【2024年度介護報酬改定5】認知症の行動・心理症状(BPSD)予防にチームで取り組む施設等評価する【認知症チームケア推進加算】新設
2024.1.23.(火)
Gem Medで報じているとおり、1月22日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、2024年度介護報酬改定内容が了承されました。パブリックコメントを募集し(1か月程度)、その結果も踏まえて3月中旬に告示公布・関連通知等発出がなされます。
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改定内容は膨大なため、何回かに分けて見ていきます。本稿では「認知症対応力の向上」に焦点を合わせます。
▽訪問看護に関する記事はこちら
▽居宅介護支援(ケアマネジメント)に関する記事はこちら
▽答申に向けた介護給付費分科会論議に関する記事はこちら
▽介護従事者の処遇改善に関する記事はこちら
目次
認知症の行動・心理症状(BPSD)発生予防にチームで取り組む介護施設などに新加算
認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達し、さらにその後も増加が続くと見込まれます。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、本年(2023年)には認知症基本法の施行が予定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。
認知症対策は、医療・介護・福祉の各施策が連携し、総合的に進めることが極めて重要であり、2024年度介護報酬改定でも様々な手当てがなされます。
まず、別稿でも報じたとおり、認知症対応力向上の一環として【認知症チームケア推進加算】が新設されます(関連記事はこちら)。
(予防)認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院において、認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、あるいは出現時に早期に対応するために「スタッフがチームを組んで対応する」ことを評価するもので、次のような要件設定がなされます。
【認知症チームケア推進加算(I)】(1か月につき150単位)
(1)事業所・施設における利用者・入所者の総数のうち、「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」の占める割合が2分の1以上
(2)「行動・心理症状の予防・出現時の早期対応に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修」を修了している者、または「認知症介護に係る専門的な研修」および「認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修」を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる行動・心理症状に対応するチームを組む
(3)対象者個別に行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施
(4)行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、行動・心理症状の有無・程度の定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を実施
【認知症チームケア推進加算(II)】(1か月につき120単位)
▼上記(1)、(3)、(4)をクリア
▼「行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修」修了者の1名以上配置、かつ複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組む
訪問サービスの【認知症専門ケア加算】、算定の裾野を広げて認知症対応力を強化
また、訪問介護、訪問入浴介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護の【認知症専門ケア加算】について、認知症高齢者の重症化緩和や日常生活自立度IIの者への専門的ケアを行うことを評価する観点から「利用者の受け入れに関する要件」が見直されます(関連記事はこちら)。要件見直しで算定の裾野が広がると期待され、より多くの事業所で加算取得→認知症利用者への適切なケア実施が行われることに期待が集まります。
【認知症専門ケア加算(I)】(1日につき3単位、ただし定期巡回・随時対応型訪問介護看護では1か月につき90単位、単位数には変更なし)
▽認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱ」以上の者が利用者の50%以上(現在は自立度「III」以上の者が50%以上)
▽認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度II以上の者が20人未満の場合は「1人」以上、20人以上の場合は「1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人」以上配置する(現在は計算のベースが自立度「III」以上の者)
▽認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱ」以上の者に対し専門的な認知症ケアを実施する(現在は自立度「III」以上の者が対象)
▽当該事業所の従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達、技術的指導に係る会議を定期的に開催する
【認知症専門ケア加算(II)】(1日につき4単位、ただし定期巡回・随時対応型訪問介護看護では1か月につき120単位、単位数には変更なし)
▽【加算(I)】の要件である▼認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度II以上の者が20人未満の場合は「1人」以上、20人以上の場合は「1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人」以上配置する▼当該事業所の従業者に対し認知症ケアに関する留意事項の伝達、技術的指導に係る会議を定期的に開催する—ことを満たす
