「保険診療からの退場」命じられる医療機関・医師等が23→24年度に増加、不正請求等による診療報酬返還額も増加―2024年度指導・監査
2026.2.2.(月)
2024年度に個別指導を受けた保険医療機関等は前年度から70.4%増の2494となった。コロナ感染症収束に伴い指導件数が増加している―。
一方、重大違反が疑われ監査を受けた保険医療機関等は▼医科:20件▼歯科:14件▼薬局:ゼロ件―の合計34件で、前年度から26.1%減少した―。
ただし、監査の結果、保険指定取り消し処分などを受けた医療機関等は23件(前年度から2件増)、医師等は18人(同4人増)となり、「保険診療からの退場」を命じられる医療機関・医師等が、23年度から24年度に増加している―。
なお、監査等の結果、不正請求等が見つかり返還された診療報酬は合計で48億5333万円(前年度から2億2995万円増)となっている―。
こうした状況が、1月29日に厚生労働省が発表した2024年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちら(2023年度)とこちら(2022年度)とこちら(21年度)とこちら(20年度)とこちら(19年度)とこちら(18年度)とこちら(17年度)とこちら(16年度)とこちら(15年度)とこちら(14年度)とこちら(13年度))。
コロナ感染症収束に伴い指導件数が増加、2494件の医療機関等に個別指導実施
保険証(被保険者証)やマイナンバーカードを提示して医療を受ける場合、我々患者は年齢・収入により、かかった医療費の1-3割を負担するのみで済みます。残りの9-7割は他者(医療保険者や国、自治体)が負担しています(さらに高額療養費による月額の医療費負担上限などもある)。
このように保険診療は、▼公費(税金)▼保険料▼患者の一部負担―の財源を組み合わせて成り立っており、我々国民(医療保険の加入者)は「ケガや病気の際に、普段から皆が納めたお金」の支援により、低廉な負担(1―3割負担)で良質な医療を受けられます。したがって財源(医療費)の配分は「適正」に行われなければなりません。
この適正配分のためのルール(「診療 → レセプト請求 → 支払い」に関するルール)が健康保険法、療養担当規則、診療報酬点数表などで厳格に定められているのです。このルールに従わない保険医療機関や保険医は、「皆が納めたお金(医療費)を不正に受給している」こととなりペナルティが科されます。最も重いペナルティとしては保険指定の取り消し、つまり「保険診療からの退場命令」となっています。
厚労省は、保険医療機関等がこうしたルールを遵守しているかどうかを定期的に確認し、違反などが疑われる場合には、指導や監査を行っています。
「指導」には次の3種類があります。
(1)集団指導:新規に保険指定を受けた医療機関や医師などを対象に、保険ルールを説明する講習会
(2)個別指導:違反などが疑われる医療機関を呼び出し、面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する(新規に保険指定を受けた医療機関を対象とする「新規個別指導」もある)
(3)集団的個別指導:保険請求金額が高額な医療機関を一定の場所に集め、簡便な面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する
昨年度(2024年度)に(2)の個別指導(新規個別指導を除く、以下同)を受けた保険医療機関等は2494件で、前年度から1030件・70.4%の増加となりました。コロナ感染症流行時には感染拡大防止のために十分な指導等を行うことが困難でしたが、感染症の収束に伴って指導等の件数が増えてきている状況が伺えます。
内訳は、▼医科:894件(前年度比369件・70.3%増)▼歯科:791512件(同279件・54.5%減)▼薬局:809件(同382件・89.5%増)―となっています。
また、個別指導を受けた保険医等は6152人で、前年度から1727人・39.0%増加しています。内訳は、▼医師:3193人(前年度比419人・15.1%増)▼歯科医師:1682人(同692人・69.9%増)▼薬剤師:1227人(同566人・85.6%増)―となりました。
一方、集団的個別指導は、2020年度にはコロナ感染症拡大を避けるために「ゼロ件」となっていましたが、21年度から感染対策を十分に行ったうえで再開。24年度には、全体で1万5506件(前年度に比べて4938件・46.7%増)で、内訳は▼医科:5838件(同2417件・70.7%増)▼歯科:5029件(同1254件・33.2%増)▼薬局:4639件(同867件・23.0%増)―という状況です。

