新たな地域医療構想、「病院機能の明確化」「実態にマッチした構想区域の設定」「病院経営の支援」など盛り込め—日病提言
2024.10.10.(木)
2040年頃を目指す【新たな地域医療構想】には、「病院機能の明確化」「実態にマッチした構想区域の設定」「病院経営の支援」「実態を体現する名称設定」「構想と医療計画との関係整理」などを盛り込むことが必要である—。
日本病院会が10月8日、福岡資麿厚生労働大臣に宛ててこうした内容の提言「『新たな地域医療構想』に関する意見書」を提出しました(日病サイトはこちら)。
厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)では、年内の意見とりまとめを目指した議論を続けており、今後の検討会論議に注目が集まります(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
診療報酬で賄えない部分へ、地域医療介護総合確保基金を活用した病院経営支援を
2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が検討会で進んでいます。2025年度までに、人口の大きなボリュームゾーンをしめる「団塊世代」がすべて後期高齢者となり、医療ニーズが増大・複雑化することを受け、「2025年をゴールとする地域医療構想」の実現が求められています(関連記事はこちらとこちら)。
2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)▼人口構造の変化は、地域によって大きく異なる—ことなどを踏まえ、「2040年頃を見据えた新たな地域医療構想」を策定し、これに基づいて医療提供体制を地域ごとに改革していくことが求められているためです。
日本病院会では、こうした「新たな地域医療構想」論議に資するよう、幹部(会長、副会長、常任理事)会議で「日病の考え方」を取りまとめ、今般、福岡厚労相に提出しました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
まず、新地域医療構想では、既に検討会で「入院医療だけでなく、外来医療、在宅医療、医療・介護連携、医療機関機能など幅広い医療提供体制の将来像を描く」方針が決定しています(関連記事はこちら)。この点に関連して日病では▼「医療・介護」のみならず、「福祉ひいては生活をどう守るか」という視点が必要となる▼現存する医療機関とそのスタッフ、地域の交通事情・通信状況など医療へのアクセスを考慮した医療提供生体を考える必要がある—と訴えています。例えば「再編・統合」を検討するにあたっては、「地域住民の医療へのアクセス」はもちろん、「スタッフの生活維持」なども検討するイメージと言えるでしょう。
また、医療圏(構想区域)については、「85歳以上高齢者に多くみられる誤嚥性肺炎などの医療資源投入量を必ずしも多く必要としない疾患」と「65歳以下で発生頻度の高い手術等の、多くの医療資源を必要とする疾患」とを分けて、実態(人口構成、疾病構造、医療機関などの資源状況)に即したエリアを設定しなおすべきと強調しています。
他方、これまでの「病床・病棟の機能」に加え「外来機能」「救急機能」「在宅機能」も勘案した【医療機関の機能】を明確にするよう改めて進言。併せて、▼身近な地域における日常的な診療、かかりつけ医機能を担う病院を含めた医療機関を確保・明示する▼85歳以上高齢者への対応、かかりつけ医機能については「既存の中小病院」を活用し、十分な財政支援を行う▼精神疾患対応を含めた検討を行う—ことも求めています。これらの点は、すでに検討会でも検討が進んでいます(関連記事はこちらとこちら)。
このほか、▼診療報酬では賄えない部分への、地域医療介護総合確保基金を活用した補助による病院経営維持(関連記事はこちら)▼地域医療構想と医療計画との関係に関する法体制の整理(関連記事はこちら)▼名称を例えば「地域における医療および介護との連携に関する構想」など、内容を体現するものへの見直し—などを行うことも求めています。
今後の検討会論議にどう生かされるのか、注目する必要があります。
なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。
GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。
ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。
●GHCのサービス詳細はこちら
従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。
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