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「医師確保の必要性が高い地域」医療機関に勤務する医師の手当増額、そこへ医師を派遣する医療機関等への支援など検討—新地域医療構想検討会

2024.11.21.(木)

11月20日に開催された「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で、5つの医師偏在対策案が厚生労働省から提示されました。

これまでに示された、▼「医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関」を拡大する▼極めて外来医師が多数の区域で、新規開業希望者へ「地域で必要な医療機能」実施を強く要請する▼医師確保の必要性が高い地域を対象に経済的インセンティブを付与する—などの案を具体化したものです。新検討会の構成員からは賛否両論が出ており、さらに議論が続けられます。



別に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」や社会保障審議会・医療保険部会などでも議論が重ねられ、厚労省は年内(2024年内)の「総合的な対策パッケージ」とりまとめを目指します。

11月20日に開催された「第12回 新たな地域医療構想等に関する検討会」

「医師確保の必要性が高い地域」を都道府県で設定し、様々な支援を実施

Gem Medで報じているとおり、「医師の地域偏在、診療科偏在」対策論議が進んでいます。

厚生労働省は、8月30日に「近未来健康活躍社会戦略」の中で「医師偏在対策総合パッケージの骨子案」を提示し、9月5日には「厚生労働省医師偏在対策推進本部」で総合パッケージに向けた論点を整理しました(関連記事はこちら)。

医師偏在対策(近未来健康活躍社会戦略2 240830)



これを受け、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」では、「医学入学定員の在り方」(医師多数県で減員→医師少数県へ振り替え)や、「総合診療能力を持つ医師の養成」(総合診療専門医の養成、ベテラン医師へのリカレント教育など)を検討しています(関連記事はこちら)。

また、「社会保障審議会・医療保険部会」でも、医療保険制度で可能な対応の検討が始まっています。

さらに、新検討会では、▼重点医師偏在対策支援区域を定め、そこで医師偏在是正プランを策定して強力に偏在対策を進める▼規制的手法とインセンティブを組み合わせて偏在是正を促す—ことを検討しており、11月20日の新検討会では、これまでの議論も踏まえた次の5つの具体案が厚生労働省大臣官房の高宮裕介参事官(救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)から提示されました。そこでは、これまでの「職業選択の自由・営業の 自由に基づき医師が働く場所や診療科を自由に選択することができる」という考え方を変容させ、▼医師の「適切な配置」へと重心をシフトしていく▼若手医師中心の偏在対策から「全世代の医師へのアプローチ」に拡大していく▼「保険あってサービスなし」との事態を避けるため、国、地方自治体、医療関係者、保険者等の全ての関係者が協働して医師偏在対策に取り組む—ことの重要性を再確認しています。
(1)新たに「重点医師偏在対策支援区域」を設定し、医師偏在是正プランの策定を求めて強力に医師偏在対策を進める
(2)医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大、医師少数区域等での勤務経験期間の延長を行う(規制的手法1)
(3)外来医師多数区域における新規開業希望者へ「地域で必要な医療機能」を要請する仕組みの実効性を確保する、保険医療機関の管理者要件を設定する(規制的手法2)
(4)経済的インセンティブを付与する
(5)中堅・シニア医師等と医師少数区域医療機関との全国的なマッチング機能支援や、都道府県と大学病院等の連携パートナーシップ協定締結を促す



まず(1)では、「今後も一定の定住人口が見込まれるが、人口減のスピードよりも医療機関減のスピードのほうが早い地域」(へき地に限らず)を「重点医師偏在対策支援区域」として設定し、強力な「医師偏在是正プラン」を策定し、効果的な偏在対策実行を推し進めるものです。

「重点医師偏在対策支援区域」は、下記のような【厚生労働省が提示する候補区域】(案)を参考にして、都道府県で「地域の実情に応じて、▼医師偏在指標(人口10万対医師数をベースに高齢化や働き方ななどを勘案して、地域における医師数が相対的に多いのか、少ないのかを数値化したもの)▼可住地面積あたり医師数▼住民の医療機関へのアクセス▼診療所医師の高齢化率▼今後の人口動態—などを考慮して、地域医療対策協議会(地対協:医療関係者や地域住民、関係市町村等で構成される地域医療の在り方を考える会議)・保険者協議会で協議して選定する」考えが提示されています。

