新たな地域医療構想では、【病床】でなく【病院】の機能分化・連携強化を目指せ、2次医療圏設定の抜本見直しも必須の要素—日病・相澤会長
2024.6.18.(火)
新たな地域医療構想においては、「病床の機能分化・連携」ではなく、「病院の機能分化・連携」を考えなければならない—。
また、地域医療構想を実現する区域(地域医療構想区域)のベースは「2次医療圏」となっている。しかし、2次医療圏そのものが、設定時と比べて交通の状況・人口の状況・医療提供体制の状況は大きく変化していること、圏域内の市町村が話し合って設定したものではないこと、などを考慮すれば「2次医療圏の設定」そのものを抜本的に見直す必要がある—。
さらに、現行の医療法などを「まず地域の医療提供体制に関するビジョンを明確化する→そのビジョンを実現するために計画(医療計画、地域医療構想など)を策定する」といった立て付けに見直す必要がある—。
日本病院会幹部(会長・副会長・常任理事)の間で、こういった考えがまとまりつつあることが、6月18日の定例記者会見で相澤孝夫会長から明らかにされました。新たな地域医療構想については、厚労省検討会で議論が進められえており、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを行う予定ですが、それに間に合うように「日病としての大枠の考え方・提言」がまとめられます。
医療法は「地域医療のビジョン明確化→ビジョン実現のための計画策定」とすべき
2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で進められています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化に対応できる効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため、【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。
さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。
また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。
そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想、新地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。
検討会では、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを、年内(2024年内)に最終とりまとめを行う予定で議論が進められており、日病でもこのスケジュールに間に合うように考え方・提言をとりまとめるべく幹部での議論が進められています(関連記事はこちらとこちら)。
6月17日の定例記者会見で相澤会長は、これまでの幹部論議で次のような点について共通認識が醸成されていることが報告されました。
(1)現行の地域医療構想では「【病床】の機能分化・連携の強化」が謡われているが、新たな地域医療構想では「【病院】の機能分化・連携の強化」を目指すべきである
(2)地域医療構想は「地域医療構想区域」単位での実現が目指されているが、ベースとなる「2次医療圏」について抜本的な見直しが必要である
(3)地域医療構想を規定する医療法等において、「まず地域の医療提供体制に関するビジョンを明確化する→そのビジョンを実現するために計画(医療計画、地域医療構想など)を策定する」といった立て付けに見直す必要がある。
まず(1)は、従前より相澤会長が強調している点です。患者が「どの医療機関にかかろうか」と選択する際、かかりつけ医機能を持つ医療機関が「患者をどの医療機関に紹介すべきか」と考える際には、「病床の機能」ではなく、「この医療機関・病院がどのような機能を持っているか」が相当程度重視されます。現行の地域医療構想は「病床機能分化・連携の強化」を謡っていますが、日病幹部の間では「まず【病院の機能】に着目すべき」との考えで概ね一致していることが相澤会長から改めて報告されました。
また(2)の2次医療圏について、相澤会長は▼設定時(1986年の医療計画施行時に設定)からほとんど変わっていないが、医療圏を取り巻く状況(人口、交通網、医療提供体制)は激変している▼構成市町村の話し合いで圏域を設定したものでなく、都道府県が人口ベースで複数市町村を1つにまとめて設定している▼きわめて大規模(人口200万人超)で今後急速に高齢化が進む圏域もあれば、きわめて小規模(人口5万人未満)で高齢者人口すら減ってきている圏域もあり、バラつきが大きすぎるとともに、「日常的な医療を簡潔できるエリア」という概念にマッチしなくなっている—という大きな問題があると指摘。圏域設定が誤っていれば、それをベースにした施策(医療計画、地域医療構想、がん診療連携拠点病院の指定などなど)も誤ってしまいかねません。この点、具体的な見直し内容こそ詰め切れていないものの、「人口だけでなく、医療機関の分布、医療機関の機能(実際の医療提供内容)なども含めたデータをもとに、2次医療圏の在り方を抜本的に見直す必要がある」との考えで日病幹部の考えが一致していると相澤会長は強調しました。
さらに(3)では、地域医療構想や医療計画の根拠法となる「医療法」では、「計画ありきで医療提供体制の在り方を考える」という立て付けに見えるが、本来であれば「まず地域の医療提供体制に関するビジョンを明確化する→そのビジョンを実現するために計画(医療計画、地域医療構想など)を策定する」といった立て付けであるべきで、こうした「そもそもの法律上の立て付け」について見なおす必要があるという点でも日病幹部の意見は一致しています。
日病では、今後、より詳細に「新たな地域医療構想」に関する議論を進め、検討会の中間とりまとめ(今秋(2024年)予定)に間に合うように提言を行う構えです。
(参考)
医療法(Gem Med編集部で抜粋し、一部改変)
第30条の4 都道府県は、基本方針に即して、かつ地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るための計画(医療計画)を定める。
2 医療計画においては、次に掲げる事項を定める。
(1)-(6)略
(7) 地域における病床の機能の分化および連携を推進するための基準として厚生労働省令で定める基準に従い定める区域(構想区域)における次に掲げる事項を含む将来の医療提供体制に関する構想(地域医療構想)に関する事項
イ 構想区域における厚生労働省令で定めるところにより算定された病床の機能区分ごとの将来の病床数の必要量(病床数の必要量)
ロ イに掲げるもののほか、構想区域における病床の機能の分化および連携の推進のために必要なものとして厚生労働省令で定める事項
(8) 地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化および連携の推進に関する事項
(後略)
なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。
GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。
ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。
●GHCのサービス詳細はこちら
従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。
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