています。高機能な病院ほど、選定療養費の金額も高い傾向にあります。この実態が、来年4月からの特定機能病院などにおける紹介状なし患者の特別負担義務化に反映されることになるでしょう(関連記事はこちら

高機能な病院になるほど、紹介状を持たない初診患者に対する特別料金(選定療養費)の金額が高い

高機能な病院になるほど、紹介状を持たない初診患者に対する特別料金(選定療養費)の金額が高い

 この選定療養費は「紹介状のない患者」から徴収できますが、救急患者など、やむを得ずその病院を受診した患者からの徴収は認められません。また、「健診を行った患者に診療を開始した場合」や「国の公費負担医療の受給対象者」などにも特別料金を徴収することはできませんが、健診後に診療を受けた患者の4-6割、公費負担医療受給者の2割程度から特別料金を徴収している実態も明らかになりました。健康保険法や療養担当規則などの関連法規をきちんと遵守する必要があります。

「健診後に外来受診を勧められた場合」など、特別料金を徴収できない患者からも、徴収しているケースが一部にある

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