Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

本体は医科0.56、歯科0.61、調剤0.17のプラス改定だが、調剤は実質マイナス―2016年度診療報酬改定率

2015.12.21.(月)

 2016年度の次期診療報酬改定における改定率が21日、塩崎恭久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣との折衝で正式に決定しました。

 診療報酬本体は0.49%のプラス改定ですが、これに薬価のマイナス1.22%、材料価格のマイナス0.11%を加味すると、ネットでは0.84%のマイナス改定。さらに、医薬品の市場拡大再算定(通常分)のマイナス0.19%を加味すると、ネットで1.03%のマイナス改定となります。

 また本体については医科0.56%、歯科0.61%、調剤0.17%のプラス改定ですが、大型門前薬局の調剤報酬適正化を加味すると、調剤については事実上のマイナス改定となります。

12月21日の麻生太郎財務大臣との折衝後に、2016年度の診療報酬改定率について説明する塩崎恭久厚生労働大臣

12月21日の麻生太郎財務大臣との折衝後に、2016年度の診療報酬改定率について説明する塩崎恭久厚生労働大臣

「前回改定、政権交代前より手厚い0.49%のプラス改定」と塩崎厚労相

 まず診療報酬本体については、プラス0.49%となることが正式に決定しました。21日の大臣折衝後に会見に臨んだ塩崎厚労相は、「前回の2014年度改定では消費増税分を含めてプラス0.1%、政権交代前はプラス0.38%であったが、それらよりも手厚いものである」と説明した上で、「厳しい財政状況の中で、より良い医療の実現に向けて財源を確保した。大きな成果であったと思う」と強調しています。

 プラス0.49%の内訳は、医科がプラス0.56%、歯科がプラス0.61%、調剤がプラス0.17%で、従前の「医科:歯科:調剤の比率=1:1.1:0.3」が維持された格好です。

 これを金額ベースにすると、本体部分全体(プラス0.49%)は国費が500億円程度増加することを意味します(医療費ベースで2100億円程度)。

 また医療費ベースでの各科の内訳は、医科で1800億円、歯科で200億円、調剤で100億円と説明されています。この4分の1が国費に相当すると考えると、医科450億円、歯科で50億円、調剤で25億円程度となります(端数がある)。

 ところで調剤については、後述するように「大型門前薬局の報酬を適正化する」方針が示され(関連記事はこちら)、上記の数字とは別に国費ベースで40億円程度の適正化が行われます。これを勘案すると、調剤については「事実上の本体マイナス改定」になっていると考えられます。

薬価は1.22%、材料価格は0.11%の引き下げ、ネットではマイナスに

 薬価と材料価格については、市場実勢価格との乖離を埋めるなどの適正化が行われます。薬価ではマイナス1.22%、材料価格ではマイナス0.11%の引き下げが行われます。

 したがって、前述の診療報酬本体(プラス0.49%)と薬価(マイナス1.22)、材料価格(マイナス0.11%)を合わせると、2016年度の診療報酬改定率はネット(全体)で0.84%のマイナス改定と考えることができます。

 ただし薬価については、マイナス1.22%とは別枠の適正化が行われます。具体的には、▽新規収載された後発医薬品の価格引き下げ▽後発品への置き換え率を踏まえた長期収載の特例的引き下げ(いわゆるZ2)の置き換え率気の基準見直し▽通常の市場拡大再算定▽年間販売額が極めて大きな医薬品に対応する特例引き下げ―で(関連記事はこちら)、これらにより国費ベースで500億円程度の国庫負担減が図られます。

 このうち「通常の市場拡大再算定」は、これまでの診療報酬改定では「薬価引き下げ分(今回は前述のマイナス1.22%)に含まれていました。過去の診療報酬改定率との比較を行うために、この部分(金額にすると国費ベースで280億円、率にするとマイナス0.19%)を考慮すると、ネット(全体)の改定率はマイナス1.03%となります(本体のプラス0.49、薬価のマイナス1.22、材料価格のマイナス0.11、通常の市場拡大再算定のマイナス0.19を合算)。

 さらに改定率に含まれない適正化分として、塩崎厚労相は次の点を挙げました。診療報酬改定率の説明は、回を追うごとに複雑になってきています。

▽大型の門前薬局などに対する評価の適正化(調剤報酬の適正化、前述):国費ベースでマイナス40億円程度(関連記事はこちら

▽経腸栄養用製品に係る給付の適正化(入院時食事療養費の適正化):国費ベースでマイナス40億円程度(関連記事はこちら

▽湿布薬の1処方当たりの枚数制限や、費用対効果の低下のした歯科材料の適正化:国費ベースでマイナス30億円程度(関連記事はこちら

 「大型門前薬局の調剤報酬適正化」と「湿布薬などの適正化」を加味すると、マイナス1.03%よりも厳しいものと考えることもできそうです。

2016年度予算案、社会保障費の増額5000億円に圧縮

 ところで、2016年度予算編成については、財政健全化に向けた集中改革期間の初年度であり、社会保障費の増額を前年度当初予算と比較して5000億円増に抑える必要があります。一方、厚労省は8月の概算要求時点で、前年度比6700億円増を見込んでおり、その差1700億円の圧縮を実現する必要がありました(関連記事はこちら)。

 この点について厚労省保険局総務課の渡辺由美子課長は、次のように説明しています。

●圧縮分(国費を2200億円程度圧縮する、内訳は次のとおり)

▽薬価の引き下げ:マイナス1200億円程度

▽材料価格の引き下げ:マイナス100億円程度

▽医薬品価格の適正化(前述の新規後発品価格の引き下げや市場拡大再算定など):マイナス500億円

▽大型門前薬局の調剤報酬適正化:マイナス40億円程度

▽経腸栄養用製品に係る給付の適正化:マイナス40億円程度

▽湿布薬の給付上限など:マイナス30億円程度

▽協会けんぽの超過準備金分の国庫補助特例減額:マイナス200億円程度

▽所得の高い国保組合における国庫補助の適正化:マイナス20億円程度

●増額分(国費が増加する)

▽診療報酬本体の引き上げ:プラス500億円

 この結果、6700億円から1700億円を圧縮でき(500億円-2200億円)、2016年度予算編成において「社会保障費の増額を前年度比プラス5000億円に抑えることができた」と塩崎厚労相は強調しています。

【関連記事】
診療側はプラス、支払側はマイナスを要望、両論併記の意見書を塩崎厚労相に提出―中医協総会
2016年度診療報酬改定の基本方針が決定、医療部会でも了承―社保審・医療部会
健保連や連合など、中医協の支払側委員がマイナス改定を塩崎厚労相に申し入れ
16年度の社会保障費は6700億円増、診療報酬の大幅マイナス改定の可能性も―厚労省16年度予算概算要求
2016年度薬価制度改革の大枠固まる、後発品の価格は更なる引き下げ―薬価専門部会
調剤報酬や薬局の構造基準を抜本的に改めよ―規制改革会議の第3次答申
かかりつけ薬剤師の業務を包括的に評価する調剤版の「地域包括診療料」を新設―中医協総会
湿布薬の処方量に上限設置へ、糖尿病患者の透析予防評価を充実―中医協総会

診療報酬改定セミナー2024