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医師偏在是正に向けた「総合的な対策パッケージ」を策定、経済的インセンティブ含め「全世代の医師」に協力求める—福岡厚労相

2024.12.26.(木)

12月25日に開催された「厚生労働省医師偏在対策推進本部」(以下、単に対策推進本部)で、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が取りまとめられました。

これまでに▼「新たな地域医療構想等に関する検討会」「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」「社会保障審議会・医療保険部会」「社会保障審議会・医療部会」—で議論されてきた内容を整理するとともに、「総合的な医師偏在対策を、医療法に基づく『医療提供体制確保の基本方針』に位置付ける」、「対策の効果を定期的に検証し、必要な改善を図る」ことで実効性を高める考えを強調しています。

●「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」はこちら(本体)こちら(概要)



対策推進本部の本部長を務める福岡資麿厚生労働大臣は、「保険あってサービスなしとなる地域があってはならず、地域で必要な医療提供体制を確保していくことが重要」であることを確認したうえで、今回の総合的な対策パッケージが▼経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組み、医師養成過程の取り組みなどの「総合的な対策」である▼医師の柔軟な働き方等に配慮した中堅・シニア世代を含む「全ての世代の医師へアプローチ」するものである▼地域の実情を踏まえ、支援が必要な地域を明確にした上で、「へき地対策を超えた取り組み」体制を確保するものである(後述する重点医師偏在対策支援区域対策など)—ことを強調。全関係者が一丸となって偏在対策に取り組んでほしいと要請しています。

12月25日に開催された「厚生労働省医師偏在対策推進本部」に出席した福岡資麿厚生労働大臣(対策推進本部長、写真前列向かって左)と迫井正深医務技監(写真向かって右)



今後、医療法や健康保険法等の法改正や、予算確保に反映させるとともに、2026年度の予算案・診療報酬改定などに向けたさらなる細部検討にもつなげられます。

医師偏在是正効果を見て、重層的に効果検証を行い、必要に応じて対策を見直す

Gem Medで報じているとおり、8月30日の「近未来健康活躍社会戦略」で示された、「医師偏在対策総合パッケージの骨子案」をベースに医師偏在対策論議が精力的に進められ、▼「新たな地域医療構想等に関する検討会」「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」「社会保障審議会・医療保険部会」「社会保障審議会・医療部会」—で具体的な対策案がまとめられました。12月25日の対策推進本部では、これらの内容を整理し、さらに「実効性を確保」するための方策も加味した「総合的な対策パッケージ」をまとめています。

既に報じた内容とも重複しますが、医師偏在対策の大枠を振り返ると次のような多様な項目が盛り込まれています。

医師確保計画の実効性の確保
▽医師確保を優先的・重点的に進めるべき地域を【重点医師偏在対策支援区域】として選定する(「厚生労働省が提示する候補区域」(各都道府県で医師偏在指標が最も低い2次医療圏など約100区域)を参考に、都道府県で地域の実情に応じて選定する(2次医療圏に限らない)

▽都道府県で、「重点医師偏在対策支援区域」を対象に支援対象医療機関・必要医師数・医師偏在是正に向けた取り組みなどを盛り込んだ【医師偏在是正プラン】を新たに作成し、強力に医師偏在対策を推進する
→緊急的な取り組み(重点医師偏在対策支援区域で承継・開業する診療所に対する支援)を先行実施するが、是正プラン全体は2026年度に策定する
→「重点医師偏在対策支援区域で承継・開業する診療所に対する支援」(後述する経済的インセンティブ)は、「医師偏在是正プラン」に先駆けて2025年度から順次実施する(2024年度補正予算で対応していく)