【厚生労働省が提示する候補区域】(案)
次のいずれかに該当する区域
▽各都道府県で医師偏在指標が最も低い2次医療圏(47医療圏)
▽医師少数県の医師少数区域
▽医師少数区域かつ可住地面積当たりの医師数が少ない2次医療圏(全国下位1/4)
→この3つのいずれに該当する2次医療圏は全国で100程度(2次医療圏の3分の1弱)あり、面積では全国の約43%、人口では全国の約15%、医師数では全国の約10%を占める



【厚生労働省が提示する候補区域】(案)は2次医療圏が想定されていますが、高宮参事官は「地域の実情に応じて2次医療圏単位、市区町村単位、地区単位などで選定できる」ようにする考えも示しました。例えば「2次医療圏単位では、【厚生労働省が提示する候補区域】(案)の要件には合致しないものの、その中の一部地域(市町村、さらに狭いエリア)では医師確保が極めて困難であるため、重点医師偏在対策支援区域に設定しよう」と考えることも可能となる見込みです。

都道府県は、この「重点医師偏在対策支援区域」を対象として、▼支援対象医療機関▼必要医師数▼医師偏在是正に向けた取り組み—などを盛り込んだ「医師偏在是正プラン」を新たに作成し、強力に医師偏在対策を推進していきます。「医師偏在是正プラン」は、厚労省が2025年度に策定するガイドラインをベースに、地域医療対策協議会・保険者協議会とも協議して作成することになります(2026年度に各都道府県で作成)。

なお、後述する「重点医師偏在対策支援区域で承継・開業する診療所に対する支援」は、「医師偏在是正プラン」に先駆けて実施(2025年度から順次実施)する考えも示されています。



こうした考えは多くの構成員に歓迎されており、土居丈朗構成員(慶応義塾大学経済学部教授)は「すべての都道府県で医師偏在対策の重要性を認識し、『他県(医師少数の県)だけの話』ではない点を認識してもらえることになる」と評価しています。また、江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)や大屋祐輔構成員(全国医学部長病院長会議「地域の医療及び医師養成の在り方に関する委員会」委員長)らは「地域の実情を十分に汲んで、重点医師偏在対策支援区域の設定などを行うことが重要」と注文しています。

「医師少数区域等での勤務経験を求める管理者」要件の対象を公的病院・国立病院等に拡大

また、規制的手法の1つ目である(2)の「医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大、医師少数区域等での勤務経験期間の延長」については、高宮参事官から次のような具体案が示されました。

まず、対象医療機関は、現行の「地域医療支援病院」(約700病院)から、「医療法第31条で医師の確保に関する事項の実施に協力することなどが求められている公的医療機関や国立病院機構・地域医療機能推進機構等の病院を追加する」(全体で約1600病院)考え方が示されました。
(参考)【医療法第31条に規定する公的医療機関の開設者】(1951年厚生省告示)
・地方公共団体の組合
・国民健康保険団体連合会
・日本赤十字社
・社会福祉法人/恩賜/財団/済生会
・全国厚生農業協同組合連合会の会員である厚生(医療)農業協同組合連合会
・全国厚生農業協同組合連合会の会員である社会医療法人(医療法第42条の2第1項の認定を受けたものとみなされたものに限る)
・社会福祉法人北海道社会事業協会



もっとも、これまでに「最近の若手医師は病院管理者(院長等)になることを厭う傾向にある」「病院管理者には広範なマネジメント能力が求められ、必ずしも医師少数区域等での勤務経験でそうした能力が醸成されるわけではない」などの指摘があることも踏まえ、次のような、言わば「緩和措置」もセットで提案されています。
▽医師少数区域等に所在する対象医療機関の管理者となる場合は、その後に医師少数区域等の勤務を経験するため対象から除外する

▽地域医療対策協議会において調整された医師派遣の期間、地域医療対策協議会で認められた管理者に求められる幅広い経験の機会となる期間(例えば大学病院等の医育機関で医療従事者等の指導等に従事した期間等)の一部を、医師少数区域等での勤務経験の期間として認める



