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病床機能報告 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

厚労省が「近未来健康活躍社会戦略」を公表、医師偏在対策、医療・介護DX、後発品企業再編などを強力に推進

2024.9.2.(月)

厚生労働省が8月30日に「近未来健康活躍社会戦略」を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

我が国では人生100年時代を迎える中で、医療・介護等分野には、▼少子高齢化・人口減少の中で社会保障制度等をどう維持していくか▼デジタル化をどう進めていくか▼グローバル化をどのように推進していくか—などの課題があります。

こうした課題に対応するために、武見敬三厚生労働大臣は「近未来健康活躍社会戦略」として次の3つの目標を掲げ、目標実現に向けた取り組みを整理しています。
▽国内における改革努力と国際戦略の両面により、国際貢献と同時に海外市場の活力を日本経済に取り込むことで、戦略的に医療・介護産業を育成する
▽医療・介護分野における多様なイノベーション・最先端の技術を駆使することや、インバウンド・アウトバウンドの取組を推進することで、国民皆保険を堅持しつつ、戦略的に医療・介護全体としての収入の拡大を目指すとともに、その成果を広く国民に還元する
▽国民一人ひとりが可能な限り長く健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会(健康活躍社会)を実現する

今後、医療・介護DXや医師偏在対策、後発医薬品企業の再編などに向けた取り組みが協力に進められていきます。

医師偏在対策では、総合パッケージの「骨子」を提示

「近未来健康活躍社会戦略」では、こうした目標を実現するために、次のような戦略を立て、それぞれの取り組みを進めていく考えを打ち出しました。【国内戦略】を進めて保健医療・介護分野の海外展開を図り、海外市場の活力を国内市場に還元するという、正のスパイラルを構築することが狙いです。
【国際戦略】
(1)創薬力の強化による革新的新薬の開発
(2)世界の感染症対策を牽引する感染症危機管理体制の構築(国立健康危機管理研究機構(JIHS)の創設など)
(3)アジア圏等における医療・介護の好循環の実現(インバウンド・アウトバウンドの推進等)(外国人医療人材の育成、公的医療保険の枠外での訪日外国人患者の受け入れ(インバウンド)や医薬品・医療機器の海外展開(アウトバウンド)の推進など)
(4)「UHC(C(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)ナレッジハブ」の日本設置

【国内戦略】
(5)医療・介護DXの更なる推進
(6)提供体制の改革(医師偏在対策の推進)
(7)後発医薬品の安定供給体制の構築
(8)女性・高齢者・外国人の活躍促進
(9)イノベーションを健康づくり・治療に活かす環境整備

近未来健康活躍社会戦略実現のためのコンセプト(近未来健康活躍社会戦略1 240830)



このうち(5)の「医療・介護DX」に関しては、本年12月2日から「マイナ保険証を基本とする仕組み」への移行を控える中で、医療DXの基盤であるマイナ保険証の利用促進を図りつつ、「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、次のような取り組みをより実効的かつ一体的に進め、これを制度的に担保するために「関係法令の整備を行う」方針が示されました(法令整備について別稿で報じます)。

▽全国医療情報プラットフォームの構築等(関連記事はこちらこちら
→電子カルテ情報共有サービスの構築・普及(大病院における電子カルテ情報の標準化の加速化、診療所への標準型電子カルテの導入促進、必要な支援策の検討)、電子処方箋の普及促進
→次なる感染症危機に備え、電子カルテ情報と発生届との連携、臨床研究における電子カルテ情報との連携促進、JIHS(国立健康危機管理研究機構)への情報集約
→診療報酬改定DX、介護情報基盤の構築、PMH(公費負担医療等の情報連携基盤)の推進

▽医療等情報の二次利用の推進(関連記事はこちら
→医療・介護等の公的DBの利用促進(仮名化情報の利用・提供、電子カルテ情報共有サービスで収集するカルテ情報の2次利用等)
→公的DB等を一元的かつ安全に利活用できるクラウド環境の「情報連携基盤」の構築、利用手続のワンストップ化
→検査や薬剤等に関するコードの標準化・質の高い医療データを整備、維持・管理するための取り組み推進

▽医療DXの実施主体
→社会保険診療報酬支払基金を、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体(「医療DX推進機構(仮称)」)として、抜本的に改組する
→国が医療DXの総合的な方針を示し、支払基金が中期的な計画を策定。保険者に加え、国・地方が参画・運営する組織とし、情報技術の進歩に応じた迅速・柔軟な意思決定、DXに精通した専門家が意思決定に参画する体制に改組する

▽マイナ保険証の利用促進、生成AI等の医療分野への活用
→国が先頭に立って、あらゆる手段を通じてマイナ保険証の利用を促進する(関連記事はこちら
→生成AI等の医療分野への活用を図る



