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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

2016年度診療報酬改定の基本方針、医療保険部会が了承―社保審・医療保険部会

2015.12.3.(木)

 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、社会保障審議会の医療保険部会が2日、基本方針を了承しました。重点課題に「地域包括ケアシステムの構築」と「医療機能の分化・強化、連携」を掲げており、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向けた布石を打つとともに、いわゆる「団塊の世代」がすべて後期高齢者(75歳以上となる)となる2025年をも見据えています。

 4日には同じく社会保障審議会の医療部会が開催される予定で、そこでの議論を受けて、正式に基本方針が決定されることになります。

12月2日に開催された、「第92回 社会保障審議会 医療保険部会」

12月2日に開催された、「第92回 社会保障審議会 医療保険部会」

地域包括ケアと医療機能の分化・強化、連携が重点課題に

 基本方針では、2016年度の次期診療報酬を行うに当たって次の4つの基本的視点に立つことを求め、さらに具体的な改革の方向性を例示しています。

(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携(重点課題)

(2)患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療の実現

(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点

(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める

 これまでお伝えしてきた内容(関連記事はこちらこちら)から大幅な変更はありませんが、ポイントを絞っておさらいしてみましょう。

 (1)では「急性期、回復期、慢性期などの状態に応じた質の高い医療」を提供するための体制を整備するとともに、必要に応じて介護サービスと連携・協働することで、切れ目のない医療・介護提供体制を構築するよう求めています。

 具体例としては、▽医療機能や患者の状態に応じた評価▽チーム医療の推進▽勤務環境の改善▽かかりつけ医などの機能の評価▽かかりつけ薬剤師・薬局の評価▽多職種連携の取り組みなどの強化▽効果的・効率的で質の高い在宅医療・訪問看護の確保▽外来医療の機能分化―などが示されました。

第三者評価、アウトカム評価を通じて医療の質向上を目指す

 また(2)では、病気を治すだけではなく、「生活の質」を高める治し・支える医療の実現を求めており、その一環として「第三者による評価」「アウトカム評価」を進めることを指示しています。

 具体的な方向性として、▽かかりつけ医などの機能の評価(再掲)▽医療に関するデータを取集・利活用した実態やエビデンスに基づく評価▽アウトカムにも着目した質の高いリハビリの評価―などを掲げています。

 

 (3)の「重点対応分野」としては、▽緩和ケアを含むがん医療▽認知症対策▽地域移行・地域生活支援の充実を含む精神医療▽難病対策▽小児、周産期医療▽救急医療―などが打ち出されました。いずれも、早急かつ継続した対応が必要な分野であり、今後の診療報酬改定でも重点的な対応が行われると予想されます。

白川委員、基本方針策定の手続き面で苦言

 社会保障費が国家財政を圧迫する中では、医療分野でも効率化・適正化が避けられません。診療報酬において「効率化」や「適正化」は、「点数の引き下げ」を意味することが多いようですが、それに止まらず「診療報酬を引き上げたり、新設することで、効率的かつ適正な医療提供を誘導する」というケースもあることには留意が必要です。

 後者の例として、「後発医薬品使用を進めるための評価(後発医薬品調剤体制加算や、DPCの後発医薬品係数など)」が挙げられます。

 次期改定でなすべき具体例として、▽後発品の使用促進▽後発品価格の適正化▽長期収載医薬品から後発品への置き換え推進(いわゆるZ2の見直し)▽残薬減少に向けた取り組み▽調剤報酬の見直し▽重症化予防▽薬価・材料価格の実勢価格に基づいた評価▽費用対効果評価の試行導入―などが示されました。

 ところで、具体例の中の「残薬減少に向けた取り組み」については、より具体的に▽重複投薬▽不適切な多剤投与▽不適切な長期投薬―の削減が例示されています。このうち「長期投薬の削減」という項目について、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)から「医療保険部会や中央社会保険医療協議会では議題に上がった記憶がない。基本方針に盛り込むことに違和感を覚える」との指摘がありました。

 これは、同時並行して基本方針を議論する社会保障審議会の医療部会で、中川俊男委員(日本医師会副会長)から「残薬の原因の一つに長期処方がある。この点についての是正を基本方針に盛り込むべきである」との強い要請を受けて追記されたものです(関連記事はこちら)。

 厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長はこの点について、「患者の利便性や勤務医の負担軽減のために長期投薬を可能とした(投薬日数制限の廃止)が、適切に管理されず結果として残薬となっている。こうした点を中医協で議論している」ことを説明(関連記事はこちら)。

 また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)や松原謙二委員(日本医師会副会長)は、医療現場にある「不適切な長期処方、長期投薬の弊害」を紹介し、基本方針に盛り込むことの正当性を訴えました。

 長年、中医協委員として診療報酬論議に参加している白川委員ですから、「不適切な長期投薬・処方を是正することの必要性」については十分認識しておられますが、「議論されていない項目」が基本方針に盛り込まれるという手続き面を問題視しているようです。ただし「不適切な長期投薬の削減」との表現を削除せよとまでは求めていません。

 

 このほか細部についての注文がいくつか付きましたが、医療保険部会では基本方針を概ね了承しています。今後、医療部会(12月4日開催予定)の議論を待ち、正式に基本方針が決定します。

 

 なお、2日の医療保険部会では、▽2016年4月1日時点で精神病床に1年超入院している患者について、入院時食事療養費の引き上げは行わない(関連記事はこちら)▽治療用装具療養費検討専門委員会を新たに設置し、治療用装具の療養費の在り方を検討する―ことが了承されています。

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