日本病院会の堺会長「GHCと連携して出来高病院の経営を支援する」と発表
2016.3.28.(月)
2016年度における日本病院会の重要事業の1つである「情報収集・分析・共有化事業の推進」「医療支援システムの構築」「シンクタンク機能の整備」の一環として、GHCと連携して「出来高病院の経営支援」を行う―。
日本病院会の堺常雄会長は、28日に開いた定例記者会見でこのような方針を強調しました。
また、新専門医制度については「延期ありきではなく、地域医療偏在の是正に向けて最大限の努力を図っていくべきである」との考えを述べています。
DPC病院では、厚生労働省に提出するデータなどに基づいたさまざまな分析が行われています。GHCでも、コンサルティングノウハウをベースにした次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」を開発し、多くのDPC病院の経営を支援しています。
この点、堺会長は「出来高病院でもレセプトデータなどをベースに経営を分析し、政策提言につなげたい」との考えの下、今般、GHCと連携して出来高算定病院経営支援事業「JHAstis」(日本病院会戦略情報システム:Japan Hospital Association Strategy Tactics Information System)を立ち上げたことを発表しました(関連記事はこちら)。
これは、経営分析レポートの配信を軸としたもので、▽主要経営指標分析・診療科別分析・加算分析・マーケット分析を毎月および4か月に一度のレポートで配信する▽診療報酬改定などにいち早く対応する臨時レポートを配信する▽他院とのベンチマーク分析を可能とする▽経営インパクトの大きな加算を対象とした、算定率向上のためのノウハウを提供する―といった内容で、初年度は無料でサービスを受けられます。
出来高算定の日病会員1300病院が対象で、すでに100病院近い申し込みがあります。参加病院には既に2016年度の診療報酬改定の情報と、それに伴う経営分析情報が提供されており、堺会長は「2016年度改定はたいへん厳しい内容だが、出来高算定病院がどのように対応すればよいのかの一助になる」と説明しています。
28日の定例記者会見では、新専門医制度についても堺会長からコメントがありました。新専門医制度は、「より質の高い医療提供」をめざし、中立・公正な第三者機関「日本専門医機構」が、専門医の認定と養成プログラムの認証などを統一的な基準で行うものです。
来年(2017年)4月から新専門医の養成が始まる予定ですが、養成プログラムについて医療関係者からは「地域の医師偏在を助長するのではないか」といった指摘が強く出されています。このため、厚生労働省は社会保障審議会・医療部会の下に「専門医養成の在り方に関する専門委員会」を設置し、偏在の是正に向けた取り組みなどを検討することとしています(関連記事はこちら)。
専門委員会の初会合は25日に開かれましたが(関連記事はこちら)、一部委員からは「延期すべき」との指摘もなされています。こうした動きに対し、堺会長は「『延期ありき』ではなく、関係者がより良い制度の構築・運用に向けて最大限努力する必要がある」と強調し、日病は「専門委員会の議論と日本専門医機構の取り組みを見守る」姿勢を改めて述べました(関連記事はこちら)。
一方、厚労省に対しては「これまではプロフェッショナルオートノミーを重視してもらっている」とした上で、今後は「最大限のことをしてほしい」と要望しています。
たとえば、専門委員会では、都道府県に関係者からなる協議会を設け、養成プログラムのチェックや改善勧告を行うことで、地域の医師偏在が進むことを防止する方策が厚労省から報告されました。しかし、堺会長は「都道府県で温度差が出る可能性が高い」と指摘。「協議会にお任せではなく、温度差が出ていないかをチェックし、是正を促すような仕組みを明確にしてほしい」と訴えています。
堺会長は、「災害医療を国家として統合する」ことの重要性を説き、提言を行うことも発表しました。すでに日病では2月27日に提言をまとめていますが、今後、四病院団体協議会や日本医師会とも連携をとった提言にしていきたい考えです。
具体的には「災害医療に関する知見を集積し、その学術的根拠を背景として災害医療の国家的統合を実現するために、『常設の研究機構』を設立する」よう求めています。
この研究機構では、▽行政、日本赤十字社、自衛隊、医師会、病院などが設置する災害医療チームの全体的かつ戦略的な運用▽災害予想における医学的観点からのハザードマップ▽予測される災害医療に対する医療介入の効果目標▽地下鉄サリン事件など、国際的に見て学術的意義の大きな事象に対しる記録の管理・保存▽テロル被害者の治療に用いる医薬品・医療資機材の情報把握や法的整備▽医療者の院外活動に関する法的整備・環境整備―などについて研究し、対策を立案することが求められます。
堺会長は、特に東日本大震災と津波被害、昨今、欧州で頻発するテロルに着目、災害医療体制を国家規模で整備することの緊急性・必要性を強調しています。
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