電子カルテ情報共有サービス(各医療機関・患者が電子カルテ情報を共有・閲覧可能とする仕組み)については、2023年3月9日の健康・医療・介護情報利活用検討会「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」で大枠が固められ、▼2023年度から社会保険診療報酬支払基金でシステム構築を行う▼2024年度中(2025年1月から)にモデル医療機関でスタート▼2025年度中に本格運用する—といったスケジュールが示されています(関連記事はこちら(医療DXの推進に関する工程表))。

電子カルテ情報共有サービスの概要(医療情報利活用ワーキング(1)1 240610)

電子カルテ情報共有サービス運用までのロードマップ(医療等情報利活用ワーキング12 240124)



今後、社会保障審議会の医療保険部会や医療部会で「費用負担の在り方」も含めた制度整備(法令整備)論議が進んでいきます(詳細は別稿で報じます)。



また、(6)の「医師偏在是正に向けた総合的な対策」としては、次のような3本柱に沿って取り組みを進めていく考えが示されました。骨太方針2024(経済財政運営と改革の基本方針2024—賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現—)では、偏在解消に向けた「総合的な対策のパッケージ」を2024年末までに策定する方針が示されており、パッケージの「骨子」に該当するものと言えます。今後、「厚生労働省医師偏在対策推進本部」(本部長:武見厚労相)を設置し、具体策を急ピッチで詰めていくことになります。

▽医師確保計画の深化(関連記事はこちらこちら
→人口や医療アクセス状況等を踏まえ、都道府県における医師偏在の是正プランの策定、国における重点的な支援対象区域の選定を行う(2025年度に国で「第8次医師確保計画(後期)ガイドライン」を策定し、2026年度に各都道府県で「第8次医師確保計画(後期)」を策定。2027年度から各都道府県で「第8次医師確保計画(後期)」を開始する)

▽医師の確保・育成
→医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大、外来医師多数区域の都
道府県知事の権限強化、保険医制度における取扱い等の規制的手法を検討する(関連記事はこちら
→臨床研修の広域連携型プログラムの制度化。
→中堅以降医師等の総合的な診療能力等に係るリカレント教育について、2025年度予算の中で要求を行う(関連記事はこちら
→医師多数県の臨時定員地域枠の医師少数県への振り替えを検討する(関連記事はこちらこちら

▽実効的な医師配置
→地域医療介護総合確保基金等による重点的な支援区域の医療機関や処遇改善のための経済的インセンティブ、当該区域への医師派遣等を行う中核的な病院への支援、全国的なマッチング機能の支援等を検討する
→大学病院との連携パートナーシップについて、都道府県・大学病院にヒアリング等を行い、対応を検討する(2025年度に都道府県・大学病院と協議し、パートナーシッププランの内容を整理する。2026年度に各都道府県の「第8次医師確保計画(後期)」にプランを反映し、2027年度から開始する)

医師偏在対策(近未来健康活躍社会戦略2 240830)



他方、(7)の「後発品の安定供給体制の構築」に向けては、▼数量シェアや品目ともに多い企業は、再編・統合・適切な品目削除によるシェアの拡大や生産性・収益性の向上により、「総合商社型の企業」へ成長していく▼一定領域では他をリードする「領域特化型の企業」は、自社の強みを生かした領域へ品目を集約し、生産性の確保できる適切な規模で安定的な供給を担う▼1つの成分について多くの企業が参入し、少ないシェアを持ち合う状況は、安定供給や生産性の向上に資するとは言えず、成分ごとの過当競争を適正化し安定供給を確保する観点から、成分ごとの適正な供給社数は、理想的には5社程度とする—という「理想的な姿」を描いたうえで、5年程度の集中改革期間を設けて▼金融・財政措置(必要な設備投資等について金融・財政 措置等の支援策の検討等)▼独占禁止法との関係整理▼安定供給の法的枠組の整備▼収益と投資の好循環を生み出す価格や流通の在り方の検討—を行う方針を打ち出しました。

後発品企業の再編等(近未来健康活躍社会戦略3 240830)



また、(9)の「イノベーションを健康づくり・治療に活かす環境整備」としては、▼リアルタ イムの健康管理等に向けたウェ アラブルデバイスの活用促進(デバイスに記録されるライフログデータ(睡眠・歩数等)を含むPHR(個人の健康情報)について、標準型電子カルテのアプリケーション連携等を通じ、医療・介護現場での活用促進等を図る、認知症患者へのウェアラブル端末等のデジタル技術の活用も研究を進める)▼多様なイノベーション・最先端医療技術の開発支援(医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDISO)の機能強化、介護分野のサポート事業(仮称CARISO、CARe Innovation Support Office)の立ち上げ、AI等の革新的技術の活用を含むプログラム医療機器開発支援など)▼最先端医療への迅速なアクセスを可能にする、保険外併用療養費制度の見直し等の検討—などを進める方針が示されました。

イノベーションの医療・介護分野への実装(近未来健康活躍社会戦略4 240830)



今後の各種取り組みの動きに注目が集まります。



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