新地域医療構想の内容が大筋でまとまる!「急性期拠点病院の集約化」を診療内容・施設数の両面で進める—新地域医療構想検討会
2024.12.9.(月)
12月6日に開催された「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で、「新たな地域医療構想」の内容が大筋で了承されました。遠藤久夫座長(学習院大学長)と厚生労働省で最終調整を行い、近く正式とりまとめ→社会保障審議会・医療部会への報告→年明け(2025年)の通常国会への医療法改正案提出と流れていきます。
新地域医療構想のポイントとしては、▼新地域医療構想は「入院医療の機能分化・連携の強化」にとどまらず、外来医療や在宅医療、医療・介護連携なども包含した「総合的な医療提供体制改革ビジョン」とする▼新地域医療構想を、医療計画の言わば上位計画に位置付ける▼病床機能報告に加え、新たに「医療機関機能」の報告求める—ことなどが目立ちます。
基準病床数は「将来の病床の必要量」を「勘案」して設定する
2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が、新検討会で精力的に進められ、12月6日の会合において一応の決着を見ました(最終の文言調整などが残っている)。
既に報じた内容と重複しますが、「とりまとめ案」の内容を眺めてみましょう。「基準病床数と必要病床数との関係」などが、既に示された原案よりも「やわらかい」ものとなっています。
【新地域医療構想の位置づけ、医療計画との関係】
▽新たな地域医療構想においては、入院医療だけでなく外来医療・在宅医療、介護連携等も対象とすることが適当であり、以下のように対応する
・議題に応じて協議を行う区域や参加者を設定し、医療関係者、介護関係者、保険者、都道府県、市町村等の関係者の協議を実施する
・実効性のある議論に資するよう区域ごとに議論すべき内容や議題に応じた主な参加者等について新たな地域医療構想の策定・推進に関するガイドラインで明確化する
・データをもとに地域の外来・在宅・介護連携等に関する状況や将来の見込みを整理して課題を共有する
・地域の実情を踏まえ課題への対応を検討・協議して、必要な外来医療・在宅医療の提供のための取り組みを行う
▽▼2025年度に国で新たな地域医療構想の策定・推進に関するガイドラインを検討・作成する▼都道府県において、医療機関からの報告データ等を踏まえながら2026年度に地域医療提供体制全体の方向性、必要病床数の推計等を検討・策定を行う▼2027年度から2028年度までに医療機関機能に着目した地域の医療機関の連携・再編・集約化の協議等を行う—
→現行の地域医療構想の取り組みは、2026年度も継続する
▽新たな地域医療構想は「医療計画の上位概念」と位置付ける
→医療計画は、新たな地域医療構想の実行計画として、新たな地域医療構想に即して5疾病・6事業、在宅医療、医師確保、外来医療等の具体的な取り組みを定める
▽基準病床数と必要病床数の整合性を確保する
・医療計画の基準病床数について、地域医療構想の病床の必要量も勘案した算定を検討する(原案では「必要量を上限する」とされていた部分を緩和する)
・病床の必要量を超えて増床等を行おうとする場合には、都道府県は「地域医療構想調整会議で増床等の必要性が認められた」場合に限り、基準病床数の範囲内で増床等の許可を行えるようにする(原案よりも柔らかい記述に修正)
・既存病床数が基準病床数を上回る場合、一般病床・療養病床の許可病床数が必要病床数を上回る場合は、地域の実情に応じて「病床の機能転換・減少等に向けて、必要な医療機関に対し、調整会議への出席を求めることができる」ようにする(原案の「ペナルティ」付与は削除された)
【病床機能・医療機関機能の報告】
▽診療報酬における届出等に応じた客観性を有する報告とし、一定の医療機関の役割を明確にする仕組みとする
●病床機能報告
▽引き続き4区分としつつ、2040 年に向けて増加する高齢者救急等の受け皿として「急性期と回復期の機能をあわせもつ」ことが重要となること等を踏まえ、これまでの「回復期」に代えて、「高齢者等の急性期患者について、治療と入院早期からのリハビリテーション等を行い、早期の在宅復帰を目的とした治し支える医療を提供する機能」及びこれまでの回復期機能」を【包括期機能】として位置づける
▽「将来の病床数の必要量」の推計については、受療率の変化等を踏まえ定期的に(例えば将来推計人口の公表ごと等に)見直しを行う
→これまでの推計方法を基本としつつ、受療率の変化等も踏まえ、基本的に診療実績データをもとに機能区分ごとの推計を行う
→ガイドラインの検討において、改革モデルも含め具体的な推計も検討する
●医療機関機能報告
▽2次医療圏等を基礎とした構想区域ごとに確保すべき医療機関機能として、▼高齢者救急・地域急性期機能▼在宅医療等連携機能▼急性期拠点機能▼専門等機能—を位置付ける
・高齢者救急・地域急性期機能