2024年度における指導の状況(2024年度指導・監査1 260129)
「保険診療からの退場」を明示られる医療機関・医師等が、23年度→24年度に増加
著しいルール違反が疑われる場合には「監査」によって事実関係が調査されます。その中でルール違反が確認されれば、違反の程度に応じて「保険指定取消」「戒告」「注意」のいずれかの処分が行われます。
昨年度(2024年度)に監査を受けた保険医療機関等は34件で、前年度に比べて12件・26.1%減となりました。内訳は、▼医科:20件(前年度比2件・9.1%減)▼歯科:14件(同8件・36.4%減)▼薬局:ゼロ件(同2件・100.0%減)―となっています。指導件数は増加しているものの、重大違反が疑われるケースは減少していると考えられます。
また監査を受けた保険医等は83人で、前年度に比べて5人・5.7%減となりました。内訳は、▼医師:67人(前年度比26人・63.4%増)▼歯科医師:16人(同19人・45.7%減)▼薬剤師:ゼロ人(同12人・100.0%減)―でした。「医師による重大違反疑い」のみが増えている点が気になります。
一方、監査の結果、重大なルール違反が確認され「保険指定取消」となった保険医療機関等は9件(前年度から1件・12.5%増)、取消処分が決定する前に自ら保険指定を辞退した分(指定取消相当)は14件(同1件・7.7%増)で、両者を合計した「保険指定の資格喪失」件数は23件(同2件・9.5%増)となりました。重大違反により「保険診療からの退場」となるケースが増えていることが分かります。
内訳を見ると、指定取り消しは▼医科:3件(前年度比2件・40.0%減)▼歯科:6件(同3件・100.0%増)▼薬局:ゼロ件(同増減なし)—、指定取り消し相当は▼医科:6件(同増減なし)▼歯科:8件(同2件・33.3%増)▼薬局:ゼロ件(同1件・100.0%減)―という状況です。
また保険指定取消・取消相当となった保険医等は18人(前年度比4人・28.6%増)で、内訳は、指定取り消しで▼医師:5人(同増減なし)▼歯科医師:12人(同4人・50.0%増)▼薬剤師:ゼロ人(同増減なし)、取り消し相当で▼医師:ゼロ人(同増減なし)▼歯科医師:1人(同増減なし)▼薬剤師:ゼロ人(同1人減)―となっています。こちらも「保険診療からの退場」となる医師等が増加しています。
依然として「重大なルール違反」が一定数存在しています。医療費財源は、上述したように「皆が病気・ケガのために備えて納めている」ものです。ルール違反により、多く配分を受けようと考えることは厳に慎まなければなりません。
保険指定取り消しとなった医療機関の事例を見ると、「施設基準を満たしていない入院料を請求していた」、「行っていない診療行為を請求していた」(いわゆる架空請求)、「実際に行った保険診療に、行っていない診療行為を追加して請求した」(いわゆる付増請求)、「保険診療で認められない診療行為を、保険診療を装って請求していた」などがあります。こうした不正請求については診療報酬の返還請求がなされ、2024年度の返還金総額は48億5333万円(前年度から2億2995万円・5.0%増)となりました。
返還の内訳は、監査による返還金額が
8億2876万円(前年度比7億5485万円・1021.3%増)、適時調査(医療機関等が施設基準等を守っているか確認する調査)による返還金額が22億9921万円(同8億9636億円・28.1%減)、指導による返還金額が17億2536万円(同3億7146万円・27.4%増)となっています。
保険指定取り消し等の端緒(きっかけ)は、▼保険者や医療機関の従事者、患者等からの情報提供:20件(前年度比2件・11.1%増)▼警察の摘発など:3件(同増減なし)―となっています。

2024年度における監査や保険指定取り消しなどの状況(2024年度指導・監査2 260129)
保険者の多くは、加入者に向けて「あなたの今月の医療費は●●円です」という通知(医療費通知)を行っています。冒頭に述べた「医療費の財源は国民全員のお金であり、適正な受診が求められる(はしご受診などの、いわゆるドクターショッピングは好ましくない)」という注意喚起の役割を果たします。それと同時に、医療費通知を見た加入者が「私は、今月はこの医療機関にかかっていない。なぜ医療費が発生しているのか」「私は医療機関にはかかったが、このような高額医療は受けていない」などという具合に不正請求を発見する重要なツールにもなっています。「情報公開」が様々な面で重要であることを再確認できます。
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