不正請求などで27件・21人が保険指定取り消し、診療報酬89億円返還―2016年度指導・監査実施状況
2017.12.22.(金)
2016年度に個別指導を受けた保険医療機関等は医科1601件・歯科1324件・薬局1598件の合計4523件、監査を受けた保険医療機関等は医科28件・歯科39件・薬局7件の合計74件で、保険指定取り消し処分などを受けた医療機関等は医科8件・歯科18件・薬局1件の合計27件だった―。
こうした状況が、12月21日に厚生労働省が発表した2016年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」から明らかになりました(関連記事はこちらとこちら)(厚労省のサイトはこちら)。
指導・監査などにより返還された診療報酬は、合計で88億9535万円となっています。
2016年度には4523件の個別指導、1万3680件の集団的個別指導
▼公費(税金)▼保険料▼患者の一部負担―で賄われる保険診療には、支払いを受けるに当たっての厳格なルール(健康保険法、療養担当規則、診療報酬点数表など)が定められています。このルールに従わない保険医療機関や保険医にはペナルティが科され、保険診療からの“退場”を命じられることもあります(保険指定の取り消し)。
厚労省は、保険医療機関がルールを遵守しているかどうかを定期的に調査し、違反などが疑われる場合には、指導や監査を経て是正しています。指導には、次の3種類があります。
(1)集団指導:新規に保険指定を受けた医療機関や医師などを対象に、保険ルールを説明する講習会
(2)個別指導:違反などが疑われる医療機関を呼び出し、面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する(新規に保険指定を受けた医療機関を対象とする「新規個別指導」もある)
(3)集団的個別指導:保険請求金額が高額な医療機関を一定の場所に集め、簡便な面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する
2016年度に個別指導(新規個別指導を除く、以下同)を受けた保険医療機関等は4523件(前年度比120件増)で、内訳は、▼医科1601件(同35件増)▼歯科1324件(同7件減)▼薬局1598件(同92件増)―となっています。
個別指導を受けた保険医等は9291人(同1016人増)で、内訳は、▼医師4986人(同699人増)▼歯科医師1979人(同134人増)▼薬剤師2326人(同183人増)―と、こちらは全職種で前年度を上回ってしまいました。
一方、集団的個別指導は1万3680件(同445件増)で、内訳は、▼医科4630件(同325件増)▼歯科4920件(同82件減)▼薬局4130件(同202件増)―となり、歯科を除いて前年度を上回ってしましました。
74医療機関等・保険医等263人に監査を実施、保険指定取り消しは27件・21人
著しいルール違反が疑われる場合には、「監査」によって事実関係が調査されます。ルール違反が確認されれば、違反の程度に応じて「保険指定取消」「戒告」「注意」のいずれかの処分が行われます。
2016年度に監査を受けた保険医療機関等は74件(同16件減)あり、内訳は、▼医科28件(同9件減)▼歯科39件(同6件減)▼薬局7件(同1件減)―と、いずれも減少しています。一方、監査を受けた保険医等は263人(同82人増)と増加しており、内訳は、▼医師103人(同25人増)▼歯科医師120人(同39人増)▼薬剤師40人(同18人増)―でした。
監査の結果、ルール違反が確認され「保険指定取消」となった保険医療機関等は17件ですが、取消処分が決定する前に自ら保険指定を辞退した分(指定取消相当)を含めると、27件が保険指定の資格を失いました。内訳は、▼医科8件▼歯科18件▼薬局1件―で、前年度に比べて10件と大幅に減っています(医科2件減、歯科8件減、薬局増減なし)。
また保険指定取消(指定取消相当を含む)となった保険医等は21人(前年度比5人減)で、こちらも前年度を下回りました。内訳は、▼医師6人(同1人減)▼歯科医師14人(同4人減)▼薬剤師1人(同増減なし)―という状況です。
こうした不正請求については診療報酬の返還がなされ、2016年度の返還金総額は88億9535万円(前年度比35億4202万円減)となっています。
このうち、監査による返還金額は4億4705万円(同1億5408万円増)で、前年度を上回りました。一方で、医療機関等が施設基準等を守っているか確認する「適時調査」による返還金額が、43億5931万円(同32億7420万円減)と前年度を大幅に割っています。なお、医療機関等への適時調査の件数自体は、3363件(同801件増)と増えています。
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