▽(新設)認知症高齢者の日常生活自立度III上の者が利用者の20%以上
▽認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対し専門的な認知症ケアを実施する
▽認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施する
▽介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施または実施する予定である
有用性エビデンス踏まえ、訪問リハビリに【認知症短期集中リハビリ実施加算】を新設
他方、訪問リハビリに【認知症短期集中リハビリテーション実施加算】(1週間に2日まで、1日につき240単位)が新設されます。
訪問での認知症リハビリの有用性エビデンスを踏まえ、認知症リハビリ推進の観点から「認知症に対して認知機能や生活環境等を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力を最大限に活かしながら生活機能改善を図る」リハビリの実施を評価するものです(関連記事はこちら)。
本加算の算定要件は次のように設定されます。
【対象利用者】
→「認知症である」と医師が判断し、リハビリテによって生活機能の改善が見込まれると判断された者
【算定要件】
→医師、または医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、対象利用者の退院・退所日、または訪問開始日から3か月以内の期間に、認知症リハビリを集中的に行う
詳細は今後の通知等で明らかにされていきます。
通所介護の【認知症加算】、認知症利用者割合要件を緩和するとともに、対応力強化目指す
さらに、(地域密着型)通所介護の【認知症加算】について、より適切なケアを実施するために次のような要件の見直しが行われます(関連記事はこちら)。認知症利用者割合の軽減(要件緩和)を図り「算定の裾野を広げる」と同時に、スタッフ全体での「認知症対応力の向上」を図るものです。
▽通常の人員基準に加え、看護職員または介護職員を「常勤換算2名以上」確保する
▽事業所における前年度(または算定日の属する月の前3か月間)の利用者総数のうち15%以上が「日常生活に支障を来すおそれのある症状、または行動が認められることから介護を必要とする認知症者」である
▽(地域密着型)通所介護を行う時間帯を通じて、専ら通所介護提供に当たる認知症介護の指導に係る専門的な研修、認知症介護に係る専門的な研修または認知症介護に係る実践的な研修等を修了した者を1名以上配置する
▽当該事業所の従業者に対する認知症ケアに関する事例の検討や技術的指導に係る会議を定期的に開催する
小多機・看多機の【認知症加算】に、より充実した認知症ケア行う上位区分を新設
また、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護の【認知症加算】について、「より充実した認知症ケアを行う」事業所を評価する区分(上位区分)の新設などが行われます(関連記事はこちら)。小多機などでの認知症対応力がさらに向上することに期待が集まります。
【加算I】(新設、1か月あたり920単位)
(要件)
▽認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者が20人未満の場合は「1人」以上、20人以上の場合は「1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人」以上配置する
▽認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対し専門的な認知症ケアを実施する
▽当該事業所の従業者に対し、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催する
▽認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施する
▽介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施または実施を予定する
【加算II】(新設、1か月あたり890単位)
(要件)
▽認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者が20人未満の場合は「1人」以上、20人以上の場合は「1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人」以上配置する
▽認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対し専門的な認知症ケアを実施する
▽当該事業所の従業者に対し、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催する
【加算III】(現行の加算Iから移行、1か月あたり800単位から「760単位」に引き下げ)
(要件)
▽認知症高齢者の日常生活自立度III以上の者に対し、(看護)小規模多機能型居宅介護を行う
【加算IV】(現行の加算IIから移行、1か月あたり500単位から「460単位」に引き下げ)
(要件)
▽要介護2以上で、認知症高齢者の日常生活自立度IIに該当する者に対し、(看護)小規模多機能型居宅介護を行う
老健施設の【認知症短期集中リハビリ実施加算】、入所者宅訪問などを求める新区分設ける
他方、介護老人保健施設の【認知症短期集中リハビリテーション実施加算】について、区分化を行います。「入所者の居宅を訪問し生活環境を把握する」ことを新たに評価するものです(関連記事はこちら)
【加算I】(新設、1か月あたり240単位)
(要件)
(1)リハビリを担当する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を適切に配置する
(2)リハビリを行うに当たり、入所者数が、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士数に対し適切である
(3)入所者が退所後生活する居宅または社会福祉施設等を訪問し、当該訪問により把握した生活環境を踏まえたリハビリ計画を作成する
【加算II】(現行から変更、1か月あたり「240単位」から「120単位」に引き下げ)
(要件)
▽上記、加算Iの(1)(2)を満たす
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