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GemMed塾診療報酬改定セミナー2026

都道府県で「地域フォーミュラリ策定会議」を2026年度中に設置し、対象となる地域・医薬品成分の検討を―社保審・医療保険部会

2026.2.12.(木)

医療費適正化、医療の質向上に資すると期待される「地域フォーミュラリ」を各地域で推進するために、各都道府県で2026年度中に「地域フォーミュラリ策定のための会議体」を設置し、医療関係者・行政・保険者・学識者等で議論して「地域フォーミュラリの対象となる地域」の選定を進めよ―。

さらに選定された地域では、医療関係者・行政・保険者・学識者等で議論して「地域フォーミュラリ」を策定するとともに、具体的な医薬品の成分を設定せよ―。

2月12日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こうした方針が固められました。

また医師偏在の是正に向けた「保険医療機関の管理者」要件や、「外来医師過多区域で新規開業するが、地域で不足する機能を担わない」クリニックへのペナルティ(保険指定期間の短縮)の詳細も固められています。

2月12日に開催された「第210回 社会保障審議会 医療保険部会」

地域フォーミュラリの策定推進に向け、2026年度中に各都道府県で「検討の場」を設置

繰り返しGem Medで報じているとおり、医療保険財政が厳しさを増しており、今後もさらにその度合いを増していきます。

まず「医療技術の高度化」により、医療費が高騰していきます。例えば、脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、キムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。その上、新たな認知症治療薬「レケンビ」が保険適用され、患者数が膨大なことから、医療保険財政に及ぼす影響が非常に大きくなる可能性があります。さらに新たな認知症治療薬「ケサンラ」の保険適用も行われました。

大企業の会社員とその家族が主に加入する健康保険組合の連合組織「健康保険組合連合会」では、こうした高額薬剤によって超高額レセプトの発生が増加し、医療保険財政を圧迫している状況を強く懸念しています(関連記事はこちら)。

あわせて「高齢化の進展」による医療費高騰も進みます。ついに人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代の全員が、今年度(2025年度)に75歳以上の後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長く、結果、1人当たり医療費が若年者に比べて2.3倍高くなります(関連記事はこちら(2023年度の市町村国保医療費は平均40万2157円であるのに対し、後期高齢者では93万1637円)。このため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招きます(医療費は1人当たり医療費×人数で計算できる)。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

「減少する一方の支え手」で「増加する一方の高齢者・医療費」を支えなければならないために医療保険の制度基盤が極めて脆弱になり、さらに今後も厳しさを増してくと考えられるのです。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」ための取り組み(医療費適正化方策)が強く求められます。

この一環として国(厚生労働省)と都道府県では「医療費適正化計画」の作成・実行に努めています。

医療費適正化計画は、各都道府県において▼6年後(計画満了時)の医療費適正化の見込み(医療費の伸びをどれだけ抑えられるか)▼医療費適正化を実現するための方策(特定健診・保険指導の推進、糖尿病の重症化予防、後発医薬品の使用促進、地域医療構想の実現など)―を計画に落とし込み、実行するものです(2008年度からスタート)。現在、2024年度から29年度を対象とする第4期医療費適正化計画が稼働しています(関連記事はこちら)。

2月12日の医療保険部会では、厚生労働省保険局医療介護連携政策課(医政局、老健局併任)の山田章平課長が、現在稼働中の第4期医療費適正化計画の中に「地域フォーミュラリの導入」に関する事項を追記する考えを提示し、了承されました。

「フォーミュラリ」とは、医療機関等が作成した「医学的妥当性や経済性などを踏まえた医薬品使用方針」のことです。「●●疾患には第1選択としてA医薬品(特定の銘柄や成分)を使用する、◆◆疾患には第1選択としてX医薬品(特定の銘柄や成分)を使用する」といったリストをつくるイメージです。採用医薬品を集約化することで「経営の質」が向上する(医薬品の購入コストを抑えることが可能)ことはもちろんですが、何よりも「医療の標準化が進み、医療の質が向上する」という大きな効果が期待されます。また、後発品を優先選択肢に据えることで「医療費の適正化」にもつながります。

