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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

認知症疾患医療センター、「量的整備」段階から「圏域における連携の深化」の段階に進んできている—全日病

2024.4.24.(水)

認知症疾患医療センターは、「量的整備」は完了しつつあり、「圏域における連携を深化させる」段階に進んできている—。

地域の状況を踏まえ、「実態的な機能」に基づいた認知症疾患医療センター整備等を進めるため、都道府県、指定都市において、実態的な機能を踏まえた「評価」と、効果的な「協議会の開催」などが期待される—。

全日本病院協会が先頃公表した「認知症の医療提供体制に関する調査研究」報告書から、こういった状況が見えてきました(全日病のサイトはこちら(全文)こちら(サマリー))。

「実態的な機能」に基づいた認知症疾患医療センター整備等を進めよ

認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達し、さらにその後も増加が続くと見込まれます。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、本年(2023年)には認知症基本法の施行が予定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

認知症対策は、医療・介護・福祉の各施策が連携し、総合的に進めることが極めて重要であり、2024年度診療報酬・介護報酬改定でも様々な手当てがなされています(関連記事はこちら)。

また認知症では、早期に的確な鑑別診断を行い、適切な治療に結びつけることが極めて重要です。この点を重視し、国は鑑別診断・医療相談・適切な医療提供を行う「認知症疾患医療センター」の整備が進められ、▼都道府県における認知症診断・医療提供の要となる「基幹型」(総合病院や大学病院)▼2次医療圏における認知症診断・医療提供を行う「地域型」(病院)と「連携型」(診療所など)—の整備が行われてきています(関連記事はこちら)。

今般、全日病では、▼認知症疾患医療セン ターの課題を把握し、求められる機能を再確認する▼認知症疾患医療センターの、それぞれの地域の実情に応じた効果的な運用と必要な対応等について検討する—ことを目的に、都道府県・指定都市や認知症疾患医療センターを対象にした調査実施。その結果、次のような状況が明らかになりました。

【都道府県・政令指定都市を対象とした調査結果】
▽2次医療圏ごとの認知症疾患医療センターの設置状況
→都道府県の84.8%、指定都市の94.7%で「2次医療圏域ごとの設置あり」
→都道府県の78.3%、指定都市の73.7%で「管内においてセンターが充足している」と考えているが、都道府県の15.2%、指定都市の5.3%で「不足している」と考えている
→センター未設置であっても、71.4%の自治体が「別の医療機関や地域連携の体制があるため、特に困ることはない」と考えている

認知症疾患医療センターの設置状況(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査1 240411)

認知症疾患医療センターの充足状況(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査2 240411)

認知症疾患医療センター未設置の問題点活動圏域の課題(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査3 240411)



▽事業評価の方法
→都道府県では「各センターの事業実績報告書の確認」が最も多く(97.8%)、次いで「各センターの事業実績報告書の都道府県・指定都 市単位での集計」(65.2%)が多い
→「集計したデータの分析・考察」、「センターへの個別ヒアリング」などは3割以下の実施にとどまっている。

事業評価方法(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査4 240411)



【認知症疾患医療センターを対象とした調査結果】
▽地域の認知症疾患医療連携協議会等への参加状況
→「2次医療圏単位の協議会等」が最も多く(65.4)、「都道府県単位の協議会等」と「市区町村単位の協議会等」がそれぞれ54.2%であった

協議会等への参加状況(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査5 240411)



▽活動圏域における各機能の充足状況
→「とても充足している」割合が高い項目として、▼鑑別診断▼認知症に対する外来診療▼BPSDに対する外来診療—など
→「やや不足している」「とても不足している」割合が高い項目として、▼当事者のピアサポート・交流会▼困難ケースのアウトリーチ支援▼身体合併症に対する入院医療▼通い・社会参加の場—など

活動圏域における機能の充足状況(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査6 240411)



▽受診にあたり特に連携の必要性を感じる関係機関等
→かかりつけ医:88.1%(最多)
→地域包括支援センター:83.1%
→ケアマネジャー:68.8%

→連携型では「BPSDや身体合併症に対応可能な医療機関」、精神科病院では「ケアマネジャー」との連携の必要性を強く感じている割合が高い

受診にあたっての連携の必要性(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査7 240411)



▽受診後、特に連携の必要性を感じる関係機関等
→ケアマネジャー:79.2%(最多)
→地域包括支援センター:77.7%
→かかりつけ医:75.4%

→連携型では「BPSDや身体合併症に対応可能な医療機関」、精神科病院で「ケアマネジャー」、一般病院では「BPSDや身体合併症に対応可能な医療機関」との連携の必要性を強く感じている割合が高い

受診後の連携の必要性(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査8 240411)



▽活動圏域における課題
→小規模な圏域では「BPSDに対応可能な専門医療機関がない、少ない」が課題となっている
→大規模な圏域では、「同じ圏域の中でも、地域によって関係機関と連携状況に差がある」ことが課題となっている

活動圏域の課題(全日病・認知症の医療提供体制に関する調査9 240411)



こうした結果を踏まえて全日病では、次のように考察し、今後の認知症疾患医療センターの機能充実等に向けた提言等を行っています。

▽認知症疾患医療センターは、「量的な整備」段階から「圏域における連携の深化」の段階に進んできている

▽地域の状況を踏まえた認知症医療の提供体制およびセンターの機能の整備が必要である
→「実態的な機能」に基づいた整理の必要性が指摘された

▽認知症疾患医療センターの実態的な機能として6つの機能((1)鑑別診断(2)診断後のつなぎ(3)センターでの外来診療(4)重度者(BPSD)対応(5)身体合併症への対応(6)関係者への啓発・研究・連携支援—)があることが明らかになった

▽都道府県、指定都市には、実態的な機能を踏まえた「評価」と、効果的な「協議会の開催」などを通じた関係者への働きかけの実施が求められる



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