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新たな地域医療構想に向け9月にも提言を行う、医療法等の規定や構想区域の在り方など抜本な見直しが必要—日病・相澤会長

2024.7.9.(火)

新たな地域医療構想論議が進んでいるが、例えば「医療法における医療計画と地域医療構想の関係」「構想区域の考え方」「2次医療圏の在り方」などを抜本的に見直す必要がある—。

日本病院会幹部(会長・副会長・常任理事)の間で、こういった考えがほぼまとまったことが、7月9日の定例記者会見で相澤孝夫会長から明らかにされました。

日病では8月に意見を取りまとめ、9月にも厚生労働省に提言を行う予定です。新たな地域医療構想については、厚労省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で議論が進められており、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを行う予定です。

7月9日にオンラインの定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

医療法は「地域医療のビジョン明確化→ビジョン実現のための計画策定」とすべき

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化に対応できる効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため、【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。

そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想、新地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。



検討会では、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを、年内(2024年内)に最終とりまとめを行う予定で議論が進められており、日病でもこのスケジュールに間に合うように考え方・提言をとりまとめるべく幹部での議論が進められています(関連記事はこちらこちらこちら)。

7月9日の定例記者会見で相澤会長は、日病幹部の間で次のような考えがほぼまとまったことを報告しました。

(1)地域医療構想は「2040年頃を見据えた将来の医療提供体制像」、医療計画は「直近6年間を見た医療提供体制像」という役割分担をするのであれば、医療法や医療介護総合確保法(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律)の規定を見直す必要がある

(2)地域医療構想「区域」について、テーマに応じた「重層的な設定」を行うことを明確化する必要がある



まず(1)について見てみましょう。現在、医療法では以下のように「医療計画の一部分、一要素が地域医療構想である」という規定をしています。

【医療法】(Gem Med編集部で抜粋・改変)
第37条の4 都道府県は、基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るための計画(医療計画)を定める
 2 医療計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
  一 居宅等における医療の確保の目標に関する事項
  二 居宅等における医療の確保に係る医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分
    担・業務連携確保体制)に関する事項
  三 医療連携体制における医療提供施設の機能に関する情報提供推進に関する事項
  四 生活習慣病その他の「国民の健康の保持を図るために特に広範かつ継続的な医療の
    提供が必要と認められる疾病」の治療・予防に係る事業に関する事項
  五 次に掲げる医療の確保に必要な事業
    イ 救急医療、ロ 災害時における医療、ハ 感染症医療、ニ へき地の医療、ホ 周産
    期医療、ヘ 小児医療、ほか
  六 居宅等における医療の確保に関する事項
  七 地域における病床の機能の分化及び連携を推進するための基準として厚生労働省令
    で定める基準に従い定める区域(構想区域)における次に掲げる事項を含む将来の医療
    提供体制に関する構想(地域医療構想)に関する事項
    イ 構想区域における機能区分ごとの将来の病床数の必要量、ロ イに掲げるもののほ
    か、構想区域における病床の機能の分化・連携推進のために必要なもの
  八 地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進に関する事項



しかし、検討会で地域医療構想は「2040年頃を見据えた将来の医療提供体制像」、医療計画は「直近6年間を見た医療提供体制像」という役割分担を固めるのであれば、この医療法規定は実態に合わなくなります。

さらに医療介護総合確保法では、地域医療構想について、「医療計画・介護保険事業(支援)計画の整合性を図る上位概念である『総合計画』の一要素として、病床の機能分化・連携の推進に関する地域医療構想を位置づけ」ていますが、同様に実態と規定とのミスマッチが生じます。

あわせて、日病幹部の間では「今後増大していく高齢者医療ニーズへの対応が極めて重要となり、これまでの『病床の機能分化・再編』計画にとどまらず、『外来・在宅医療、医療・介護連携、医療機関の機能分化・連携の推進』なども含めた、地域の医療提供体制『全体』の将来像を新たな地域医療構想で描くことになる」点を重視。この点でも、現行の「病床の機能分化・再編に関する計画」という規定が実態に合わなくなります。

そこで日病では「医療法、医療介護総合確保法の立て付け、記載内容を根本的に見直す必要がある」との考えをまとめています。



また(2)では、地域医療構想を策定し、実現していくエリアとなる「地域医療構想区域」について、外来医療や在宅医療、医療・介護連携などでは「市町村単位」や、より狭い「日常生活圏域」などでの協議が必要であるとの考えをまとめています。上述のとおり、新たな地域医療構想では「増大する高齢者医療ニーズへの対応」が極めて重要なテーマとなるため、テーマに応じた重層的な構想区域を柔軟に設定していく必要があると相澤会長は強調します。

あわせて、入院医療を協議する「2次医療圏」についても「疾患別、事業別の医療圏を考えていく必要がある」との考えもまとまっています。例えば、少子化が進む中では「お産」件数や小児患者数が減少していきます。このため周産期医療・小児医療については病院経営の維持という視点も加味し「2次医療圏よりも広域での医療提供体制」を考える必要があるでしょう。一方、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患対応では「一刻を争う」「時間との勝負」が求められるため「より狭いエリアでの医療提供体制」を考えなければなりません(さらに広さだけでなく、交通網も考慮する必要がある)。こうした点について「疾患別、事業別の医療提供体制」を考えていくことが、新たな地域医療構想では求められそうです。



さらに相澤会長は、「がんをはじめ、医療計画に定める5疾病・6事業などについては、相当の歴史があり、各地域で医療提供体制の骨格が相当程度出来上がってきている。新たな地域医療構想論議で重要となるのは、これまで手付かずであった『増大する高齢者医療ニーズへの対応』である。この点について集中的に議論を行い、その後、関連する周辺問題へと議論を広げていくことが必要ではないか」との見解も示しました。新たな地域医療構想に関しては膨大な論点が示されており、議論の交通整理を行うことが必要と考えられます。



このほか、相澤会長は▼かかりつけ医機能報告制度の詳細がまとまりつつあるが、新たな地域医療構想とセットで、たとえば「増大する高齢者医療ニーズに、地域の医療機関がどう対応していくか」を考えなければならない。また、「医師の機能」と誤解されやすい「かかりつけ医機能」という名称をやめ、「地域密着医療機能」「地域包括医療機能」など医療機関の機能であることを明示する名称に改めるべきであろう▼集中治療室の機能、役割について学会を交えて改めて考え直す時期に来ている。日本の集中治療の実態を詳細に把握したうえで、どういった医師が、何名程度、治療室に勤務することが必要なのか、などを整理しなおし、我が国の実情にマッチした集中治療体制を構築し直津必要がある—といった考えも示しています。



なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

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従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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