さらに、このフォーミュラリを「地域単位」で作成・運用することで、「地域単位での医療内容の標準化・医療の質向上」という効果がより発揮されると期待され、厚労省は2023年7月7日に通知「フォーミュラリの運用について」を発出し、地域単位で「疾患別の推奨医薬品リスト」(フォーミュラリ)を作成・運用することで、地域医療の標準化が進み、医療費適正化の効果も期待できるため、フォーミュラリの作成・運用手順の考え方を活用し、地域単位での取り組みを進めてほしいとの考えを示しています。

例えば、山形県酒田市では早期に地域フォーミュラリを策定・運用しており、高血圧症治療に用いる「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」(ARB)推奨薬の利用率の分布をみると、「オルメサルタンの後発品」が全国値(21%)と比べて高く(32%)、同じく「テルミサルタンの後発品」も全国地(17%)と比べて高く(27%)なるなど、医療の標準化等に向けた成果が現れてきています。

山形県酒田市における地域フォーミュラリの効果(社保審・医療保険部会1 260212)



しかし、通知発出から2年近くが経過した昨年(2025年)5月時点で、地域フォーミュラリの策定は全国18件(策定中含む)、1件以上策定している都道府県数は12府県にとどまっています。

地域フォーミュラリの策定状況は芳しくない(社保審・医療保険部会2 260212)



上述のように地域フォーミュラリは「医療費適正化」に資すると期待されることはもちろん、何よりも「地域単位での医療内容の標準化→地域単位での医療の質の向上」につながると期待され、より多くの都道府県・地域で作成・運用が進むことが期待されます。

そこで山田医療介護連携政策課長は、現在稼働中の第4期医療費適正化計画の中に「地域フォーミュラリの取り組み推進に向けた都道府県・国の役割」を追記・明確化する考えを提示しました。

【都道府県の取り組み】(Gem Med編集部で抜粋・改変)
▽各都道府県において、医薬品適正使用の効果も期待されるフォーミュラリの「策定に向けて検討する場」を設けるよう、医療関係者との合意形成促進、会議運営、都道府県域内の医療関係者に対する「フォーミュラリの運用について」の周知、好事例の展開や都道府県域内の地域フォーミュラリの周知による理解促進、生活習慣病薬等の後発品の成分別使用割合データ等の活用等の必要な取り組みを進めることが考えられる

医療費適正化計画への地域フォーミュラリに関する記載(都道府県の取り組み)(社保審・医療保険部会3 260212)



【国の取り組み】(Gem Med編集部で抜粋・改変)
▽地域フォーミュラリの取り組みについて、各都道府県で「策定に向けて検討する場」が設けられるよう、都道府県単位での医療関係者との合意形成の促進、会議運営支援、「フォーミュラリの運用について」の周知や好事例の展開による理解促進、生活習慣病薬等の後発品の成分別使用割合データ等の都道府県への提供、保険者による地域フォーミュラリへの参画を促すインセンティブの設定、全国の地域フォーミュラリを分析し参考となる薬効群の成分リストの作成・公表をはじめとした必要な取り組みを推進する

▽これにより後発品の数量ベースでの使用割合の地域差縮減や、有効性、安全性に加えて経済性を踏まえた先発医薬品を含む医薬品の「推奨される選択順位」の決定を進める

医療費適正化計画への地域フォーミュラリに関する記載(国の取り組み)(社保審・医療保険部会3 260212)



具体的には、▼都道府県に医師会・歯科医師会・薬剤師会などの医療関係者・行政・保険者・学識者などで構成される「都道府県地域フォーミュラリ推進会議」を設置し、地域フォーミュラリの意義・効果等の研修や地域別の後発品使用割合の情報共有を行ったうえで、「地域フォーミュラリが策定可能な地域」の選別を行う→▼当該地域に医師会・歯科医師会・薬剤師会などの医療関係者・行政・保険者・学識者などで構成される「地域フォーミュラリ検討準備委員会」を設置し、対象医薬品の選定や地域フォーミュラリの策定・運用を行う―ことが考えられます。その際、上記の山形県酒田市などの先行事例を参考にすることが重要でしょう。