また、「医師少数区域等での勤務経験期間」については、現行の「6か月以上」から「1年以上」に延長すること、ただし▼医師免許取得後9年以上経過している医師では「断続的な勤務日」の積み上げでよい▼医師免許取得後9年未満の医師では、「原則6か月以上の連続勤務(妊娠・出産等による中断は可)+残りの期間は断続的な勤務日の積み上げでよい」とうする—考えが示されました。



こうした提案に対しては、▼全病院の管理者に「医師少数区域等での勤務経験」を要件化することが期待されるが、確かにハードルが高く、厚労省の拡大案は理解できる。「断続的な勤務日の積み上げ」について、赴任先の地方病院と派遣元の中核病院を1,2か月単位で行き来できるような仕組みとするなどの工夫をすべき(望月泉構成員:公益社団法人全国自治体病院協議会会長)▼ただちに医師偏在是正効果は現れないが、「地域医療の確保に責任を持つ公的病院の管理者が、より一層医師確保に注力する契機となることが期待できる。拡大範囲の限定も適切である(尾形裕也構成員:九州大学名誉教授)▼医師少数区域へ赴任する医師へのインセンティブ(6か月間に1週間の連続勤務など)とセットで考えることが重要である。「医師少数区域で勤務したい」と若手医師が考えるような環境整備が必要である((岡俊明構成員:日本病院会副会長)▼「全病院への拡大」論もあるようだが非現実である。若手医師における「6か月間の連続勤務」部分については、たとえば「2か月勤務×3」などの手法も認めるべき(江澤構成員)▼反対はしないが「良い手法」ではない。大病院の院長の資質を高める仕組みが必要である(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)▼医師少数区域勤務で院長の資質が醸成されるわけではないが、「医育機関での医師指導経験」などを勘案することは有益だと思う。効果のほどは実施して見なければわからない(大屋構成員)▼公的医療機関だけでなく、他の医療機関にも拡大していくべき(松本真人参考人:健康保険組合連合会理事(河本滋史構成員(同連合会専務理事)の代理出席))▼若手医師が皆「将来は病院長になりたい」と考えているわけではなく、効果のほどは疑問である。もっとも医師少数区域での勤務期間延長は重要である。1年程度勤務しなければ、地域の実情をきちんと理解することはできない(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)—など多様な意見が出ています。望月構成員はGem Medに対し「地方病院が欲しているのは、『週に数日』勤務してくれる医師よりも、入院患者を一定期間(少なくとも1か月程度)担当してくれる医師、宿日直を担当してくれる医師である。そのため断続勤務については『少なくとも1か月間』を最小単位と考えるべき。医師少数区域の医療現場の声を十分に聴いて案を練り上げてほしい」旨のコメントを寄せています。

もっとも上記の厚労省案に「反対」する意見は出ておらず、今後、構成員意見を踏まえた調整が進められるものと見られます。

「外来医師が極めて多い地域」での新規クリニック開業では、「必要な機能」実施を強く要請

さらに、規制的手法の2つめである(3)の「外来医師多数区域における新規開業希望者へ『地域で必要な医療機能』を要請する仕組みの実効性確保」に関しては、▼「外来医師が極めて多い地域」において、より強力に「地域で必要な医療機能の要請を行う」こととする▼「外来医師多数区域」(「極めて多い地域」以外の外来医師多数区域)においては、現行の仕組み(通知)を維持する—という2段構えの対応を高宮参事官は提案しています。

高宮参事官は、前者の「外来医師が極めて多い地域において、より強力に『地域で必要な医療機能』の要請を行う」仕組みについて分かりやすいフロー図を示しており、▼「外来医師が極めて多い地域」においてクリニックを新規開業する場合には、開業の一定期間前(例えば3か月前など)に、提供する予定の医療機能等を記載した届け出を求める▼「地域で必要な機能実施」記載がない場合には、「外来医療の協議の場」への参加を求める▼開業後も逐次「地域で必要な機能実施」の状況を確認し、当該機能実施を都道府県から要請する▼要請に従わない(当該機能を実施しない)場合には、医療機関名の公表、保険指定上の対応(指定期間を通常「6年」から「3年」に短縮するなど)を行う—など、段階的に厳しく対応する(ペナルティを課す)考えが示されています。現在の仕組み(外来医師多数区域での新規開業にあたり「地域で必要な医療機能」実施を求める仕組み)は通知で規定されるにとどまっていますが、新たな仕組みは「医療法」に位置付け、より強力に「地域で必要な医療機能」実施を求めることが可能になると期待されます。