▽医師偏在指標について、医師不足の実態と大きく乖離することがないよう2027年度からの次期医師確保計画に向けて必要な見直しを検討する



地域の医療機関の支え合いの仕組み(従前は「規制的手法」とされていた項目)
(1)医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大等
管理者(院長等)要件として「医師少数区域等での勤務経験」を求める医療機関について、現行の「地域医療支援病院」(約700病院)に、「医療法第31条で医師の確保に関する事項の実施に協力することなどが求められている公的医療機関や国立病院機構・地域医療機能推進機構等の病院」を追加する(全体で約1600病院となる)
→「医師少数区域等に所在する医療機関の管理者となる場合は対象から除外する」、「地域医療対策協議会で調整された医師派遣の期間、地域医療対策協議会で認められた管理者に求められる幅広い経験の機会となる期間(例えば大学病院等の医育機関で医療従事者等の指導等に従事した期間等)の一部を勤務経験期間として認める」などの緩和措置を設ける

▽勤務経験期間を「1年以上」に延長する
→医師免許取得後9年以上の医師では「断続的な勤務日」の積み上げも可とする
→9年未満医師では「最初の6か月以上の勤務は原則1か月以上の連続勤務の積み上げ、残りの期間は断続的な勤務日の積み上げ」も可とする

(2)外来医師過多区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等
▽都道府県から、外来医師が極めて多い地域(外来医師過多区域、例えば外来医師偏在指標が標準偏差の数倍超の地域)などで新規にクリニックを開業する者に対し、医療法に基づき「開業6か月前」に、提供する予定の医療機能等の届け出を求めた上で、当該届け出内容等を踏まえて、▼地域の「外来医療の協議の場」への参加を求める▼「地域で不足している医療機能」(夜間・休日等の初期救急、在宅医療、公衆衛生等)の提供や「医師不足地域での医療提供」(土日の代替医師としての従事等)を要請する—ことを可能とする

▽▼外来医師過多区域▼地域で不足する医療機能▼医師不足地域での医療提供内容—は、事前に公表する

▽要請にも関わらず「地域で不足している医療機能提供」「医師不足地域での医療提供」を行わない開業者に対し、都道府県医療審議会での理由等説明を求めた上で、やむを得ない理由がない場合には都道府県が「勧告」「公表」を行うことを可能とする

▽開業前に要請された診療所が要請後に保険医療機関の指定を受けた場合は、保険医療機関の指定期間を6年でなく3年とする(関連記事はこちら
→都道府県は、3年後の更新前に「地域で不足している医療機能提供」「医師不足地域での医療提供」状況を確認し、必要に応じて「勧告」を行う。この場合、保険医療機関の指定期間は、さらに3年よりも短い期間とすることを可能とする(厚生労働大臣が事前に標準的な期間を示す)

▽都道府県医療審議会や外来医療の協議の場への毎年1回の参加を求めるとともに、要請・勧告を受けたことの公表、勧告に従わない医療機関の公表、保健所等による確認、診療報酬上の対応、補助金の不交付等を行う

▽通常の「外来医師多数区域」等や「新規開業クリニック『以外』の者」は、これまでのどおりのガイドラインによる「地域で必要な医療機能提供」要請を進める

(3)保険医療機関の管理者要件
▽新たに、保険医療機関の管理者になる場合には▼現に保険医である▼2年の臨床研修を修了している▼保険医療機関(病院に限る)での3年以上の保険医従事経験をもつ—という要件を設定する(診療報酬の適切請求などの保険医療機関としての管理を行う、通常は医療法上の管理者(院長等)と同一になると見られる)(関連記事はこちら



地域偏在対策における経済的インセンティブ等
(1)経済的インセンティブ

▽重点医師偏在対策支援区域における医師確保推進のため、都道府県の医師偏在是正プランに基づき、経済的インセンティブを講じる
→2026年度予算案を編成する過程で次のような支援を検討する
▼当該区域で承継・開業する診療所の施設整備、設備整備、一定期間の地域への定着に対する支援(緊急的に先行して2024年度補正予算で対応していく)
▼当該区域の一定医療機関に派遣される医師、従事する医師への手当増額の支援
▼当該区域の一定医療機関に対する土日の代替医師確保等の医師の勤務・生活環境改善の支援、派遣元医療機関に対する支援