地域フォーミュラリ策定に向けた取り組み例(社保審・医療保険部会5 260212)



山田医療介護連携政策課長は「来年度(2026年度)中に、各都道府県で地域フォーミュラリを策定する場を設ける」との目標も掲げています。

こうした提案に反対意見は出ていませんが、▼いわゆる無価値医療・低価値医療排除のためにも地域フォーミュラリを推進していくべき(島弘志委員:日本病院会副会長、袖井孝子委員:高齢社会をよくする女性の会理事)▼名称を分かりやすくしてはどうか、地域フォーミュラリでは何のことか分からない人も多く、それが策定等が進まない一因のなっているのではないか(袖井委員、伊奈川秀和委員:国際医療福祉大学医療福祉学部教授)▼特定メーカーへの利益誘導等にならないよう「成分単位」でのフォーミュラリを策定すべき(島委員)▼経済的視点のみで地域フォーミュラリを策定してはいけない、疾患ごとの診療ガイドラインを十分に勘案し、本質から外れない議論をすべき(渡邊大記委員:日本薬剤師会副会長)▼山形県酒田市のような取り組みが全国で進むよう、都道府県の積極的な関与と、国による支援が求められる(佐野雅宏委員:健康保険組合連合会会長代理)—などの注文が付いています。

新たに設定される「保険医療機関の管理者要件」をクリアできているかチェックを

また2月12日の医療保険部会では、改正医療法の施行に向けて▼保険医療機関の管理者に関する手続き▼「外来医師過多区域で新規開業する」が、地域で不足する機能提供に関する都道府県知事の要請に従わらない場合の「保険医療機関の期限付き指定」—も議題としています。いずれも「医師偏在対策」の一環として新たに設けられる仕組みです(本年(2026年)4月施行、関連記事はこちら)。

前者は、保険医療機関の管理者になる場合には▼現に保険医である▼2年の臨床研修を修了している▼保険医療機関(病院に限る)での3年以上の保険医従事経験をもつ—という要件を設定するものです。管理者は「診療報酬の適切請求」などの保険医療機関としての管理を行い、通常は医療法上の管理者(院長等)と同一になると考えられます(関連記事はこちらこちら)。

厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の吉田拓野室長は、新たに保険医療機関の管理者がいずれの要件を満たしているのかをチェックするための「添付書類」イメージを提示しました。

保険医療機関の管理者の要件クリアをチェックする添付書類イメージ(社保審・医療保険部会6 260212)



後者は、外来医師が非常に多い(クリニック乱立)地域で新規のクリニック開業を行う場合には、「都道府県が事前に提示した地域で不足する機能」(夜間の1次対応や在宅医療など)を担うことが求められ、これに従わない場合には「保険医療機関の指定」を通常の6年から3年または2年に短縮する仕組みです(ほかに診療報酬上のペナルティなども課される、関連記事はこちら)。

外来医師「過多」区域での、新規開業希望者に対する「地域で不足する機能」提供要望の仕組み(中医協総会1 251224)

外来医師過多区域の候補(地域医療構想・医療計画検討会(2)1 260116)



吉田保険医療企画調査室長は、上記の考えに沿って、「地域で不足する機能を担ってほしい」との都道府県知事の要請に従わない場合の保険医療機関指定短縮を次のように行う考えを明示しました。

▽指定期間が「3年」となる場合
・要請を受けて期限までに応じなかったクリニック(1度目の指定)
・勧告を受けたクリニック(度目の指定中)
・保険医療機関の再指定時に、勧告に従わない状態が続いた場合(2度目の指定)

