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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2024年度からの電子カルテ情報共有サービス運用に向け「6情報共有のコード」など細部を整理―医療等情報利活用ワーキング

2024.1.25.(木)

電子カルテ情報共有サービスの構築・稼働に向けた動きが加速化しており、6情報を共有するためのコード設定や、情報登録のタイミングなどの細部を詰める—。

1月24日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会の「医療等情報利活用ワーキンググループ」(以下、ワーキング)で、こうした方針が了承されました。今後、「技術解説書」にその内容が盛り込まれ、それをもとに電子カルテ情報共有サービスの構築、各ベンダーによる新たな電子カルテシステム開発などが進められ「2024年度からの電子カルテ情報共有サービス運用」(2024年度中にモデル事業を実施、2025年度中に本格運用)を目指します。

1月24日に開催された「第20回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ」

電子カルテ情報共有における細部仕様を決定、各ベンダの電子カルテ開発などにつなげる

Gem Medで繰り返し報じているとおり、より質の高い医療をより効率的・効果的に提供するために、医療DXの一環として「全国の医療機関や患者自身が診療情報(レセプト情報・電子カルテ情報など)を共有する仕組み」の構築・運用が進められています。この仕組みには、(A)「レセプト」情報を共有・閲覧可能とする仕組み(B)各医療機関・患者が電子カルテ情報を共有・閲覧可能とする仕組み—の2つがあり、いずれも「オンライン資格確認等システム」のインフラを活用します(関連記事はこちらこちら)。

医療情報の共有・閲覧に向けて2つの仕組みが動いている(医療部会(2)2 211209)

全国の医療機関での電子カルテ情報共有するにあたり「オンライン資格確認等システムのインフラ」を活用する方針を決定(医療情報ネットワーク基盤WG1 220516)



(B)の各医療機関・患者が電子カルテ情報を共有・閲覧可能とする仕組み(電子カルテ情報共有サービス)については、3月9日の健康・医療・介護情報利活用検討会「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」で大枠が固められ、▼本年度(2023年度)から社会保険診療報酬支払基金でシステム構築を行う▼2024年度から稼働する(2024年度中にモデル医療機関でスタート、2025年度中に本格運用する)—といったスケジュールが示されています(関連記事はこちら(医療DXの推進に関する工程表))。

電子カルテ情報共有サービス運用までのロードマップ(医療等情報利活用ワーキング12 240124)



電子カルテ情報共有サービスは、大きく次の3つのパーツで構成されます。
(1)診療情報提供書や退院時サマリを電子的に紹介先病院に共有・送付する仕組み
(2)全国の医療機関等で患者の電子カルテ情報(6情報)を閲覧できる仕組み
(3)患者本人等が、自身の電子カルテ情報(6情報)を閲覧・活用できる仕組み

厚生労働省は、大枠決定後も細部の詰めを行っており、1月24日のワーキングでは次のような細部方針が概ね了承されています。

▽6情報について、次のコードを用いて共有する
▼傷病名:ICD10対応標準病名マスター
▼検査、感染症:臨床検査項目基本コードセット内JLAC10もしくはJLAC11
▼薬剤禁忌:YJコード(薬剤の銘柄が特定できない場合には「一般名処方マスタ」(YJコードの先頭9桁+ZZZと同義)の記載を可能とする)
▼アレルギー:J-FAGYコード(ただし、テキストも入力可能としつつ運用方法を検討していく)
▼処方(診療情報提供書等に記載されたものを抽出し電子カルテ情報共有サービスの中で共有する):YJコード(処方箋等で銘柄を指定しない場合に限り一般名処方マスタの記載を可能とする)

※「各医療機関で運用しているコード」と「上記標準コード」との対照表作成などを今後、検討していく

情報共有コードについて(医療等情報利活用ワーキング1 240124)



▽6情報について、電子カルテ情報共有サービスへの登録は次のような取り扱いとする
▼感染症:次回診療日中(夜間も可)
→患者の誤解等を防止するため、医師から患者に検査結果を説明した上で、情報を登録する仕組みとする
▼検査:次回診療日中(夜間も可)
→患者の誤解等を防止するため、医療機関の判断で「検査結果が医療機関に報告された後、自動的に登録する」仕組み、「患者へ結果説明をしたうえで情報を登録する」仕組みを選択する
▼上記以外:診療当日中(夜間も可)

電子カルテ情報共有サービスへの登録方法について(医療等情報利活用ワーキング4 240124)

感染症・検査情報の運用について(医療等情報利活用ワーキング5 240124)