(3)の外来医師過多区域における新規開業希望者への地域で不足している医療機能の提供等の要請等のフローイメージ(案)(新地域医療構想検討会4 241120)



また、一般の「外来医師多数区域」(「極めて多い地域」以外の外来医師多数区域)においては、現行の仕組み(通知)が維持されます。

この提案内容、とりわけ「ペナルティ」に対しては、「要請があるにもかかわらず、必要な医療機能実施をしない場合には『保険指定取り消し』などの厳しい対応も検討すべき」(土居構成員、松本参考人)という意見がある一方、「保険指定取り消しとなれば、事実上の『開業制限』となり憲法に違反する可能性が高くなる。極めて困難ではないか」(今村知明構成員)、「『保険指定取り消し』などの厳しい対応は憲法問題にもつながり、認めるわけにはいかない」(江澤構成員)などの相反する意見が出ています。

高宮参事官は、例えば「要請に従わない場合の保険指定取り消し」などが制度上可能であるのかを政府内で調整している(原則として「憲法に反する制度」制定などは行えない)旨を答弁しており、さらに議論が継続されます。

なお、「保険指定」に関する議論は、医療保険制度を所管する社会保障審議会・医療保険部会でも議論する必要があります。

このほか、上記の提案に対しては、▼一般的にはクリニック開業の1年程度前から準備を始めるため、開業『3か月』前の届け出では遅すぎる(高橋泰構成員:国際医療福祉大学大学院教授、江澤構成員)▼クリニックだけでなく病院外来も対象に含めて検討すべき。将来的には「診療科別の医師配置状況」を見ることも視野に入れるべき(土居構成員)▼外来医師が極めて多い地域とは、現在の指標(外来医師偏在指標)に照らせば「外れ値」が対象となる。エリア設定は実際に現地の状況を確認するなど慎重に検討すべき(今村知明構成員)—などの声も出ています。



関連して「保険医療機関に運営管理の責任者として管理者を設け、管理者には『一定期間の保険診療に従事すること』などを要件とする」考えも示され、多くの構成員が賛同していますが、今村知明委員は「都会で美容医療などの自由診療分野に医師が流出してしまう」ことを心配しています。

公費・保険料を組み合わせて「医師確保の必要性が高い地域」を経済的に支援

一方、(4)の「経済的インセンティブ」に関して高宮参事官は、主に、上述した「重点医師偏在対策支援区域」における医師確保を推進するために、都道府県の「医師偏在是正プラン」に基づいて経済的インセンティブを講じる考えを示しています。

地域によっては「医師の高齢化、後継ぎ不足」などによりクリニックの閉院が今後続くと予想されます。高宮参事官は一定の仮定(80歳で引退、承継なし、当該2次医療圏で新規開業なし)を置いた場合、多くの地域で「2次医療圏内のクリニックが半減する」との試算結果を提示しています。こうした地域が「重点医師偏在対策支援区域」候補になってくると思われ、これらの地域では「早急な対策」が求められる、「早期の経済的インセンティブ付与」も検討されます(下図では北海道・東北ブロックを例示)。

北海道における現在の診療所医師数と2040年の見込み(新地域医療構想検討会2 241120)

東北における現在の診療所医師数と2040年の見込み(新地域医療構想検討会3 241120)



▽都道府県の「医師偏在是正プラン」全体の策定にあわせて「2026年度」から経済的インセンティブを本格実施する

▽「重点医師偏在対策支援区域」で承継・開業する診療所に対する支援を、緊急的に先行実施(2025年度中からの実施)を行う

▽「重点医師偏在対策支援区域」の一定の医療機関に対して、▼派遣される医師・従事する医師への手当増額の支援▼土日の代替医師確保などの医師の勤務・生活環境改善の支援—を行う