▽指定期間が「2年」とより厳しくなる場合
・保険医療機関の再々指定時以降に勧告に従わない状態が続いた場合(3度目の指定以降)

なお、次のような点も改正医療法・健康保険法等の中で措置されています。

▽「開業者の保険医のみが診療する診療所、これに準ずる診療所」の保険医療機関としての指定については、6年の指定期間の経過後、別段の申出がないときは「更新手続きをせずとも、6年の指定が更新される」(いわば自動更新)が、上記の保険指定期間短縮を受けた場合には、この自動更新は適用されず、指定の申請を行わなければならない

▽「開業者の保険医のみが診療する診療所」については、当該医師が保険医登録をした場合には、自動的に「当該診療所を保険医療機関とみなす」(みなし指定)が、医療法に基づく都道府県知事からの要請を受けた者についてはみなし指定を行わない

保険医療機関の指定期間短縮の考え方(社保審・医療保険部会7 260212)



すでに幾度も議論を重ねてきた内容であり反対意見などは出ていませんが、主に医師偏在の是正に向けて▼地域で不足する機能を担わなくてもよくなる「やむを得ない事情」の精査を十分に行ってほしい(佐野委員)▼運用の実態把握、効果検証などを十分に行ってほしい(島委員、林鉄兵委員:日本労働組合総連合会副事務局長)▼「地域で不足する機能」を都道府県が設定する際には、地域医師会など医療現場の声を十分にきいてほしい。データだけを見て設定するようなことの内容に留意してほしい(城守国斗委員:日本医師会常任理事)—などの注文が付いています。

2025年12月時点のマイナ保険証利用率はレセプトベースで63.24%

また山田医療介護連携政策課長は、マイナ保険証の利用促進に向けて次のような点も明らかにしています。

▽マイナ保険証利用率(レセプトベース)は昨年(2025年)12月時点で「63.24%」となった

マイナ保険証利用率(社保審・医療保険部会8 260212)



▽スマートフォンでのマイナ保険証利用に対応している施設は、この2月1日時点(2026年2月1日)で「オンライン資格確認等システム導入済施設の5割弱」(約10万3000施設)に上っている
▽訪問診療・訪問看護においても「スマートフォンでのマイナ保険証利用」を可能とするアプリケーションを本年(2026年)3月末めどにリリースする(システム改修は不要)

スマホマイナ保険証の導入状況(社保審・医療保険部会9 260212)



▽医療機関・薬局での資格確認において留意すべき事項(例えば、マイナ保険証利用者に資格確認書提示を求めていないか、など)をチェックリスト・フローチャートとしてまとめ周知している

医療機関・薬局での受け付けチェックリスト(社保審・医療保険部会10 260212)

医療機関・薬局での受け付けフローチャート(社保審・医療保険部会11 260212)



▽「後期高齢者全員への資格確認書」交付について、本年(2026年)8月以降は▼85歳以上の者には同じく全員一律に資格確認書を交付する▼84歳未満の者では「マイナ保険証を直近1年間に6回以上利用し、かつ直近3か月における利用実績あり」の者には交付せず(マイナ保険証を利用)、その他の者について資格確認書を交付する―運用を基本とするが、異なる運用を行うことも認める(関連記事はこちら

2026年8月以降の「85歳以上高齢者への資格確認書の職権交付」にかかる考え方の基本(社保審・医療保険部会12 260212)



こうした内容にも反対意見は出ていませんが、▼マイナ保険証受診をさらに進めるべく「資格確認書でも保険診療を受診可としている運用」などについて検討を進める必要がある(佐野委員)▼仮に「保険証」を使用して医療機関を受診している人がいた場合には、そうした人が取り残されないような対応を検討してほしい(城守委員)▼85歳以上高齢者への資格確認書の職権交付(申請を待たずに後期高齢者広域連合が交付する)について、地域でバラつきが出る旨を国から周知・後方すべき(實松尊徳委員:全国後期高齢者医療広域連合協議会会長/佐賀県神埼市長)—などの注文が付いています。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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