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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

紹介状なしの大病院受診、病院の判断で定額負担求めないケースもあり得る―中医協総会

2015.11.18.(水)

 2016年4月から特定機能病院などを、紹介状を持たずに受診した場合に定額の特別負担が義務化されますが、救急患者やそのまま入院となった患者のほか、「医療機関の判断で受診する必要を認めた患者」について特別負担を求めないことにしてはどうか―。こういった方向が、中央社会保険医療協議会の総会で固まりつつあります。

11月18日に開催された、「第313回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月18日に開催された、「第313回 中央社会保険医療協議会 総会」

外来機能分化のため、紹介状なしの大病院受診は特別負担を義務化

 外来医療における機能分化(一般外来は中小病院や診療所で、大病院は専門外来を行う)の1方策として、2016年4月から「特定機能病院などを紹介状なしに受診する患者や、逆紹介しても受診する患者について、特別の定額負担の徴収を義務化する」ことになっています(関連記事はこちら)。

2016年度から、紹介状なしに大病院外来を受診した場合の定額負担を創設。詳細は療養担当規則で規定

2016年度から、紹介状なしに大病院外来を受診した場合の定額負担を創設。詳細は療養担当規則で規定

 定額負担の金額をいくらにするのか、病院の範囲をどう考えるのか、救急患者などからも定額負担を徴収するのか、など細部の議論が中医協総会で行われています。

 18日の中医協総会には、かなり具体的な内容が厚生労働省から示されました。ポイントを絞って見ていきましょう。

「特定機能病院」と「500床以上の地域医療支援病院」が対象

 まず、病院の範囲は「特定機能病院」と「500床以上の地域医療支援病院」となる見込みです。

 ただし、「500床」をどう捉えるのか、例えば「精神病床や療養病床の多い病院でも定額負担をとるのか」といった細部については、引き続き検討が行われます。

 ところで紹介状のない初診患者については、現在、特定機能病院と500床以上の地域医療支援病院のすべてで「選定療養費」の徴収が行われています。一方、逆紹介をしても受診してしまう再診患者から選定療養費を徴収している病院は、特定機能病院では17病院、500床以上の地域医療支援病院では25病院に限定されています。

 2016年4月からは、後者の「逆紹介しても受診する再診患者」からも原則として必ず特別負担を徴収しなければならないためトラブルの発生が予想されます。今から「どのような説明を行うのか」「患者が理解しなかった場合にどういった対応をとればよいのか」などを院内で準備しておく必要があります。

現在、特定機能病院、500床以上の地域医療支援病院のすべてで「紹介状なし初診時の選定療養費」を徴収しているが、「逆紹介しても来院する再診患者」からの徴収は少数派である

現在、特定機能病院、500床以上の地域医療支援病院のすべてで「紹介状なし初診時の選定療養費」を徴収しているが、「逆紹介しても来院する再診患者」からの徴収は少数派である

特別負担の額、健保連は「5000円程度」としたい考え

 定額負担の金額については「最低金額を国で定める」方針が固まったと言えますが、金額について、厚労省は初診については「3000円程度」「5000円程度」「1万円程度」といった目安を示すにとどまり、具体案は示していません。

 しかし支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「5000円程度が妥当ではないか」との考えを示しました。これは、「診療所から紹介状を持って受診する患者では、実質的に4350円の負担をしている」ことや、「5000円以上の定額負担で、軽症の場合に大病院受診を控える傾向がある」との研究結果を参考にしたものです。

紹介状により大病院を受診する患者は、診療所において4350円程度の自己負担をしている

紹介状により大病院を受診する患者は、診療所において4350円程度の自己負担をしている

定額負担が5000円以上になると、軽症の場合に大病院受診を控える傾向にあることが研究から分かっている

定額負担が5000円以上になると、軽症の場合に大病院受診を控える傾向にあることが研究から分かっている

 一方、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、具体的な金額にこそ言及しなかったものの「『多少のお金を払えば大病院を受診してもよい』と考えてもらっては困る。簡単に支払えない金額にすべき」と述べています。

 

 また再診患者についても、厚労省は「1000円程度」「初診の額の4分の1」「初診の額の2分の1」といった目安を示すにとどめています。

 この点について幸野委員は「かなり高めに設定する必要がある」と指摘。一方、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「初診と再診で極端な金額の差を付けるべきではない」との考えを示しています。

 具体的な金額については、「歯科の病院をどうするのか」といった点も含めて、更なる検討・調整が続けられます。

病院が「受診が必要」と判断すれば、定額負担を徴収せずとも良い

 紹介状を持たない患者であっても、その大病院を受診することがやむを得ない場合には特別料金の徴収は好ましくありません。厚労省は特別負担を求めない患者・ケースについて次のように考えてはどうかと提案しました。

▽自施設の他の診療科を受診中の患者

▽医科と歯科の間で院内紹介した患者

▽健診結果により受診指示があった患者

▽救急医療事業、周産期事業などにおける休日夜間受診患者

▽外来受診後そのまま入院となった患者

▽地域に、ほかに当該診療科を標榜する診療所などがなく、大病院が外来診療を実質的に担っているような診療科を受診する患者

▽治験協力者である患者

▽災害により被害を受けた患者

▽労働災害、公務災害、交通事故、自費診療の患者

▽その他、医療機関の判断により受診する必要を認めた患者

 これらに該当するか否かは、各医療機関で判断することになります。すると、恣意的に運用される恐れ(特に「その他、医療機関の判断により受診する必要を認めた患者」など)がないのか気になります。この点について厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「基本的には、どのような理由で特別負担を徴収しなかったのか確認できるような仕組みが必要だと考えている」と説明しました。どのような記録を求めるのかなどは、今後、詰められることになります。

 

 なお、特別負担を課した後、「初診料や外来診療料は減額するのか」「紹介率・逆紹介率の低い病院における初診料などの減額措置は維持するのか」という点が気になりますが、中医協では「現状を維持する」との方向で議論が進んでいます。

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