▽国で経済的インセンティブ事業の総額を設定し、その範囲内で人口、可住地面積、医師の高齢化率、医師偏在指標等に基づき「都道府県ごとに予算額の上限」を設定し、その範囲内で支援を行う

▽「重点医師偏在対策支援区域の医師への手当増額支援」については保険者からの負担を求め、給付費の中で一体的に捉える(例えば手当増額支援に「X億円」が必要となる場合には、診療報酬等について「X億円」分の合理化・適正化を行うことで給付費を増加させない)(関連記事はこちら

▽当該事業の実施について、保険者が実施状況や効果等を確認するための枠組みを検討する

▽「診療報酬において、医師偏在への配慮を図る観点から、どのような対応が考えられるか」をさらに検討する

(2)全国的なマッチング機能の支援
▽「医師不足地域での医療に関心・希望を有する中堅・シニア医師」と「医師不足地域の医療機関」とのマッチング、その後の定着支援などを行う

(3)リカレント教育の支援
▽中堅以降の医師を主な対象として「地域で働く上で必要とされる総合的な診療能力」を学び直すためのリカレント教育に係る取り組みを推進する

(4)都道府県と大学病院等との連携パートナーシップ協定
▽都道府県と大学病院等との間で、医師派遣・配置、医学部地域枠、寄附講座等に関する連携パートナーシップ協定の締結を推進する
→あわせて「医師確保対策における大学病院の位置づけ」を明確化する(関連記事はこちらこちら



医師養成過程を通じた取り組み
(1)医学部定員・地域枠

▽医師の偏在対策に資するよう、個々の地域の実情や都道府県の意見を十分に聞きながら必要な対応を進める

▽医学部臨時定員の適正化を行う医師多数県において、「恒久定員内への地域枠の設置」等を含む地域への定着の取り組みを支援する

▽今後の医師需給状況を踏まえつつ、2027年度以降の医学部定員の適正化を検討する

(2)臨床研修
▽医師少数県等で24週以上の研修を実施する、新たな「広域連携型プログラム」の2026年度開始に向けて準備を進める



診療科偏在の是正に向けた取り組み
新たな地域医療構想等を通じた「一定の医療の集約化」を図りつつ、男女問わず「必要とされる分野が若手医師から選ばれる」ための環境づくりなど、処遇改善に向けた必要な支援を実施する

▽外科医師が比較的長時間の労働に従事している等の業務負担への配慮・支援等の観点での手厚い評価について必要な検討を行う



さらに、こうした取り組みの実効性確保を目指し、▼総合的な医師偏在対策を、医療法に基づく『医療提供体制確保の基本方針』に位置付ける▼対策の効果を定期的に検証し、必要な改善を図る(医師偏在対策の効果を施行後5年目途に検証し、必要な改善を図るとともに、医師確保計画により「3年間のPDCAサイクルに沿った取り組み」を推進するなど、重層的な効果検証を行う)—考えも盛り込まれています。

医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージの基本的な考え方



ところで、現在も「第2期医師確保計画」(2024-26年度)が稼働しています(関連記事はこちら)が、今般の「総合的な対策パッケージ」を踏まえて「【重点医師偏在対策支援区域】では、医師確保計画の中に【医師偏在是正プラン】を盛り込む」「【重点医師偏在対策支援区域】での医療機関承継・開業などへの緊急的な先行支援を行う」などの修正も図られていきます。

医師偏在対策に係る今後のスケジュール



なお、上述のように「経済的インセンティブ」や「医師偏在是正プラン」などの詳細は2026年度の予算案を編成する過程で、その詳細を詰めていくこととなっており、今後も「医師偏在是正策」の検討は継続する点に留意が必要です(「総合的な対策パッケージ」は、医師偏在是正策の言わば大枠・メニュー表である)。



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