▽「重点医師偏在対策支援区域」内の医療機関に医師を派遣する「派遣元医療機関」に対する支援を行う



こうした支援については、当然「相応の財源」が必要になりますが、高宮参事官は▼国で「事業費の総額」を設定し、その範囲内で人口、可住地面積、医師の高齢化率、医師偏在指標などに基づいて「都道府県ごとの予算額の上限」を設定し、その範囲内で支援を行う▼特定の地域に診療報酬で対応した場合に「患者負担の過度の増加を招く」恐れがあるもの(例えば医師少数区域に新加算を設けた場合には、当該区域の住民は加算の1-3割を負担しなければならなくなる)について、全被保険者(いわば国民全体)が広く薄く負担するよう「保険者からの拠出」を求める▼医療給付費全体の中でバランスをとる観点から、地域間・診療科間の医師偏在是正のための「診療報酬での対応」も検討する—との考えも示しています。

「公費・保険料」(診療報酬もこの2者を主な財源としている)を組み合わせて「医師偏在是正を進めていく」イメージです。

このうち「保険者からの拠出」(=保険財源の活用)について、川又竹男構成員(全国健康保険協会理事)は「医療提供体制整備の責任は都道府県にある。保険者に負担を求めるためには納得できる説明が必要である。保険料を医療提供体制に直接拠出することは、医療保険制度の根幹にも関連する事項であり、社会保障審議会・医療保険部会での十分な議論が必要だ」と難色を示していますが、尾形構成員は「診療報酬は『医療機関の投資的経費』も一定程度カバーしていると考えられ、医療提供体制整備のために保険財源を投入することに一定の合理性がある。保険者にも地域の医療提供体制を支える役割を期待している」と理解を示しています。

このほかインセンティブ対しては、▼地域の中核病院等に助成を行って「医師の増員」を図り、そこから医師少数区域等の医療機関に派遣してもらう仕組みが現実的ではないか(猪口雄二構成員:全日本病院協会会長)▼重点医師偏在対策支援区域では、患者数も少なく「医療機関の運営」が困難なことが予想される。承継・開業だけでなく、運営費支援なども検討してほしい(江澤構成員)▼例えば診療報酬にメリハリをつけ、医師少数区域等に手厚くすることも考えらえる。その場合には、必ず財政中立の視点を持ち、別の地域では減算・算定制限などをセットで行うべき(松本参考人)—などの意見が出されました。

支援の内容や財源(誰がどの程度負担するのか)などを更に詰めていく必要がありますが、「経済的インセンティブの大枠が徐々に固まってきている」と見ることができそうです。



さらに、(5)では「中堅・シニア医師等と医師少数区域医療機関との全国的なマッチング機能支援」、「都道府県と大学病院等の連携パートナーシップ協定締結の推進」などの考えを高宮参事官が示しており、「積極的に進めるべき」との声が江澤構成員や山口構成員らから出されています。

(5)の全国的なマッチング機能の支援等、都道府県と大学病院等との連携パート
ナーシップ協定(案)(新地域医療構想検討会4 241120)



今後、上記の5案を軸に、さらに「恒久定員内地域枠の設置促進」などの医師養成課程における対策なども盛り込んで「「総合的な対策パッケージ」とりまとめを目指します。



ただし、▼医師偏在対策は世界的にも難しく、規制強化や報酬対応などの乱暴な議論になりがちであるが、「偏在がなぜ生じるのか」をしっかりと原因分析し、そこに1つ1つ対応していくことが必要である。診療報酬対応では「診療報酬体系全体の見直し」も視野に入れた議論なども必要になってこよう。医師だけでなく、他の医療職種も含めて、各地域で「どのような医療提供体制を整えるのか」という全体のテーマの中で偏在対策を考えていく必要がある(香取照幸構成員:未来研究所臥龍代表理事/兵庫県立大学大学院特任教授)▼フランスのように、「地域の医療提供体制を診断し『不足する機能』を補ってもらうことを、行政と医療機関とが契約・実行する仕組み」を考えるべき。本邦でも北海道夕張市においては「行政と札幌市の医療機関とが契約し、チームでの診療支援を行う」取り組み(チーム全体が派遣されるため診療の質も高く、円滑な医療提供がなされている)がなされており、こうした好事例を参考にしてはどうか(松田晋哉構成員:産業医科大学教授)▼医師少数区域での医療機能を考える際には、自治体の責任で「撤退を前提にした体制整備」を考える必要がある(伊藤伸一構成員:日本医療法人協会会長代行)—といった、より根本的な議論を求める声もあります。原因分析などは「年末のパッケージ作成」には間に合いませんが、今後の重要な検討テーマの1つとなってきそうです。



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