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大病院受診、紹介状なしの定額負担など16年度から-医療保険部会で改革案まとまる

2015.1.9.(金)

 2014年度の医療保険改革に向けた厚生労働省案が、9日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会に提示されました。紹介状なしに大病院を受診した患者に新たな定額負担の導入や、保険診療と自由診療を併用しやすくする患者申出療養(仮称)の創設などが主なメニューで、政府は予算編成を待って法案の詳細を詰め、近く開かれる通常国会に提出する考えです。

15年1月9日に開催された、第85回 社会保障審議会・医療保険部会

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 改革案の柱は、主に7点に集約できます。

(1)国民健康保険(国保)の安定化

(2)高齢者医療における後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入

(3)全国健康保険協会(協会けんぽ)の国庫補助率の安定化と財政特例措置

(4)医療費適正化計画の見直し

(5)個人や保険者による予防・健康づくりの促進

(6)負担の公平化

(7)患者申出療養(仮称)の創設

16年度から患者の申し出に基づく新たな保険外併用療養を実施

 まず(7)の患者申出療養(仮称、以下略)は、患者が最先端の医療技術などを希望した場合に、安全性・有効性などを確認した上で、保険外の診療と保険診療との併用を認める新たな仕組みで、16年度から実施される模様です。

 患者申出療養には、先進的な医療技術を(1)「患者申出療養として初めて実施する場合」と(2)「患者申出療養として前例のある場合」の2ケースがあります。

困難な病気と闘う患者のために、最新の医療技術を患者が希望した場合に、安全性等を審査したうえで迅速に保険外併用を認める「患者申出療養」を16年度から実施

困難な病気と闘う患者のために、最新の医療技術を患者が希望した場合に、安全性等を審査したうえで迅速に保険外併用を認める「患者申出療養」を16年度から実施

 (1)の初めて実施する場合は、次のような流れで実施の可否が検討されます。

●患者が、かかりつけ医等の協力を得て、臨床研究中核病院や特定機能病院(臨床研究中核病院との共同研究実施が必要)に申し出る

●臨床研究中核病院等が「実施計画、安全性・有効性等のエビデンス」などを添付して、国に申請する

●国は、臨床研究中核病院等の申請から原則6週間以内に、専門家会議で安全性・有効性、実施計画の妥当性を審査し、実施の可否を判断する

 一方、(2)の「前例のある場合」は、次のような流れです。

●患者が、かかりつけ医等の協力を得て、臨床研究中核病院等や身近な医療機関に申し出る

●申し出を受けた医療機関は、患者が申し出た医療技術を実績がある臨床研究中核病院に申請する

●臨床研究中核病院は、医療技術の内容に応じて設定された「実施可能な医療機関の考え方」(今後検討)を参考に、技術を申請した医療機関の実施体制を個別に審査し、原則2週間以内に実施の可否を判断する

紹介状なしの定額負担は5千-1万円

 (6)の負担の公平化では、「紹介状なしで大病院を受診する場合等の定額負担の導入」が大きなポイントとなります。

 厚労省は外来医療の機能分化(一般の外来は診療所や中小病院が担い、大病院は主に専門・紹介外来を担当)を進めるため、「200床以上の大病院において紹介状をもたない初診患者への選定療養導入」「紹介率・逆紹介率の低い大病院における初診料等の減額(12・14年度診療報酬改定)」などの措置を取ってきましたが、「200床以上の病院で外来総患者数に占める紹介なし患者の割合は6-8割」といった具合に、機能分化はなかなか進んでいません。そこで今回、社会保障制度改革国民会議が報告書で提言していた「紹介状なしに大病院を受診する場合等の定額負担」の導入に16年度から踏み切ります。ただ、救急患者などは除外されます。

 厚労省はこれまで「初再診料等」を保険給付外にすると提案していましたが、制度設計が難しく、実質的に「選定療養の義務化」という形になりました。ただし、厚労省保険局の大島一博・総務課長は「法案にどのように記載するかは今後調整する」と述べるにとどめています。大病院では、対象患者からは必ず定額を徴収しなければなりませんので留意が必要です。

 大病院には「特定機能病院」と「500床以上の病院」が含まれる見込みです。定額負担の額をどの程度にするかについては未定で、厚労省は「5000円-1万円などが考えられる」と付言しています。16年度の実施に向け「大病院の範囲」「定額負担の額」を中央社会保険医療協議会で今後検討することになります。

外来における機能分化を進めるために、紹介状なしに大病院を受診する患者に対して、16年度から定額の別途負担徴収を義務化する

外来における機能分化を進めるために、紹介状なしに大病院を受診する患者に対して、16年度から定額の別途負担徴収を義務化する

 このほか「在宅療養患者と入院患者・若年者と高齢者の公平性等を担保するために、16年度から入院時食事療養費等において、これまでの食材費に加えて『調理費』を患者負担とする」ことや「所得水準の高い国保組合の国庫補助を引き下げる」ことが提案されていますが、詳細は今後の予算編成に向けた大臣折衝に委ねられています。

現行制度では、一般病床の入院患者等では、食材費のみ患者負担となっているが、在宅療養患者等との公平性を考慮した見直しが検討されている

現行制度では、一般病床の入院患者等では、食材費のみ患者負担となっているが、在宅療養患者等との公平性を考慮した見直しが検討されている

医療費適正化に向け、後発薬使用を促進

 (4)の医療費適正化計画は、「医療費の見通し」(必須)と「医療費適正化に向けた取り組み」(任意)を明確にするもので、都道府県による策定が08年度から義務付けられています。今回の改革では財務省などの強い意向を受け、次のような見直しが行われます。

●医療計画に合わせて、計画期間を18年度から6年間とする

●地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を計画の中に設定し、目標設定に必要な指標などを国が定める

●医療費適正化に向けた指標(特定健診・保健指導実施率、平均在院日数など)を見直すとともに、「後発医薬品の使用割合」などを新たに加える

●計画の進ちょく状況を年度ごとに評価し、実績と目標に開きがあれば原因を分析し、必要な対策を取るよう都道府県による努力義務を課す

医療計画を6年間とし、地域医療構想を策定するなどの見直しに合わせて、18年度から医療費適正化計画の内容や期間を見直す

医療計画を6年間とし、地域医療構想を策定するなどの見直しに合わせて、18年度から医療費適正化計画の内容や期間を見直す

 9日の意見交換では、医療費の「見通し」を「目標」とすることに対して都道府県側から「ペナルティを課すのか」との疑問・批判が出されましたが、厚労省保険局の渡辺由美子・医療介護連携政策課長は「地域医療計画や地域包括ケアシステムと整合のとれた医療費適正化を推進する必要がある。目標達成できない場合のペナルティなどは考えていない」と理解を求めています。

国保の財政運営は18年度から都道府県に

 このほか、(1)で「国保への財政支援を強化し、18年度から都道府県を財政運営の責任主体とする」、(2)で「健保組合や協会けんぽなどの被用者保険が負担する後期高齢者支援金の計算にあたり、加入者数だけではなく、負担能力を考慮した仕組みを15-17年度にかけて段階的に導入する」、(3)で「協会けんぽへの国庫補助16.4%を維持する(予算編成に向けた大臣折衝事項)」などの見直しが行われる見込みです。

 ただし、(1)の財政基盤強化のために(2)の見直しで生じる財源を充てることに対して、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)ら被用者保険サイドは強い反対姿勢を示しました。

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