→高齢者をはじめとした救急搬送を受け入れるとともに、必要に応じて専門病院や施設等と協力・連携しながら、入院早期からのリハビリテーション・退院調整等を行い、早期の退院につなげ、退院後のリハビリテーション等の提供を確保する
→地域の実情に応じた幅をもった報告のあり方を設定する
・在宅医療等連携機能
→地域での在宅医療の実施、他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間対応や入院対応を行う
→地域の実情に応じた幅をもった報告のあり方を設定する
・急性期拠点機能
→地域での持続可能な医療従事者の働き方や医療の質の確保に資するよう、手術や救急医療等の医療資源を多く要する症例を集約化した医療提供を行う
→報告に当たっては、地域シェア等の地域の実情も踏まえた一定の水準を満たす役割を設定し、アクセスや構想区域の規模も踏まえ「構想区域ごとにどの程度の病院数を確保するか」設定する
・専門等機能
→上記の機能にあてはまらないが、集中的なリハビリテーション、中長期にわたる入院医療機能、有床診療所の担う地域に根ざした診療機能、一部の診療科に特化し地域ニーズに応じた診療を行う
▽広域な観点で確保すべき医療機関機能として「医育および広域診療機能」を位置付ける
→大学病院本院が担う、広域な観点で担う常勤医師や代診医の派遣、医師の卒前・卒後教育をはじめとした医療従事者の育成、広域な観点が求められる診療を総合的に担い、また、これらの機能が地域全体で確保されるよう都道府県と必要な連携を行う
【構想区域】
▽引き続き2次医療圏を原則としつつ、人口規模20万人未満・100 万人以上の構想区域など「医療需要の変化や医療従事者の確保、医療機関の維持、アクセス等の観点から医療提供体制上の課題がある」場合には、必要に応じて構想区域を見直す
→2次医療圏の見直しに時間を要する場合は、構想区域の合併・分割等を先行して行う
▽広域な観点での区域は、都道府県単位(必要に応じて3次医療圏)で設定する
▽在宅医療等については必要に応じて二次医療圏より狭い区域(市町村単位や保健所圏域等)を設定する
【地域医療介護総合確保基金】
▽2027 年度から、新たな地域医療構想の取り組みを推進するため、病床の機能分化・連携の支援に加え、医療機関機能の確保に向けた取り組みを支援する
【都道府県知事の権限】
▽医療機関機能の報告内容が実態に合わない医療機関に対して、都道府県は報告の見直しを求めることを可能とする
すでに幾度も議論を重ねてきた内容であり、異論・反論は出ていません。ただし、構成員からは▼医療機関機能について、必要に応じて「主たる機能」の明示を求めることを検討すべき(岡俊明構成員:日本病院会副会長)▼医療提供体制維持のために「医療従事者の確保」が重要である旨を強調すべき(猪口雄二構成員:全日本病院協会会長、玉川啓構成員:福島県保健福祉部次長(健康衛生担当)、吉川久美子構成員:日本看護協会常任理事)▼新たな「包括期」機能について、詳しい説明なども行うべき(望月泉構成員:全国自治体病院協議会会長)▼構想区域の見直し等に向けて事前の調査などを行い、2次医療圏と異なる区域設定などをしやすくする必要がある(松田晋哉構成員:産業医科大学教授)▼「入院医療」に偏っている嫌いがあり、外来医療や在宅医療などに関する補足を行ってはどうか(香取照幸構成員:未来研究所臥龍代表理事/兵庫県立大学大学院特任教授)▼病床機能・医療機関機能について「客観性」を重視した基準を設定すべき(松本真人参考人:健康保険組合連合会理事)▼ガイドラインでは、前提を変えた「複数のシナリオ」を設け、それぞれに対応する病床の必要量などを設定すべき(土居丈朗構成員:慶応義塾大学経済学部教授)—などの注文がついています。
遠藤座長と厚労省で最終調整を行い、近く正式とりまとめを行います。その後、社会保障審議会・医療部会への報告→年明け(2025年)の通常国会への医療法改正案提出と流れていきますが、上記意見はガイドライン策定論議の中で重視されることになるでしょう。
なお、検討会では「医師偏在対策」論議も続いていますが、今村英仁構成員(日本医師会生涯教育・専門医の仕組み運営委員会センター長)は「外部から、より厳しい・強い規制、例えば『保険指定を行わない仕組み』の導入なども指摘されているが、憲法に抵触し、また合理性もない」と強い口調で指摘し、検討会での慎重な議論を要請しています。
なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。
GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。
ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。
●GHCのサービス詳細はこちら
従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。
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