▽傷病名について、▼未告知(例えば、医師が患者の精神状態を考慮し病名告知を遅らせる場合もある)▼長期保存(医師が「5年を超えて保存・閲覧できるようにする必要あり」都判断することがある)▼未提供(当初診断時の病名と、詳細な検査後に確定した病名とが異なる場合があり、患者の誤解等を防止するために前者を未提供とすることがある)—の各フラグを設けるとともに、「主傷病」も登録可能とする(医学会や医療関連団体と詳細を詰めていく)

傷病名の運用について(医療等情報利活用ワーキング6 240124)

傷病名の表示イメージ(医療等情報利活用ワーキング7 240124)



▽情報の登録・閲覧期間について、次のように取り扱う
▼傷病名、アレルギー、薬剤禁忌、感染症:登録日時点で「終了日が5年を超えないもの」(終了日が入っていないものを含む)を登録対象とし、「登録日から5年以内のもの」(長期保存フラグつきは5年超を含む)を閲覧可能とする
▼検査:直近「1年分、または3回分」の情報を閲覧可能とする



▽薬剤禁忌については、「患者特有のアレルギー情報」を記載する(病名禁忌、妊娠等の状態による禁忌は現時点では取り扱わない)(医学会や医療関連団体と詳細を詰めていく)

薬剤禁忌・アレルギー情報について(医療等情報利活用ワーキング8 240124)



▽診療情報提供書について、次のような対応とする
▼紹介先が決まっている場合:診療情報提供書の記載欄にある「紹介先が閲覧可」を選択し、直接相手先に送付するため、医療機関の一覧から相手先医療機関名を選択する
▼転居等で紹介先医療機関が変わる可能性がある場合:診療情報提供書の記載欄にある「閲覧保留」を選択する(診療情報提供書は電子カルテ情報共有サービスに留まり、患者本人の同意がなければ紹介先医療機関は閲覧できない)

診療情報提供書の構造化情報について(医療等情報利活用ワーキング2 240124)

診療情報提供書の提供方法について(医療等情報利活用ワーキング3 240124)



▽健診情報については、「各健診に関する法令等で『必須』とされている項目」をベースに共有する

共有する健診情報項目案(医療等情報利活用ワーキング10 240124)



▽医療機関等窓口における顔認証カードリーダーシステムでの「本人同意」画面について、「電子カルテ情報共有の可否」画面を盛り込む

患者同意画面について(医療等情報利活用ワーキング9 240124)



こうした方針をワーキングは了承。「モデル運用などの中で限界や問題点が出てくると考えられ、丁寧に見て都度、必要な対応を行ってほしい」(長島公之構成員:日本医師会常任理事)、「情報セキュリティ確保に十分力をいれてほしい」(大山永昭構成員:東京工業大学科学技術創成研究院社会情報流通基盤研究センター特命教授)、「文書の構造化について、今後、医療DX全体の中で整理していくべき」(渡邊大記構成員:日本薬剤師会副会長)などの注文も踏まえて、細部を詰めたうえで近く示される「技術解説書 第1版」に盛り込まれます。

今後、技術解説書をもとに社会保険診療報酬支払基金による電子カルテ情報共有サービスのシステム構築、各ベンダーによる新たな電子カルテシステム開発などが進められ「2024年度からの電子カルテ情報共有サービス運用」(2024年度中にモデル事業を実施、2025年度中に本格運用)を目指します。

なお、電子カルテ情報共有サービスの費用負担について明確化を求める声も保険者団体から出ており、今後、社会保障審議会の医療部会や医療保険部会で議論される見込みです。

救急用サマリの手術情報表示期間、通常モードと同じく「5年間分」に延長

また、1月24日のワーキングでは、「レセプト情報を共有する仕組み」(上記(A)の仕組み)のうち「救急用サマリ」(意識不明等で救急搬送された患者に適切な治療を行うため、例外的に本人同意なしに過去の診療情報にアクセス可能な仕組み)について、「手術情報の表示期間を現行方針の『3年分』から『5年分』に延長する」方針も了承されています。

救急用サマリでは、迅速に必要な患者情報にアクセスするため、表示される患者情報は「直近にもの」に限定されます(通常のレセプト情報共有で表示される内容から厳選される)。

ただし「手術情報」については「通常のレセプト情報共有で表示される内容」と同一期間とされ、「通常のレセプト情報共有で表示される内容」が、これまでの「3年分」から「5年分」に延長されること踏まえ、表示期間の延長が行われるものです。

救急用サマリの表示期間見直し(医療等情報利活用ワーキング11 240124)



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